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日本舞踊「銀河鉄道999」音楽制作裏話①

こんにちは!
作曲家の麻吉文です。

6/3〜5まで国立劇場小劇場で開催された、日本舞踊「銀河鉄道999」の音楽についてちょっと書いてみようと思います。

この銀河鉄道999では「戦士の謳」というオリジナルテーマ曲があり、アレンジを変えて様々な場面で使用されてます。

勇壮だったり悲壮だったり。
優しく温かくもあったり。

そのメインテーマ曲「戦士の謳」製作秘話をご紹介させてください。

最初に制作・脚本・演出の藤間仁凰さんからご連絡を頂いたのは確かちょうど一年前、六月の頃でした。
そこから少し時間を置いて、年の瀬の頃に差し掛かったあたりでしょうか。
「ようやく台本がまとまりました」
と連絡があり、協会の事務局で顔合わせを行う運びとなりました。

舞踊協会の事務局に伺いますと、演出チームでもある松本幸四郎丈、吾妻徳穂先生、中村梅彌先生、花柳基先生、水木佑歌先生ら制作担当理事の先生方。
振り付け担当の市山松扇さん、花柳源九郎さん、藤間真白さんの御三方。
それから制作スタッフの坂東映司さん、花ノ本寿さん、藤陰静寿さん、花柳寿々彦さん、そして仁凰さんがいらっしゃいました。
こちら音楽チームは僕と琵琶奏者の田原順子先生、藤高理恵子さん、それから音響を担当される白石安紀さんが同席しました。
制作陣オールスタッフ、です。

初顔合わせの方もいらっしゃったので各々簡単に紹介がありまして、そのまま台本を開いての本読みが始まりました。
適宜休憩を挟みながらざぁ〜っと、要所要所仁凰監督(僕はずっと仁凰さんのことを「監督」とお呼びしてます)と幸四郎理事に補足して頂きながら、トータル二時間超は要しましたでしょうか、台本をめくってストーリーを追いながらふむふむとお話に耳を傾けておりました。

「このシーンは盛り上がって〜」
「ここは静かに始まって〜」

ト書きに沿ってなんとなく雰囲気をイメージをしてみますが、当然この段階では一音も浮かんできてません。
具体的な作業は自宅作業場に戻ってからになるので、打ち合わせ段階では僕はぼんやーり想像しながら「話を聞く」に徹します。
コーヒーも沢山飲みます。

・・・。

最終シーンに差し掛かり台本読みが終わりました。
こりゃこのボリュームだとドエライことになるな〜などと思案しながら身支度してますと

「すみませんが、音楽についてもう一練りお話させてもらえませんか?」

仁凰監督から声を掛けられ、音楽班の我々は制作スタッフ数人とともに別室に移動しました。
僕も今回ご一緒する琵琶奏者の田原先生、藤高さんに楽器の特性についてちょっと伺っておきたかったので、ちょうど良い機会です。

事務局の片隅に席を用意してもらい雑談してますと、仁凰監督が

「麻さん、実は『戦士の謳』ですがもうイメージ考えてるんです」

とおっしゃいました。
監督曰く、音楽に明るい訳ではないけどメロディの運びというか流れというか、すでに考えているものがある、とのこと。

ほう、もう用意あるんですね!
それ参考にしたいので是非聞かせてくださいよ。
音源どこですか??
と尋ねると「考えて頭の中にあるんで、今から歌ってみます」と。
なるほどっ!

ちょっと待ってください録っちゃいますね、スマホで録音の用意をして・・・ハイどうぞ!

仁凰監督、おもむろに唸り出しました。

「オホン、いきます・・・♪う〜う〜、ううううう〜う〜〜〜」

・・・ほう・・・ふむ・・・。
大変申し訳ないのですが、言葉選びながら評させて頂きますと
近年稀な一本調子(正直な感想です/詫)」
でございます・・・。

ですがご本人、いたく真剣でいらっしゃいます。
ならばこちらも真面目に、しばし神妙に拝聴続けます。

「♪うう〜うう〜、うう〜うう〜」

・・・ん?
集中して聞いているとちゃんと節があるし、なんならさっきのがAメロなら今Bメロに移行した?

・・・ちゃんと展開して曲になってる・・・!?

なんだか、バッチリいける気がしました。
確信があったので、録音を持ち帰って2~3日後に軽くまとめてピアノでデモってみました。

「麻さんありがとうございます!バッチリです!!!」

仁凰監督からOK頂きました!
良かった良かった〜。
「戦士の謳」はこうして生まれました。
そうなんです、厳密に言うと作曲したのは仁凰監督なのです!

打ち合わせの時のスマホでのボイス録音に隣で同席されてた田原先生からは

「あれを・・・まさかここまで・・・」

と賛辞頂きました。
ですけど、僕にはバッチリメロディが分かったんです。
それと同時に「絶対感動的な良い舞台になる」という確信も持ちました。

仁凰監督と



パンフレットの寄稿文にも認めましたが、取り組むまでは正直
「大変な仕事やな・・・僕に務まるかな」
と不安もあったのですが、仁凰監督の気持ちのこもった鼻歌に後押しされ、僕の心の中の999が力強く走り出しました。


こうしていよいよ本格的に音楽制作がスタートしました。


②へ続く。


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