隙間
彼女は俺の知らない隙に入って来た魔だと思う事がある。
ま、って間口とかの場所とか、空間とか。またもや、知らなかった欲望の魔とかで、
彼女はまるで、俺の認識していなかった『欲望』そのものだという捉え方が出来る。
魔が刺した。
そう、知らずと彼女は俺の最優先の依存場所になってしまった。
付き合い始めは、俺のペースで、俺の生活にフィットしていたただの女性だったが、
いつしか、俺は彼女の胸の中に溺れているのかも、って。
太宰治の世界観を実体験で見ている気になる。
手塚治虫のバルボラって漫画があるんだけれど、何故かそことも被る。
俺をぐちゃぐちゃにしながらも、果てしなく、それが正しいと感じてしまう矛盾。
もっと言うのなら、運命という笑うセールスマンに当てがってもらったのが彼女だ。
自分の人生は、それなりの生き方の中で、失敗と成功、喜びと失望もあったが、
この歳になって、こんなにも意識が変わる事態が起きようとも、誰が想像出来ただろうか。
出会うのも運命、流されるのも、運命。
辞めるのも、続けるのも、運命。
命を掛けて、運転していくのが、運命。
ただただ生きていた俺にとって、まさか神社を掃除して願掛けしていただけで、こんなことになるとは、
良いか、悪いか、
まだ現時点では、わからない。
でも今日も俺の珍鎮は、魔ん閻の笑みであることは間違いない。