本当に、どうしようもなく
「思ったより都会」
俺がそう言うと、後輩は「初めて来た人、みんなそう言います」と笑った。就職活動中は黒かった髪が、栗色になっていることに気づく。
北の街は大きなビルが整然と並んでいる。街を貫く公園の中を、肩を並べて歩いた。すっかり暗く、空気が冷たい。
「こっちは慣れた?」
「慣れましたよ。もう寒いのも平気。先輩は新しい職場慣れました?」
「慣れたよ」
「出張とかかっこいいですね」
うまい返しが見つからず、中途半端に笑って誤魔化してしまった。
「あ……」
唐突に、雪が降ってきたことに気づいた。
街路灯のオレンジ色の灯りに、ちらちらと舞い落ちる雪が照らされている。背景は紺色の夜空。とてもきれいだ。
「あれ、きれいですよね」
「え?」
「街路灯に照らされた雪でしょ、先輩が見てるの。わかります。私も、あれ好きなんです」
街路灯を眺めたまま、後輩は目を細める。
本当に、どうしようもなくきれいだと思った。
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