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水野南北の『食は運命を左右する』

医療や環境に疑問を持つ今だからこそ読みたい名著をご紹介。
水野南北の『食は運命を左右する』

内容を一言でいうと、観相家・水野南北による気迫に満ちた食の戒め本。

“私はこの数年間、観相を業としてきたが、食の大切さを知らずにいた。貧窮短命の相があっても裕福長命だったり、富貴延命の相でも貧窮短命であったり、観相学でその人の運命の吉凶を明白に言い当てることはできなかった。そしてこの頃ようやく人の運命の吉凶は、食を慎むか慎まないかという一点に在ることを悟るようになった。”

水野南北は、江戸時代の学者・貝原益軒を上回る健康法を発表していたのに、その名があまり知られていないのは観相家だったから。

けれど、その内容は秀逸で、個人の健康だけでなく、食糧危機・エネルギー危機・人口問題など、現代が抱える社会の健康法でもあるとされ、後に多くの専門家たちに影響を与えている。

そして食の観相家に至った経緯がすごい。

水野南北が幼い頃、大阪の浄瑠璃の作家だった父がなくなり、叔父に引き取られる。十歳から飲酒し、十八歳で犯罪を犯し刑務所入り。

そこで、囚人と娑婆の人とで人相の違いがあることを発見し、出所後、易者に自分の相を見てもらったところ「あと一年の命、回避するには出家」と言われる。

禅寺に弟子入りを志願した南北に住職は「麦と大豆だけの食事を一年続けたら入門させよう」と約束。

命惜しさに見事それを達成した南北は、禅寺に向かう途中、再び易者に見てもらったところ、「剣難の相が消えた」と言われ、弟子入りをやめて観相家になることを決意。

伊勢神宮で断食の荒行を修め「人の運は食にあり」との真理に至り、観相家として活躍。晩年は皇室より「大日本」「日本中祖」の号を贈られるまでに。

食べ方次第で運勢は変わる

下記の抜粋を見てみると、10年前まで毎日のように食べ歩いていた自分としては耳が痛い。

●食事の時間が不規則な者は吉相であっても運勢は凶。大食漢は情緒不安定で何をやってもうまくいかない。

●食事量が一定している人が、量や時間に乱れが見られるようになったら、難が来る前兆。

●毎日のように美食する者は、老いては消化器系の病気にかかり、食べたくても食べられない業病になる。若い時から贅沢する者は、老いてから不自由すること覚悟すべき。

●都会では美食や肉食が多く、動物を殺して多く食べる人間の意識はおのずから高慢になり悪心生じる。鳥や魚の命を奪って食するのであるから、その報いを受けて長寿の運命を短命に変える。故に都会の者は短命で山村に長寿が多い。

易の思想は「宿命論的」であるはずが、「食の慎み」によって運勢は変えられると救済した水野南北は、業界では異端児とされたが宗教者でもあったようだ。
2022.03.25

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