【不動産再生】事業戦略&業界で起きている悲劇
事業戦略を晒して業界で起きている悲劇をあえてつっこむメリットなんてまあ無いわけですが、知らずに後で後悔した人が身近にいたので書きます。
「空き家を面白いスポットにしてほしい」
みたいな不動産オーナーやデベロッパーからの相談を受けて店舗プロデュースする案件を受託してきました。
今はアドレスホッパー生活で地方を旅する中で出会う本当に応援したい人に絞って受託をしています。
駅直結のシェアキッチン×食ビジネスの発信拠点
「新大久保フードラボ」(JR東日本様)
一日店長Bar×コワーキング×イベントスペース×シェアハウス
「Neriba」(取締役COOとして経営)
Cafe Bar ×植物×本×シェアハウス
「b.e.park」(取締役COOとして経営)
いわゆる「不動産再生」事業をする中で注目してもらって同業者と話すことも多々。
そんな中で違和感を覚えることが多かったので、ちょっとネガティブな掲題で恐縮ですが思っていることを言いたくなって書きました。
事業戦略
【市場動向】確実に増えていく空き家と需要過多の現状
まずは予備知識から。
(株)野村総合研究所の調査によると2033年には空き家率が30%になります。
数字にしてみるとすごい数字ですよね。
ちなみに空き家が増えることでざっくり2つの問題があります。
問題視されているものが増えていくわけなので当然その対策したいと思う人がいる=ニーズがあるわけです。
ここまでは当たり前の話、次からは実体験に基づく話。
【広報マーケ】メディア注目度と他事業への波及
不動産再生ってまあ儲からないのですが、儲からない中でどう事業に取り組むメリットを見出すか考えてたどり着いたポイントです。
僕が取り組むメリットをお金以外に見出すことができれば、不動産再生案件の中で僕がもらうマージンも少なく済みます。
ということで他事業へのシナジーを狙ったPRを目的の一つに据えています。
不動産再生というからには「今までこんな場所だったけどこうなったよ」的なアウトプットになるわけですが、それが様々なメディアでウケます。
いや、メディアでウケるというより一般的にウケる。
・わかりやすい
・社会貢献性が高い
・珍しい
不動産再生はこの3拍子が揃っておりPRに超便利なコンテンツです。
広報力がなくても話題性だけで最低限の広報なんとかなります。
ここでお伝えしたいことは「メディアに掲載されやすいから不動産再生事業がうまくいく」ではなく、「メディアに掲載されることで他事業にも良い影響がある」です。
メディアに掲載されていること自体が信頼性や権威性などブランディングに大きく寄与します。
本note冒頭にも私のメディア掲載実績があることで、読み進めていただける割合が増えたり内容の説得力が増したりします。
なんかすごいっぽい、おもしろいことしてる人、となるわけです。
ぶっちゃけメディアの内容までちゃんと見られるわけじゃなく、それがむしろなんかすごいっぽいに寄与します。
下記、弊社サイトの代表プロフィールに掲載している私のメディア出演歴です。
僕の場合は「不動産再生」の他に「アドレスホッパー」「20代社長」という分かりやすいテーマがあるので数が多いです。
メディア掲載されるとメディア関係者の目に留まって声をかけてもらえたり、メディア向けに話し慣れていくようなメリットもあります。
他事業への波及効果があれば弊社も嬉しいし、それをお金以外のメリットと考えてクライアントからいただく弊社分のマージンを下げることができる。
戦略的に取り組むなら活かさない手はないです。
【競合優位性】店舗経営経験があるプロデューサー
元々不動産業界にいなかった吉田が不動産再生事業に取り組めている理由です。
不動産を再生された後は店舗や住居ができるわけで、再生された後の戦略を立てることも必須になります。
そこで実際に店舗運営をしていた経験が活きるわけです。
しかし実際の案件で不動産オーナーやデベロッパー、不動産会社が企画を練っているタイミングでは具体的な戦略や事業の詳細、進め方を決めていく人材がいないケースが多々あります。
不動産会社は不動産を転がす(売買や転貸)ことが多く、そもそも運営をやっているわけじゃない。
運営やりたい人は飲食やホテルなどの運営会社に入社するだろうし、本気で運営やりたい人もあんまりいなかったりするのは当然です。
ちなみにメインでやっていない運営を考える必要がある理由は、そもそも不動産の借り手が見つからないから空き家になっていること。
誰も借りてくれずに空き家になっているから不動産会社が体を張って運営を検討する必要があるんです。
ただ前述の通り運営は不動産会社の本業ではありません。(もちろん運営強いところもある)
案件を進めていくほど運営の具体的な部分を検討していく必要があり、じわじわ困っていきます。
そこで不動産再生案件を何度も経験していて複数のビジネスで店舗運営をやっていた吉田に相談が来るわけです。
ただ一方で僕は不動産事業に必要な資格も持っておらず、不動産会社にできて僕ができないことがあります。
不動産オーナーから直接相談をもらっても付き合いのある不動産会社さんには必ず連絡します。
持ちつ持たれつ。
業界で起きている悲劇
【悲劇の原因】プロジェクト全体のゴールが「不動産を再生させること」に持っていかれる問題
不動産再生案件は多くの場合、不動産が活用されていないことの課題感から始まります。
なので不動産オーナーや不動産会社が最初に設定するゴールは「不動産を再生させる」です。
ただし運営者は不動産を再生させた後の展開に目を向けるべきで、不動産を再生させること自体が全体のゴールになると持続可能な場所づくりには至りません。
運営者は運営がうまくいくことをゴールに据えるべきです。
当たり前ですよね。
不動産会社としては借り手を見つけたいわけですが、「再生」と表現されるような不動産には使われていなかった理由が当然あります。
立地が悪かったりボロくて初期費用がかかったり…普通の不動産に比べて借り手を見つけるハードルが高いです。
そうなると案件が進まないので自社で運営してみようという話にもなります。
もしくは他の案件獲得につなげることを目的に「まず自社で運営実績を作ろう」みたいなケースも多々。
要は「運営は後からどうするか考えてなんとかする」って流れになりがちなわけですが、そういったケースでは下記のような悲劇が起こることがあります。
【悲劇①】ニーズのないコンテンツがトップダウンで決定される
前述の通り、不動産再生案件は多くの場合、不動産が活用されていないことの課題感から始まります。
初期段階で「カフェがあると良さそう!」「コワーキングスペースつくりたい!」といったアイデアが出ていて盛り上がることが多いです。
そういう会議は本当に楽しい。
しかし初期ブレストのアイデアがクライアントやオーナーの要望としてプロジェクトの絶対条件として定着して進行してしまうことがあります。
例1はよくあるケースです。
ただ仕方ないと思う部分もあって、ニーズがなくたって不動産は不動産オーナーの所有物なので要望は絶対になってしまうことがあると思います。
そこで後に起こる悲劇を食い止めるために不動産会社や運営会社が提言できれば素晴らしいですが、難しいこともあるのかなと。
不動産オーナーの要望を不動産会社と運営者が頑張って叶えられると素晴らしいですね。
例2は最悪です。
まずアイデアを出す段階で不動産会社が少しは市場調査した上で提言すべきなのに不動産オーナーが言ったことを絶対条件として呑んでしまっていることに他責の仕事姿勢が伺えます。
またアンケートの取り方もひどくて、「カフェほしいですか?」って聞かれたら大体ほしいと答えられます。
どれくらいほしいか(頻度や金額、シーン…)などの深度を無視しているし、ほしいorいらないの二択質問なんて得られる情報が狭すぎます。
なんでこんなことが起きるのかというと、不動産オーナーと不動産会社に市場調査の専門家がいないケースが多いからです。
だからこそ吉田みたいな不動産再生プロジェクトと店舗経営を経験しているマーケターへ仕事を依頼してもらえるわけですが、それにしてもあまりにも適当にコンテンツが決まることが多いと驚いてきました。
【悲劇②】運営が早々に撤退して空き家に戻る
運営者が不動産再生案件に参入する主なメリットは「安さ」「おもしろさ」の2点ですが、一度再生されることでメリットが無くなってしまうケースがあります。
①安さ
他物件よりボロくて使われていないけど、その分安いため初期費用や固定費を抑えることができることもありますが、リノベーションなど設備投資がされる場合に不動産価格が上がってしまってより手が出しにくくなるケースも。
ボロくなったから手を出しやすい価格になったのに、キレイでも立地的には高すぎて手が出なくなってしまい使われなくなるスパイラルが起きてしまう可能性があります。
結果的に安さという良さを潰してしまうだけの悲劇です。
②おもしろみ
不動産の歴史を新拠点の付加価値にでき得る点が不動産再生案件の強烈なメリットです。
「地域に愛された老舗寿司屋が若者で賑わうバーに生まれ変わる」
「歴史ある廃校が宿泊施設に生まれ変わって県外から人を呼び込む」
みたいなコンセプトなど、おもしろいですよね。
しかし一度再生されるとその強みを活かせなくなります。
例えば「老舗寿司屋をバーにしたけどニーズがなくて廃業した場所でカフェやる」とかあんまり素敵じゃないですよね笑
これはかなり致命的です。
店舗運営では撤退なんてよくある話ではあるものの、不動産再生案件だからこその悲劇。
おわりに
気付けば長編になってしまいました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
冒頭に記載の通り事業戦略と業界の問題点に言及することはプレイヤーとしてリスクでしかないのですが、自分が本気で取り組むための退路を断つためにも書きました。
自社の強みを磨きながら業界で起きている悲劇が少しでも解消されるよう尽力していきたいと思います。
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