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書籍「あなたの不安を解消する方法がここに書いてあります。」 #全文公開チャレンジ 第5回

こんばんは。ニッポン放送・アナウンサーの吉田尚記です。

#ふあかい 全文公開の第5回は「メソッド1」のつづきからお届けします。

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メソッド1  「不安」の正体を明らかにしよう

とりあえず、具体的にやってみる

 では、「これからどうするか」の中身について考えてみたいと思います。その方法とは、ぼくは具体的に2種類あると思っています。

 ①真正面から不安の原因と向き合い、問題を解決していく。
 ②不安の原因になったこととは別のことに夢中になる。

 まずは、対処法の①から。
 ぼくがかつてコミュニケーションの不安を克服できたのは、まさにこれ。アナウンサーという仕事柄、不安の原因だったコミュニケーションと真正面から向き合わざるをえない状況でした。トライして、失敗してを繰り返すなかで、ある日、ふとしたときに「あ、オレ大丈夫かも」と思えた瞬間がやってきたんです。

 今回の例、「陰キャとからかわれていないか不安」は、実際にからかわれてたわけではなく、からかわれているかもしれないから不安なわけですよね。だったら、まずは実際のところを確認してみるというのはどうでしょうか。本当に「陰キャ」だと思われているでしょうか? それ、調べてみましたか?
 では、具体的な行動にしてみましょう。「友だちに直球で自分の印象を聞いてみる」。どうですか? 「そんなの無理!」という声が聞こえてきそうですが、いったん感情は置いておく。ひとりだけだとサンプル数が少ないので、何人かに答えてもらうといいかもしれません。部活の先輩や後輩など、ターゲットを広げると、さらに客観性も高まるはずです。
 え? そこでもし「陰キャだって言われたらどうする?」って? それは次の問題です。
 陰キャと言われたくないのであれば、「髪型を変えたり、身だしなみを整える」「自分から積極的に人に話しかける」「話しかけられたときに明るい声で反応する」「世間受けのいい趣味に参加してみる」などなど、やれることはたくさんあります。
 もっとも、決して陰キャがよくないと言っているわけではありません。あなたを悩ませる不安がそれであるならば、あくまで不安を取り除くための具体的な対処法としての提案です。
 ここでNGなのが、ただ単に「陽キャになりたい」と「to be」で考えてしまうこと。なりたい、そういう地位を占めたい、というのは、自分で決められることじゃないんです。周囲が決めること。そうではなく、「陽キャの人は何をやっているんだろう?」と「how to」で具体的に考えてみる。

 ほかにも「成績が悪くて不安」なら、成績が上がるように勉強すればいいし、「部活で勝てるか不安」だったら、さらに練習を積んで、勝つ確率を上げればいい。
 不安を根本から解決するには、結局、正面突破するのが一番の解決方法だと思います。
 ただ、やってみたからと言って、結果は保証できないです。残酷な言い方ですいません。
 しかし、切実にやってみたいことで、結果が保証されていないことに挑戦している間は、うまくいく・いかないにかかわらず、かならず夢中になっているはずです。夢中になっている瞬間は、むしろ不安になれません。正面突破を目指せば、必ず夢中になれますが、いろんな状況のせいでそれを目指せないこともあると思います。

 そんなときにおすすめしたいのが、対処法の②「不安の原因になったこととは別のことに夢中になる」です。

 陰キャとからかわれるのは嫌かもしれませんが、そう判断するのは先方の勝手。人の考えを無理矢理変えさせるのは、ほとんど不可能です。相手の考えが自分にとって都合が悪い、という不安に正面から取り組むことに意味がないと気づいたら、不安の原因とは距離を置いて、別のことに夢中になってしまえばいいんです。
 陰キャとからかわれている問題に対するぼくのおすすめはこっちですね。
 クラスで陰キャと言われていようが、そんな状況が気にならないほど、趣味や部活などはもちろん、他人から見たら心底くだらないことでも、やりたいことに没頭する。
 夢中になってやりたいことをやっている時間ほど、すべてを忘れさせてくれることはありません。その貴重な時間を割いてまで、嫌な人たちと付き合ったり、そのことについて悩んで振り回されるなんてもったいなさすぎると思いませんか?

 ぼくも高校時代、受験勉強もろくにせずに、ひたすら神保町へ入り浸って、本や漫画を読み漁っていた時期がありました。おかげで大学受験は1浪しましたが、その経験が、今超生きてます。というより、どう考えてもそのとき学んでいた学校や塾の勉強よりも、アニメ雑誌を読んだり、アニメ映画の公開日に朝から映画館に並んでいたことの方が、今の仕事にとっては重要でした。ただそのときは、将来役に立つとか立たないとか関係なしに、自分をなくしてしまうくらい〝没頭〟していただけです。

 もうひとつ例を引きたいと思います。
 これは軽々しく扱ってはいけない話になりますが、2011年の東日本大震災の直後、福島県・いわき市の避難所を訪れたことがありました。
 大きな体育館に避難されている方の大多数がお年寄りだったんですが、何らかの事情があったんでしょう、ひとりだけ、若者がいました。多分10代の男子です。彼は、仕切りもない廊下に敷かれた布団の上にあぐらをかいて、頭も上げずにゲームの『モンスターハンター』を一心不乱にプレイしていました。
 こんな状況でゲームなんて、という方もいると思います。でも、ぼくは、彼には『モンハン』があって本当に良かった、と、この光景を見て涙が出そうでした。起こってしまった災害。これはもう、どうしようもない。正面から立ち向かってなんとかすることなんて無理なんです。どこかで、彼が動けるようになるタイミングは来るのでしょうが、それまでの間、目の前の状況を正面から受け止めて、まともな精神状態でいられるとは思えない。そんなときに、夢中にさせてくれるゲームがあったこと、それが、彼にとってどれだけ意味があったか。コンテンツが人を救う瞬間を見た思いでした。あのときに、彼に必要だったのは、「がんばれ」と声をかけたりすることでは決してない。夢中になれるものを、差し出すべきです。
 そして、それは決して他人事ではないんですよね。ぼくたちにだってこの先の人生の中で、自力ではどうしようもない事態に直面する可能性は十分にある。
 そんなときに、正面切って問題解決にあたるだけが対処法だけじゃないと知っておくことはいつか有用になるときがあるかもしれないし、他人がつらいときに何をすべきか、ひとつのヒントになると思います。

具体化って超大事

 ひとつ目の方法もふたつ目の方法も、大事なのは、〝やるべきことを具体化して行動する〟こと。
 人間って、やるべきことが「具体的」であればあるほど、余計なことを考えて立ち止まる必要なく、スムーズに行動できます。
 何かやろうとするとき、あれこれ迷ったり考えたりする余地が出てしまうと、人はなかなか行動に移れません。

 ちょっと遠回りかもしれませんが、具体化がいかに大事かわかるエピソードをひとつお話ししたいと思います。
 以前、ある人気お笑いトリオがパーソナリティを務めるラジオ番組の生放送中に目撃したことです。本番中、ちょっとしたトラブルが起きて、パーソナリティが急遽その場をアドリブでつながなければならなくなってしまいました。ブースの外にいるディレクターも焦った様子。ヘッドホンから「なんとかしてつないでください」と指示を送ります。パーソナリティは、一瞬「え?」という顔をしながらも、そこはプロですから、とっさのトークでつないで事なきを得ました。
 でも、実はこのときのディレクターの指示って、パーソナリティにとっては非常に不親切なものです。「なんとかしてつないでください」って、全然具体的じゃないから。どんなに優れたパーソナリティだったとしても、どうしても「え? つないでって、どうやって?」となるし、「3分なの? 1時間なの?」などとも考えなければいけなくなってしまう。不安ですよね。
 そうならないために必要なのが、〝具体化〟です。

 ディレクターからの指示が、「なんとかしてつないで」ではなく、「今、自分が手に持っているものを説明して」だったらどうでしょうか。パーソナリティは、「ところで今、オレが手にもってるボールペン、一見普通に見えるけど、ちょっと機能が違うんだよね。この上のボタンを押すと……」なんて説明しているうちに進行上稼ぎたかった時間は過ぎ、結果的に「つなぐ」ことができ、番組をトラブル無く進めることが出来ます。

 不安を正体不明のままにしておいても、いつまでたっても消えてくれません。それに対処する方法は〝具体化〟すること。
 具体的に不安の原因を分解して、一つひとつ解決していくのが正面突破する「ひとつ目の方法」。それはそれとしていったん置いておいて、とりあえず今自分がやりたいことを具体的に見つけて、行動に移すのが「ふたつ目の方法」です。
 具体化、超大事。

 逆に不安を増幅させてしまうのは、「何もしないこと」です。
 私の話ですが、当時アナウンサーというのは就職の内定が出るのがめちゃくちゃ早く、大学3年生のうちにもう、就職が決まっていました。しかし、社会人としてアナウンサーとして自分がやっていける自信はまったくない。その不安を早くなんとかさせて欲しかったけど、まだ仕事の現場に行かせてもらえるわけでもない(今から考えると、そうしてもよかったと思うのですが)。何もしないで「どうしよう」と暗くなっているだけで、何をしたら将来のためになるのかまったくわからず、何をしても身が入らず、不安で不安でしょうがない、人生最大のウツ期でした。なんでもいい。それが合っているかわからないとしても、具体的に行動すれば、不安はいつの間にか影を潜めるはずだったんです。
〝不安〟が顔を出し始めたら、とりあえずやってみる。

もくじ

はじめに
メソッド1
「不安」の正体を明らかにしよう

 -不安はどこからわいてくる?
 -不安は社会の原動力

 -不安の先には、死しかない
 -コミュニケーションからの完全な断絶が、死

 -「不安」はまったく役に立たないもの?
 -不安への対症療法は、「これからどうするか」

 -とりあえず、具体的にやってみる
 -具体化って超大事

 -「なんか大丈夫」感=セルフエスティーム
 -考えるよりも、行動しよう
 -人生で一番役に立たないプライドの話
 -手っ取り早くセルフエスティームを上げるには
 -COLUMN① パソコンは生産の道具、スマホは消費の道具
メソッド2
知らない人に話しかけてみよう
 -「モテたい!」は、叶うのか?
 -コミュ力は才能じゃない
 -知らない人に話しかけるために必要な持ち物
 -コミュニケーションとは、協力型のゲームだ
 -聞いたらダメ、やったらアウトってなんだろう?
 -人に好かれる方法はない
 -彼氏・彼女がほしい! だったら知らない人に話しかけよう
 -実践編① コミュニケーションに最も必要なのは「質問力」
 -実践編② 質問はWhyよりも、Who・When・Where・What・Howが有効
 -実践編③ 会話のきっかけ「木戸にたちかけし衣食住」
 -実践編④ 会話を「えっ!」でトラップする
 -実践編⑤ 間違った情報でもぶつけてOK
 -実践編⑥ 自分の気持ちを表現する=説明力
 -実践編⑦ あいさつをしよう、時間を守ろう
 -実践編⑧ 大きな声が出せていれば、なんか大丈夫
 -COLUMN② 「集中力」は「無視力」
メソッド3
“深刻ごっこ”禁止
 -悩みは自分に何をもたらす?
 -「みんな悩んで大きくなった」はウソ
 -深刻さとはエンタメである
 -決断だけが、人を成長させる
 -承認を目的とすることはできない
 -きみが不機嫌になるのはなぜ?
 -実践編① バンザイして悩んでみよう
 -実践編② 悩みから「暗くなる」をとっぱらってみる
 -実践編③ 適度に“深刻ごっこ”を楽しむ
 -実践編④ 悩むの禁止
 -実践編⑤ やりきることを目的にする
 -実践編⑥ 他人に期待しない
 -実践編⑦ 愛嬌最強説
 -COLUMN③ 引き出しを増やす方法
メソッド4
「面白そう!」さえあれば、人生は大丈夫
 -「夢を持て」って言うけれど
 -100個やって、どれか1個ハマればラッキー
 -今しかできないことをやろう
 -〇〇をやりたいのか、〇〇家になりたいのか
 -楽しむってなんだろう?
 -完全な自由はないけど、どの不自由にとらわれるかを選ぶ自由はある
 -結論。不安を解消する方法=知らない人に話しかける
おわりに

というわけで、今日はここまで。続きはまた明日!

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