家族としての礼遇
「ほれ母さん、スリッパ」
「ええと、スリッパスリッパ……」
玄関まで出迎えてくれた彼のご両親はスリッパを探してバタバタしていた。
彼に続いておうちに上がる。畳敷きの茶の間にコタツが置かれていた。
ひとつだけある座椅子を勧められる。
そんな、私だけ座椅子なんて気まずい。だけど私以外がコタツの3辺に座ってしまったので、しかたなく座椅子に正座した。
お茶とみかんを出される。
「遠くて疲れたでしょ。上に布団敷いてあるから。いつでも寝ていいからね」
お母さんはそう言い、お父さんはテレビを点ける。笑点がやっていた。彼もご両親も、笑点を見ながらみかんを食べはじめる。
拍子抜けした。
もっと、親の仕事のこととか聞かれると思っていたのに。
「見たいテレビあるかい?」
「みかんよりリンゴがいいかい?」
私がどんな人間であっても、この人たちは家族として受け入れてくれるんだろうな。
温かなコタツの中でそっと足を崩し、みかんを手に取った。
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