『CryptoSpells』(クリプトスペルズ)は何が問題だったのか
(文字数約4,500文字。想定読了時間7分)
※2019/4/3 復活を受けて追記しています。
※2020/9/1 CryptoGames(クリプトゲームス)株式会社 代表 小澤 孝太様よりご連絡を頂戴し、以下の内容を追記することといたしました。
本記事は2018年10月時点での内容であり、2019年6月に正式リリース、2020年6月には地上波テレビCMを実施し、2020年9月現在、継続的な運営が行われております。
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本稿は『ブロックチェーンを使用したTCG』として最近発表され、プレセール(事前発売)が行われた10/1(月)の後、3日間の間に発売の一時中断、返金にまで駆け抜けたゲーム『CryptoSpells』の問題点を主にカードゲーマーの視点から論じるものです。
大づかみに言うと以下の三点に問題があった、と考えています。
①コンプライアンス上の不安
②ゲームとしての調整力の不安
③ゲームとしての調整力の不安に伴う資産価値の暴落の不安
これらについて自分なりの整理を記載したいと思います。
目次
・『CryptoSpells』とは?
-どんなゲームなのか
・問題点
①コンプライアンス上の不安
②ゲームとしての調整力の不安
③ゲームとしての調整力の不安に伴う資産価値の暴落の不安
・私見
・最後に
・『CryptoSpells』とは?
皆さん、『CryptoSpells』というDCG(デジタルカードゲーム)はご存知でしょうか?
繰り返しとなりますが、『ブロックチェーンを使用したTCG』として最近発表され、プレセール(事前発売)が行われた10/1(月)の後、3日間の間に発売の一時中断、返金にまで駆け抜けたゲームです。
※今はその弁明文が載っているのみ。兵共が夢の跡
……でしたが、しっかり復活されました。(2019/4/3追記)
とても話題になったのでTCG、DCG界隈の方はご存知かもしれません。
そして、色々見えている問題点があり、一流の地雷踏み職人と草コイン収集家以外は二の足を踏んでいたところのサービス停止と相成りました。
しかしながら、弁明文でも何が問題となったのかはわからず、多くの方は「まあなんかやばそうだったもんね」ということで整理されているのではないかと思います。
ここで、本ゲームの問題点を自分なりに整理し、復活時にどうなっているかをウォッチしたいなと思います。
(ちなみに、私は地雷踏み職人なので手を出しています。)
※ぼくなりのおうえん
この子は9999枚発行されましたが売り切れました。
僕は10枚だけ買ってました。
ー どんなゲームなのか
ざっくり言えば「ハースストーン」「シャドウバース」「ドラクエライバルズ」あたりのゲーム感だとご想定ください。
※盤面に列概念がないあたりはハースが基本。
「チャージ」という行動がいわゆるDQRと同じく段階式
なので普通に考えたらハースストーンをやっていればいいのですが、今回新しい点は「ブロックチェーン」を使った「非中央集権的」カードゲームと謳ったところ。
要は
・カードはブロックチェーンを使ったデジタルな資産(仮想通貨の親戚)となり、ゲーム外でも取引できるよ。サービスが終わっても資産だよ
・ブロックチェーンの「非中央集権的運営」をカードゲームの運営にも反映するよ
ということとなります。
(これがどういうことを引き起こすと想定されるかは追って)
・問題点
①コンプライアンス上の不安
公開当初、ページには
・MTG・遊戯王・ハースストーンのロゴ
・MTGのカード「Black lotus」のカード画像
・漫画『HUNTER×HUNTER』の数コマ
などが貼り付けられていました。
明らかに許諾をとっていないであろう競合のロゴ、説明をする際に他のゲーム・漫画の中の理論を抜き取って説明するそのセンスなど、
この時点で「この会社だいじょぶ?」感が出ていました。
その後これらはさすがに削除されました。
時を同じくして、カード画像が過去のサイバーエージェントのゲーム
『天空のクリスタリア』と同様のものが使用されており、
「おいおいまさかカード画像までパクリかよ」
と議論を呼びました。
(ただ、これについては公式から「権利処理済」と声明が出ました)
このあたりのポイントから、かなりコンプライアンス意識が高くない会社だな、ということでまず不安視されていました。
②ゲームとしての調整力の不安
そしてもう一点、カードゲーマーが「え、マジ?」となったのがこの点
「トークンのユーザーの投票による運営」というパワーワード
どのような運営をする気だったかはわかりませんが、
資産を保有するユーザーたちは自分に有利な形にカードのナーフ・バフをしたいに決まっています。それにより資産価値も変わるわけですから。
同時に、強いカードに人気が集まり、弱いカードには人気が出ないことが想定されます。カードゲームをなら当然です。
事実、私が購入したライトニングボールについては、9,999枚の発行枚数のうち、少なく問も4,000枚が同一人物により購入されたことがTwitter上で確認されています。
このカードはハースでいう「ファイアーボール」
DQRでいえば「メラゾーマ」
青/ソーサラーを使うとすればまず3枚積むことが想定される、いわば基本カードです。
この状況を例に挙げると以下の2つの点が問題となりえます。
・将来「ライトニングボール」が強すぎるとして問題となった場合にナーフすることが困難なおそれ(カード保有者が偏っているため)
・強すぎる「ライトニングボール」が新規参入したいプレイヤーの障壁となるおそれ(使いたくても使えない・使われると負ける……など)
※購入行為自体は適法ですので、大量購入をするプレイヤーの方を責める
意図は全くないことを付言しておきます。
非中央集権的ゲーム運営といえば聞こえはいいのですし、民主主義的な感じもするのですが、各カードゲーマーが「公平・公正」に、「ゲームが永続して楽しめるように」運営する義理はありません。
MTGを始めとする各カードゲームの運営は1枚のカードのエラッタ・制限・禁止によって何が起きるかを必死に考え、やはりそれでも現状が問題あると思った場合に運営の責任で禁止改定を出します。
これを「投票による」とするセンスは、当該社のTCG・DCGの運営ノウハウのなさを露呈しました。
(ついでに)
本プレセール時点で、何名か有名なハースストーンプレイヤーが調整に入るということでアナウンスがされていたようですが、Twitterでのやりとりを見ると、「カード公開時点ではまだ何も知らされていない」という回答だったようです。
通常、カードが公開される時点では全てのカードリストが揃っており、調整済の状態で公開されるのが当然です。(カード同士のパワーを調整したり、シナジーの調整をするわけですから)
この点で外部の有名DCGプレイヤーの力の借り方もわかっていない、ということが明らかになっています。
③ゲームとしての調整力の不安に伴う資産価値の暴落の不安
調整がうまくなされていない、面白くないゲームは当然ゲームに参加する人は多くなく、どんどん減っていきます。
また、カードが刷られる枚数も
レジェンド:999枚
ゴールド:1,999枚
シルバー:4,999枚
ブロンズ:9,999枚
と、非常に少なく、上限である3枚までカードを使おうとすれば333人しかプレイすることはできません。
※ちなみに、例に挙げられた「Black lotus」は刷られた枚数だけで言えば20,000枚と言われています。
それでも数百万円の値がつきますし、使用できるヴィンテージフォーマットを行っている人は非常に数少ない存在です。
※今200万でした
当初時点で300人から多くても3,000人のプレイヤーが行うDCG、と考えたときにそのゲームは楽しいでしょうか?
まず楽しくありません。マッチングしませんから。
ハースストーンはDL数で言えば5000万人。
まさしく最近惜しまれながらサービス終了した
「WAR of BRAINS」(ウォーブレ)も事前登録者だけで100,000人程度いました。(その後の人口推移はちょっとわかりませんが。。。)
※最初やってましたよ。楽しかったですよ。
DCGの肝は「いつでもマッチングすること」です。
というよりマッチングしない対人ゲームに楽しみなどありえません。
これらの点より、
・総需要の小さいゲームであること
・新規参入障壁が上記の通り存在すること
から、ゲーム自体の永続性・ひいては各カードトークンの価値にも影響する可能性が高いと考えられます。
そんなゲームやりたいですか?
よって、このゲームトークンを資産として見たとしても、永続的にプレイされることが非常に想定しづらいため、一番最初に需要の山が来て、その需要の山に乗って購入価格よりも売り抜けられれば得、売り抜けられない・あるいは後発参入は損、という形になることが想定されるのでした。
・私見
これらのことを踏まえて、色々なところから疑問反論が出ることはまあ想定通りですが、今回サービスの一旦停止・返金にまで自体は移行しました。
彼らが何を問題視し、サービスの継続が不可能と判断したのかはわかりません。上記の点かもしれないし、そうでないかもしれません。
これらが適切に修正され、真面目に面白く、かつ資産として残り続けるカードゲームを作ろう!という意識が運営にあればとても良いことだなと思います。なので、現状は返金を待ちながら11月のロードマップ発表を待つ以外ありません。
(ロードマップ、出ましたし、その後ホワイトペーパーも出ました。2019/4/3追記)
一旦はまず返金されるかどうかをとにかく待ちたいと思います。
(直後、しっかり返金されました。2019/4/3追記)
・(私見のおまけ)
ここからは完全に邪推ですが、このゲームはTCG/DCGのつもりで出したのではなかったんだろうな、と思っています。
まさしく、「暗号通貨(仮想通貨)」の発行をしたつもりで、それに価値(物語性・利用性)を付け加える、というのが運営のやりたかったことだろうな、と思っています。
要は草コイン発行です。
なので、想定ターゲットは仮想通貨を購入し、値動きを見て売買する投機家の皆さんだったのだと思います。
しかしターゲット外の人にも広まってしまった、というのが現状ではないでしょうか。TCG民って多いんだなあ、と思った次第です。
・最後に
今回の件で、一番得したのは誰でしょうか?
僕はこれで招待者の課金額の15%を受け取った人だと思います。
おめでとうございます。
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※2020/9/1 CryptoGames(クリプトゲームス)株式会社 代表 小澤 孝太様よりご連絡を頂戴し、以下の内容を追記することといたしました。
本記事は2018年10月時点での内容であり、2019年6月に正式リリース、2020年6月には地上波テレビCMを実施し、2020年9月現在、継続的な運営が行われております。
(了)
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