第9話 かっこよかった、板門店の青年将校
(続きから)
私たちは、この人民軍将校を乗せて共同警備区域へ向かった。
共同警備区域内では、数十人はいる他の国からの観光客と混じって、私たちは将校のガイドに耳を傾けていた。
隣では朴さんが日本語に通訳してくれているが、周りが一様に将校にむけてスマートフォンのカメラを向けているのが気になり、あまり頭に入らなかった。
「北朝鮮」と国境を接している中国でも、このような軍事境界線は余程珍しいのだろうか。
ドイツでは冷戦後、東西の壁は無くなり統一されたのに、この朝鮮半島のここはいまだに冷戦時の構造がそのまま残っている、世界で唯一の場所である。
元々は一つの国であり同じ言葉を喋っていた民族が70年も引き裂かれたままである状態は異常だといえる。 朝鮮半島は哀しみを背負ったままなのである。
残念ながら、この状態を作り出した遠因は日本にあるといえるが、中国、ロシア、日本という大国に囲まれた国の地政学的な悲劇でもあろう。
かつて、朝鮮半島は日本のロシアに対する防波堤として重要な地域だった。
日本が満州をとったのも極めて単純化すれば同じ理由だった。
はっきりいって、朝鮮半島が分裂してくれていて「南」側が日本及び自由主義国(アメリカ)の陣営にいてくれていた方が、日本の安全保障上有利であるのは間違いない。
今でも、その状態を維持しておきたい勢力が暗躍しており、朝鮮半島の政治状況はコントロールされているのではないか。
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