『ぼくのPlayStationClassic』part.5 「moon」~奇跡の「アンチRPG」~
本稿は、思い出の20本のプレイステーションソフトについて紹介・思い出語りをするコンテンツです。
※他のタイトルはぜひこちらの【予告編】を御覧くださいませ。
第4作目は「moon」(アスキー)
※震えるほど懐かしいパッケージ
目次
・概要
ーストーリーとゲーム性
ー音楽
・思い出語りパート
概要に入る前に少しだけ。本稿の目的は僕が震えるほど好きなゲームである「moon」について語るとともに、moonが好きで以下の記事に触れていない人に触れてもらうことを目的としています。
※最悪本稿はこれ以上読まなくてもいいくらい読んで欲しい
・概要
このゲームはとにかくコアなファンがいるゲームだと認識しています。
このゲームはPSアーカイブスでも発売されていません。よって、結構なプレミアがついています。
※新品は驚きの40,000円オーバー
それだけの作品をイキって紹介するのも恥ずかしいですが、知らない方にもわかるようにちょっとだけイキりつつ紹介したいと思います。
ーストーリーとゲーム性
一言でこのゲームを言えば『アンチ(旧来の)RPG』
ポイントは以下の2点です。
・戦闘がない
・世界観とキャラクターがブッとんでる
ストーリーは勇者がモンスターを倒して倒して倒して倒して成長し、ボスを倒していく……ということに若干の皮肉を込めながら物語は進んでいきます。
ゲームを始めるとよくてスーファミくらいの質のRPGが始まります。
そのRPGでは勇者がモンスターを倒して倒してストーリーが進み、最後には飛空艇に乗り月のドラゴンのところにたどり着き、さてドラゴンを倒そうか、というシーンに差し掛かったところで、お母さんからの「コラッ!!」という声で中断します。男の子はゲームをプレイしていたのです。
そして寝ようと思ってテレビを消したのですが、テレビは再び光出し、男の子はゲームの世界に吸い込まれていきます。
ゲームの中の世界は幻想的なカラーリングと個性的というにはあまりにブッ飛んでいるキャラクターたちに溢れています。キャラクターのボイスがありますが、全て何を喋ってるかわからない言語なので字幕がはいります。
こればっかりは表記できないので「moon プレイ動画」で検索して見てください。
※これとか
キャラクターの喋りと、主人公の「てくてく」音を是非聴いてください
主人公は透明な姿で最初は認識されないのですが、自分のことを同名の孫と勘違いしているおばあちゃんから服をもらい、みんなに認識されるようになります。
※電ファミの記事より、世界観を最高に表した一枚
乗っているのはオヴォン、コヴォンというアニマルです
右の生き物は電波サル。バリバリ島にいます
その世界では実は勇者はやっかいもの。動物たちを殺して周り、家の中を漁ってまわりものを奪っていく存在として認識されています。
主人公はそんな世界の中で何をするのか?主人公は戦いません。剣で攻撃することもなければ魔法も使いません。月の女神様からの依頼で殺された動物たちの魂をそっと触って生き返らせてあげたり、困っている人たちを助けたりして「ラブ」を集めていきます。
何を言っているかよくわからないかもしれませんが、これが事実なので仕方ありません。拾ったMD(ムーンディスク)でお気に入りの音楽をかけながら、てくてく歩いてラブを集めるのです。
ラブを集めても主人公は強い技を使えるようになったりはしません。少しづつ長く活動できるようになり、遠くに出歩けるようになります。
その行く先々に勇者はいます。相変わらず動物を殺したりし放題です。参りますね。
そして、主人公はラブを集めて集めて集めて集めて、最後の最後、たどり着くのは月です。そう、勇者がドラゴンを倒そうとしていた月にたどり着くのです。
そして主人公と同じく勇者も月にたどり着きます。主人公がプレイしていたゲームのように。そしてその後勇者の凶刃に……
とかやってると全部説明してしまいそうになるのでこのへんでやめときますが、ちゃんとしたエンディングにたどり着いたときは痺れるほどの達成感がありました。
ー音楽
そしてもう一つ、このゲームに欠かせない要素が音楽です。
先程触れた通り、MD(ムーンディスク)というシステムを搭載しており、特定のシーンを除いて主人公がてくてく歩いている時にはお気に入りの音楽をかけながら歩くことができるのです。
moonには複数のアーティストが手がけた様々なジャンルの音楽が収録されています。ジャンルはジャズからテクノから津軽三味線まで、よりどりみどりです。
ちなみに僕のお気に入りは以下の動画の0:53:49~『226.46th st.』
軽快なサックスナンバーです。このMDをかけながら、世界中をてくてく歩いてラブを集めました。
※『Heads in the clouds』も好きです
・思い出語りパート
なんでこのゲームを買ったのか?記憶が確かならばVジャンプで連載されていた 石塚裕子先生の『犬マユゲでいこう』で取り上げられていて知ったはず。刻命館に続き、私のPSゲーム購入は大いにVジャンプに影響されていました。
このゲームはハマりました。
このゲームで一番聞くであろう「おばあちゃんの焼いたクッキーをあげようね」というセリフはモノマネできる位聞きました。
究極の雰囲気ゲーなのだと思いますが、突き詰められているとビタっとハマる人にはハマる、そういう作品なのだと思います。
(この度いくつか実況を見ましたが、ハマらない人は文句のほうが先に出るようです)
確かに、色々不都合な点はあります。
・歩くスピードが遅い
・その割にフィールドが広い
・アイテムを買うときに一つづつしか買えない
・進行にヒントが少なく、わからないものは永遠にわからない
・特定のイベントをクリアするためには「待つ」ことが必要になり手間
・釣りコンテスト難しすぎ
などなど、文句を挙げようと思えばいくらでも挙げられますが、それ以上に不思議な世界をウロウロ歩いて「ラブ」を見つけて回る、ということに楽しみを感じてしまったのです。
主人公も、それ以外のキャラクターも、動物たちも、ブッ飛んだ造形だけど愛らしい。音楽もそこまでキャッチーではないけれど、不思議な世界にはピッタリでした。
戦わないRPGとして強いアクがあるゲームでしたが、PSのゲーム史の中に燦然と輝く一本ではないでしょうか。
(最後に)
制作の「ラブ・デ・リック」は本作を入れてたった3本のみで解散しましたが、当時のメンバーは各所で「ラブデリ系」と呼ばれるゲームを作り続けています。
最近ではそのうちの「Million Onion Hotel」というゲームをプレイしています。
※買い切り480円
中身はパズルゲームですし、moonチームの全員が入っている作品でもありませんが、なんとなく、薫りが感じられて新鮮だけれど懐かしい気持ちでプレイしています。
ここで一番始めの記事に戻りますが、ものすごく印象的だった言葉がラブデリックの共同代表を務めた鈴木氏の冒頭のコメントです。
ラブデリックは『moon』が終わったときに終わったんだと思います。
一期一会の奇跡のゲームを、実機で体験できたのは幸せな経験でした。
しかし、懐古するだけではなく、奇跡のゲームは今後も沢山出続けるといいな、と思うし、また20年後同じように振り返ったときにあのゲームをできてよかった、と記事を書きたいなと思う今日この頃なのです。
それでは、次回はめくるめく競馬と配合の世界、「ダービースタリオン」でお会いしましょう。
(了)