雀 -スズメ-
自宅近所。
道路に、こちらに反応せず、ピクリとも動かないで立ち止まっている雀(スズメ)が居て。
近付けばすぐに逃げるのが当たり前な、誰もが知るあの小さな鳥。
歩道と車道との境目が無い場所に留まっているのだが、そこは車にも、自転車などにもいつ轢かれてもおかしくない。
側に寄っても、試しにそっと触れても…逃げない。いや、動けないのか。
その雀は口を開け、ジッとしていた。
脱水か熱中症を疑い、僕はそっと手で雀をすくい上げ…車などが来ない安全な場所に移動させた。
鳥はどうやって水を飲むのだろうと、スマホで小鳥に対しての水分補給方法を検索してみる。
『(水分を)スポイトや綿棒で嘴(クチバシ)の横から少しずつ』…と。
そんな物は手元にはない。
なのでまずは近くに自販機がないか探す。運良くすぐ側には、コカコーラカラーの真っ赤な自販機が。
100円で購入した水を持ち、僕は先程ネットと調べた事の応用のつもりで…落ち葉に水を溜め、それを雀の嘴(クチバシ)の横に少しずつ注ぐ。
雀は顔を振りつつも、クチバシをパクパクとして、飲むような仕草を。
鳥を飼育した経験もなく、「鳥は、水を飲む際上を向いたりしないのか?」などと飲めているのか不安に感じつつも、ゆっくりと、少しずつ、それを繰り返すと…水をあげ出してからほんの15分程か、もしくはもっと短かっただろうか。
しばらくすると雀は動くようになり、飛ぶではなく、ピョンピョンと跳ねてどこかへ行ってしまった。
見かけた当初、助けるのかは少し迷ったのだけれども。
鳩や野良猫に餌をあげるのと何が違うのか、ちょっと考え…でも、SNSでこういうシーンを何度か観ていたし、状況からして脱水などを疑い。
それと対応後の反応を見ても水分が必要だったのかな、と。
僕は、子供の頃はむしろ鳥を捕まえようとしていた子だったのに…というか、大人になっても我が子と共に虫捕りとかしているのだけれど。
何にも変わってねーな、という思いと共に、そっちは獲るのにこっちは…と葛藤も。
まぁ、状況は違うけれど、賢くないのもあり自分の行動は説明しにくい。
こういう道徳的行いを数年間、しばらくの間はSNSにはアップしないようにしていたのだけれど。
昔とある人が語っていた、『詐欺師は人の目を見て、笑顔で騙すよ』という言葉。
正にその通りで、こういう行いをいかにも善人かのように発信し、本来のドロドロとした自分を隠し、良く見せようとする人が昔知人に居て。
僕は、そいつとは同じにはなりたくないなという気持ちから、善行をSNSにはアップしないようにしていた。
でも、僕はその人が上っ面で良い行いを発信していたとしても、それに影響され、その人に続いた人が居るのも知っていて。
実際、僕も誰かがアップした、弱っている鳥に水を飲ませて、助けて上げる動画を以前観たからこそ、今回も同じく助けられたのもあり。
だからその人の本質は別に、僕も偽善者だと思われようがアップしてもいいな、なんて思いが今は持てている。
という事で、『スズメを助けたよー!』みたいな投稿で、僕を善人だと勘違いしちゃダメですよ。
詐欺師は人の目を見て、笑顔であなたを騙します。
そしてそんな騙す奴等に対しては、本心では脱ぎたての靴下やらパンツを顔に投げ付けてやりたいぐらい嫌です。
でもまぁ、取り合えず僕を信用しなくても、同じような場面に出くわしたら…ここでもしあなたが学んでいたとしたら、スズメを助けられるかもしれませんよね。