日帰り帰省
タイトルの通りである。
それほど難しいことでもない。自宅を朝5時半に出て日付が変わる前には帰宅できる。LCCのおかげで航空運賃も往復で1万円しないし、成田の駐車場も深夜早朝割で15時間以上とめたけど1,050円だった。足がわりのレンタカーだって3,000円ちょっと。
でも、やれるんだけど心身ともに疲れた。
「まんぼう」発令まで秒読みだ。すでに両親ともケアマネさんとも接触することはできないものの、母の薬がもうすぐなくなってしまう。
漢方薬は12月に3ヶ月分もらったけど、泌尿器科で処方されている安定剤は薬の性質上1ヶ月分しかもらえない。
以前も書いたが、そもそも本人が強く主張する頻尿は何度検査しても診察しても「気持ちの問題」で、担当医からは「かかるとしたら心療内科」と引導を渡されている。
でも習慣化している薬がなくなると、それだけで大騒ぎすることは目に見えているし、安定剤の効果を今の母から差し引くと、もっと状況が悪くなるのも怖い。
昨年の緊急事態宣言発令時、「県外の人」はどこの病院も施設も冗談じゃなく一歩も建物の中に入れてもらえなかった。そればかりか、数時間一緒に過ごした母も「呼ぶまで車で待っていてください」と案内された。
そうなる前に薬を確保しておかないと。
かかりつけ医の定期通院であればヘルパーさん同行で本人が行くという手も使えるが、通帳など支払いに必要なものも預からなければならない。
数十万円を引き出した5分後に忘れてしまう人に管理させておくわけにはいかない。
とはいえ、両親の施設に支払う費用はそこそこの金額だ。立て替えるにも限度があるし、どのみち私が管理するつもりで弟夫婦の同意も得ている。
ちょっと予想より早かったけど。
空港に着いて実家に向かう。
まず母の診察券と保険証を持って2つの病院をまわり、そのあと母の施設で薬と引き換えに通帳を預かる算段だったが、いつものところに診察券がない。本人が持っていっちゃったんだな、まあ仕方ない。
母のことは週末にバタバタと迎えに来てもらったので、そのままになっているゴミの片付けでもしようかと思ったけれど、ここの自治体はゴミ分別が複雑すぎて手が出せない。ゴミ置き場もご近所の目が光っている(というか光らせていたのはうちの母が一番なんだけど)ので適当にだすわけにもいかず、結局何もしなかった。
解約できずにそのままになっている父の携帯があったのでカバンに入れ、郵便物と新聞を取り込んで家に入ろうとしたら、玄関先に野菜が置いてある。
白菜、ネギ、ブロッコリー、かぶ。
さすがに白菜は手荷物としては大きすぎるので残し、残りをカバンに押し込んだ。
毎日のように「固定電話がおかしい」と母は言うが、もう迷惑電話しかかかってこないのだからコンセントも電話線も抜いておけと言っても聞かない。
先日も「石材屋さんからお金を払えと電話があった」と言うのでてっきり詐欺かと思ったんだけど、よくよく話を聞くと地元の石材屋さんからの電話だったらしい。昔通っていたピアノ教室の近くだ。
直接電話をかけてみると、何のことはない、うちの畑近くの石垣を補修するから、その間うちの敷地に車を置かせてほしいというだけの話だった。
もう全然母の頭にはまともに話が入っていかないんだなあ。しかも知ってる人なのに。
いくつか入っていたどうでもいい留守電を聞いてから消し、ケアマネさんに電話して母が持っている保険証をまず受け取りに。
とはいえ接触することができないので、駐車場で私は車から降りず、職員さんはマスクにフェイスガードで言葉も交わさず受け取るという段取り。
なんだこれ、とも思うけど、今はこうするしかない。
病院2軒まわって薬をもらい、小分けにしてからまたケアマネさんに電話。
通帳類は本人がずっと持っているので、私から母に電話して「送ってもらうから職員さんに渡して。」と言ってほしいとのこと。
母が安定しているのなら、私が来ていることを言おうかと前日には相談していたけれど、相変わらずの不安定ぶりのため、あくまで私は自宅にいる前提で電話をかける。
施設からすぐそこのコンビニ駐車場である。何してるんだろう、私。考えても仕方ないが。
母自身もどうやら自分はもうお金の管理ができないとは思っているので、私が電話して「娘さんに送るから」というとすんなり職員さんに渡したそうだ。
私が預かるのはいいけど、また盗んだとか騙したとかグルになって取り上げたとか言うんだろうな。考えるだけでうんざりだが仕方がない。
午前中の保険証と同じ要領で受け取り、職員さんへの手土産菓子としまむらで買った母の着替えを渡して、自宅だと受け取れないから施設に送られてきたとかなんとか言って渡してください、と頼んでおいた。
ミッション完了。普段と比べて特別仕事量が多いというわけではなく、まだ15時だったけどドッと疲れた。
帰りの飛行機は20時半。
また空港のビジネスルームで仕事しようかなとも思ったけど、なんかそれもあんまり自分がかわいそうな気がしてきて、気晴らしに海へ。
1時間も車を走らせれば、山も海もお城も島もあるのが四国のいいところだ。外の人には厳しいけど(苦笑)
自分が生まれ育った街なので好きな場所ではあるけれど、もう実家に帰ったからといってホッとはしなくなった。
私が一番落ち着くのは、今の家族と暮らす私の家。
夫もいないし子どもも自立し、仕事もリモートでできる私に、実家に帰って親の面倒をみろという人もいる。
反論するエネルギーがないので何も言わないけれど、なんていうか、もう腹も立たないよ。
いくら頑張っても、そういう人にとっての合格点っていうのは、あくまでも子どもが親の面倒を見ることなんだなあ、って。
まあ、そういう声を受け流せる強さを持てるようになった、自分をほめよう。
そして家に帰ろう。親を蔑ろにするわけじゃないけど、私は私のことを一番大事にしよう。