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快楽の部屋

【実体験】

フォアボール。とある練習試合、
最終回ノーアウトランナー1塁。
ピッチャーは制球がみだれていた。
それを機に顧問は声を上げた。
「背が1番低い奴は誰だ?」

顧問は僕を代打に起用した。
当時中学1年の僕は部活内で最も身長が低かったのだ。
僕は顧問から次のようなアドバイスを受けた。
「なるべく体を屈めてフォアボールを狙え。」
「なるほど」と、僕はヘルメットを被りバットを握ってバッターボックスに向かった。

結果は4球連続ボールが外れ、フォアボールとなった。僕はさっさと一塁に向かった。

バッターボックスでの僕の心情は、
「とにかくフォアボールで塁にでる。
それ以外はありえない。
ストライクが入ったらどうしよう。
たのむ、ボールよ外れてくれ!」
という感じだ。

僕は自信がなく、人の言うことに流されてばかりいた。失敗なんてしたくない、みっともないと、自分で考えて動くことなんてほとんどしなかった。その方が楽に生活できると考えていたのだ。

【現在】

今となって、理想のシチュエーションはこうだ。

ゆったりとバッターボックスに向かいながら考える。
「打ち返したろかな。制球が乱れているということは、甘い球がくるかもしれない。フォアボールで出るよりヒットを打った方が、チャンスはひろがるし、何より嬉しい。
打ち返してその結果がダメだったとしても、たかが練習試合だ。顧問に怒られようが大したことではない。」
そう意気込んで打席に入る。

球がくる。真ん中高めだ、僕はバットを振り抜く。キーンと音が響いて、鋭い打球は一直線に飛ぶ。

僕は打球の行方なんか気にならない。
打った瞬間の音が僕の体に入って、心でじっとしていた塊に突っ込んで、音が塊に「大丈夫かい」と声をかける。塊は立ち上がって一言、「うん、久しぶりに動いたよ」としゃがれた声で発する。音は「あら、そう。じゃあせっかくだし踊りましょうよ」と音楽を鳴らす。B'zの快楽の部屋だ。塊は見てはいられないほど恥ずかしい動きで踊り始めた。

ボールの行方は、どうしようか。
今回は特別にホームランとしておこう!




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