声出していこう
2020/6/19(金)
プロ野球が開幕した。
今年はいつもの開幕と違う、
そう無観客試合だ。
そして僕は思った、「プロ選手も試合中、こんなにも声を出すんだ!」その声はとても自然な感じがした。
そう思うと同時に僕が中学の時の野球部時代を思い出した。
「ナイスボー!」
「ツーアウト、ツーアウト!」
「内野ゴロ近いとこ!」
試合中とにかく大声で叫んでいた。なんでもいい、とにかく声を出しつつづけていた。
なぜか?
それはただ1つ、顧問に怒られないためだ。
僕はいつもと言っても過言ではないくらいに、そんなことを考えていた。たぶんみんなもそうだったと思う。
少しでも声が小さくなり、それに顧問が気付くとすぐにこんな言葉が飛んでくる、
「声、小さいぞ!!!」
この言葉を言われないように(言わせないように)僕たちは声を枯らして叫び続けた。
ある練習試合の日のことだ。
相手はいわゆる強豪校で、実力で言えば敵わない相手であった、らしい。というのも僕たちは相手の実力をちゃんとは知っていなかったのだが、顧問から相手は県ベスト〇〇だ、などを聞き、そう思ったのだ。
僕はいつもどおりの補欠だった。そしていつも通り顧問の視線を感じながら、ベンチで声を出し続けた。
しかし、その日はなんだかいつもと違った。なんていうのだろうか、簡単にいうとめちゃくちゃみんなの声が出ていた。そのことは僕もみんなも監督も感じていただろう。
試合は素晴らしい投手戦が繰り広げられ、6回にスクイズで得点したこちらのチームが、なんと1対0で勝利したのだ。
快挙であった。僕たちはめちゃくちゃ喜んだ。試合後のミーティングで顧問は言った、
「この試合は声でとった試合だ」と。
僕は思った、
「そうかもしれない」と。
僕たちの狂気的な叫び声が、レギュラー選手を励まし、相手を威圧して、流れをこちら側に持ってきて、そして勝利を呼んだのかもしれない、と。
そんなことを思い出しながら、無観客試合で始まったプロ野球開幕戦を観ている。プロ野球選手の声出しは聞いていてとても心地が良い。
そして思う、僕が中学の時、顧問に怒られることを恐れて出し続けていた声は、果たして意味があったのだろうか。でも、あれだけ声を出していたからこそ、8年ほど経った今でも思い出せるのだ。その過去の記憶はとてもしょっぱく喉を渇かせる。だから今、渇いた喉を潤すため酒を片手に、テレビの前で楽しませてもらっている。最高の週末である。
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