差添いの夜
無数のオレンジ色の灯りが、夜空に輝く。
法被を着た男の人たちが、たくさんの提灯がついた長い竿を肩に乗せてバランスを取っている。
「きれいですねぇ」
隣を見ると、義母も目を細めて竿灯を眺めていた。
「お義母さん、竿灯は何年ぶりですか?」
「ええと……20年ぶりねぇ」
そんなに長い間、義母は故郷に帰っていなかったのか。
と思ったが、そんなことはない。竿灯の時期に来るのが久しぶりなのだろう。
法被の人が竿灯をおでこで支えた。
「わ! すごい!」
義母を見ると、竿灯ではなく私を見ている。
「良かった。死ぬ前に、あなたに見せたかったの」
「……疲れてませんか? ホテルに戻りましょう」
義母の手を取り、人ごみから守るようにして歩いた。出会ったときよりずっと、背中が小さい。
「来年、また来ましょうね」
「来年は、私もういないから」
「……いやです」
オレンジ色の灯りが滲み、夜空に溶けていった。
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