カイロ大学声明の本質⑤ー小池百合子の声明への見返り
小池氏の”卒業”を公認する声明を出して、カイロ大学に何のメリットがあるのか。常識では考えられない声明を出せば、大学の国際的な信用失墜につながる危険性もある。
この問いは、カイロ大学長の発表をみれば解ける。
2022年11月22日、都職員10人を引き連れ、小池氏が学長とした会談の内容がカイロ大学の公式ホームページに掲載されている。
小池氏側の発言要旨は、カイロ大学留学時代について謝意を表明し、エジプトと日本の二国間協力を称賛、そして東京都知事、カイロ大学との協力拡大を要請するというものだった。
本文は
とある。
都の予算を使って出張し、都政と全く関係ないカイロ大学時代の思い出に浸りながら、「カイロ大学に対して協力拡大を要請」するなど、知事として完全に越権行為だ。
自身の学歴詐称疑惑を否定する「カイロ大学声明」を出してくれた学長へのお礼の表敬訪問と見返り支援とみなせば、合点がいく。
学長もそのお返しにとばかりに、
と、小池氏の学歴・経歴を持ち上げるのを忘れない。
現在、カイロ大学長と合意した協力議定書の中身は不明だが、前学長との会談での約束は、カイロ大学文学部日本研究センターという形で実現している。
ナッサール学長は、1度目の都知事選当選の際、祝辞を送っており、そのなかで日本の小池議員事務所を訪問したときのことにも触れている。
2022年の小池氏のエジプト外遊時に要請した支援事業のなかで、すでに都の予算に計上されているものもある(9千700万円。エジプト外遊費含む)。
である。
その中身はといえば、エジプト人学生を都に受け入れたり、都立高校生に
母校カイロ大学等をダイバーシティの美名の下、訪問させるプログラムだ。わざわざ第1号議定書とあるから、2号3号と続く虞れがある。
援助、口利きの手口
こうした小池氏のエジプトに対する支援・援助の申し出、口利きはパターン化している。
カイロ大学時代の思い出を語る
↓
その時にお世話になったカイロ大学そしてエジプトに謝意
↓
その見返りとして、援助内容をほのめかす/要人の要望を聞く
↓
その事業の実現
↓
エジプト要人から褒められる
という流れだ。
もちろん、すべてがあからさまに書いてあるわけではない。政府系新聞が伝える小池報道を時系列に丹念に読みなおすと、その実態が浮き彫りになる。
一つのパターンを紹介しよう。
2016年3月にエジプト政府系のアハラーム紙が報じた記事によると、来日した当時のシシ大統領は、小池衆議院議員(当時)と面会。
大統領は「謝意を表した。彼女がエジプトとの関係発展に注意を払い、両国関係を有利に進めている事柄に対してである」。
具体的にどんな事柄なのか。
記事では「大統領の訪日では、教育プログラムに関連して多くの目標を達成した」と紹介されている。
実は、この報道の約1カ月前、三百数十億円に上る日本のODA(政府開発援助)による教育支援策「エジプト・日本教育パートナーシップ」が発表されている。つまり、シシ大統領はODAという形で援助が実現したことについて、小池氏に謝意を表したわけだ。
このODAに小池知事が関与したのか。
アハラーム報道から約1年さかのぼった2015年5月、現地メディアのアルマスダル紙電子版によると、エジプト大統領府で小池氏と面会したシシ大統領は「教育分野において日本の経験から利益を得ることについて、関心を示した」とされる。
大統領の関心に対し、小池氏は「エジプトと日本の関係を強化する努力を惜しまない」と後押しを表明。
さらに、小池氏は「私がエジプトを大切に思っているのは、公式のレベルだけでなく、個人のレベルのことでもある」とまで語っている。
「エジプト・日本教育パートナーシップ」には二つの事業がある。
一つは「エジプト・日本学校(小中学校)支援プログラム」(186億円)、もう一つが「エジプト人留学生・研修生受け入れ事業」(102億円)だ。
後者が小池発言「個人レベルのエジプトへの思い」にもとづく事業のことである。
先ほど引用したアハラーム紙記事の記者が「小池氏の経験とエジプトへの美しい対応」と題するコラムを寄せ、種明かしをしている。
「以前、小池氏を取材した際、こう語っていた。『故ナセル大統領が外国人学生に対し、奨学金を提供するという重要な政策を採用していた。私自身もエジプト政府から月額8エジプトポンドの助成金を受け取っていた。ナセルの行った投資は有益で成功だったでしょ。だって、そうじゃない!』。小池氏は今日、日本政府のエジプトの学生に対する広範囲な奨学金プログラムについて、強力な支援者である」
記者は「美しい対応」と題し、いかにも美談のように語るが、まったく違う。小池氏が自分のエジプトからの借りを今回、百億円にして返しましたよという下品な話だ。
エジプトの召使い
小池氏とエジプトとの貸し借り関係は、カイロ大学声明を発表した駐日エジプト大使館の発表からも透けて見える。
エジプトに外遊に出かけた2022年の年初における小池氏と大使の会談の内容だ。次に外遊後、大使にお礼の表敬訪問をした際の記事「東京都知事、エジプトと日本の2国間協力を称賛」(一部抜粋)がこちらだ。
まるで、エジプト政府やシシ大統領に仕える召し使いのような扱いの内容だ。小池氏が賞賛した「エジプト日本科学技術大学」はODA(40億円)で運営されている。
同大学のアドリー学長は昨年、東京で面談した小池都知事に対して、
つまり、いまもエジプトへ見返りを続けながら、自分が口利きしてできた大学を都の費用で訪問し、自画自賛しているのだ。
都知事としての公約実現はゼロだが、長年エジプトへの公約(見返り)は果たしているということである。わが国の首都のトップが、外国勢力に生殺与奪の権を握られているのだ。今後、どんな条件を突きつけられるのか。この状況は都民、国民にとって極めて危険な状態である。