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ura_310
奇偉な人
「なっちゃん、すっかり立派になって」
今年90歳になる曾祖母は、そう言いながら西瓜を出してくれた。
「……ぜんぜん立派じゃないよ」
謙遜じゃなく、本当に立派じゃない。高校は一年前にやめてしまって、今はほとんど家にいる。
親戚の集まるお盆。「今は何してるの?」と聞かれるのが嫌で、遠方の曾祖母の家に逃げてきた。
扇風機の風が心地よい。虫の声も東京とは微妙に違う。
テレビでは終戦記念日の特番をやっていた。
「……終戦のとき、大ばあちゃんは何歳だったの?」
「17かね」
今の私と同じだ。
私だったら、戦火の中を生き抜ける自信がない。命の心配がない現代でもメンタルを病んでいるのに。
大ばあちゃんは本当に生きるか死ぬかの思いをして、それでも生きてきたのだ。
「大ばあちゃんは偉いね」
「なっちゃんだって偉いさ。生きてるもの」
言葉につまった。
「なっちゃん、生きててくれてありがとうね」
涙がこみ上げてきて、俯いて西瓜を齧った。
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