「不機嫌」で周囲を動かすってカッコ悪くない? 書籍「あなたの不安を解消する方法がここに書いてあります。」 #全文公開チャレンジ 第29回
こんばんは。ニッポン放送・アナウンサーの吉田尚記です。
#ふあかい 全文公開の第29回。本日も前回に引き続き「メソッド3」のつづきをお送りします。
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メソッド3 “深刻ごっこ”禁止
きみが不機嫌になるのはなぜ?
深刻にとらえることによって、あなたの人生に意味は生まれるかもしれませんが、同時に害も生まれます。主に対人関係の面で、です。
深刻だったり悩んでいるときは、深いところでは楽しんでいると思いますが、同時に、ストレスを感じていることも確かです。イライラする。不機嫌になる。こんなネガティブ感情なんて、なければいいのに。でも、この不機嫌さが何のためにあるのか、考えたことがありますか? また、アドラー心理学の考え方で恐縮ですが、ネガティブ感情は、「人に言うことを聞かせる」ためにあるんです。
え、そんなつもりはないって? とりあえず、自分のことは置いておいて、冷静に見てみてください。人生はロングショットで見れば、喜劇。
不機嫌な人の言うことって、理屈も何もなく聞かなきゃいけないような気がしません? たとえば赤ちゃんって「眠い」とか「お腹減った」とか「おしっこがでた」とか大泣きすることで、周りにネガティブ感情を発信しますよね。それによって、親や周りの大人たちが動く。赤ちゃんじゃなくても、不機嫌さってこれと一緒なんです。ネガティブ感情は人を動かすために使われる感情。周囲の人に言うことを聞かせたいから、不機嫌な態度をとる。今度は、自分が不機嫌なときを思い起こしてください。そういうときって、うまくいかないから、無理矢理、自分以外の何かを動かそうとしているときじゃありませんか?
ただ、赤ちゃんならともかく、自分で感情をコントロールできる歳になってからも不機嫌さで周囲を動かそうとする人って、ちょっとカッコ悪い気もします。それによって動かされた周りも、なんだか嫌な気持ちになってしまうはず。だいたい都合が悪いときに周囲を動かそうとするのって、犬だってやることです。飼い犬もすれ違う犬に対して、怒ってますよね。
短期的には不機嫌で人を動かす方法が有効なときもまれにあるかもしれませんが、実際はどうにもならないことの方が多いですよね。
今回の相談「3年生でひとりだけレギュラーから外されて、イライラして死にたい」というのもそうです。いくらイライラして不機嫌になったところで、「きみが不機嫌にならないように、明日からレギュラーにしようか」なんていう展開にはなりませんよね。だったら死にたくなるだけ無駄なんです。
たとえ周りが動いてくれたとしても、実力じゃなくネガティブ感情による結果だったら、ネガティブ感情が消えた後は、その地位がなくなるはずです。そうすると、ネガティブ感情にとらわれ続けることになる。どうでしょう、どういう気持ちですか?
「他人じゃなくて、できない自分自身にイライラしている」という言い方もあるかもしれません。「自分はもっとできなきゃいけないのに、どうしてダメなんだ!」。高い目標を課して、できないことを認識して行動することはとてもよいことだと思いますが、その間に「不機嫌になる」というステップを挟むことはまったくの無駄です。
2019年に開かれた「JAXAシンポジウム」で、國中均所長、宇宙飛行士の金井宣茂さんらに小惑星探査機の「はやぶさ」の話をうかがったことがあります。プロフェッショナルそれぞれの立場から非常に面白い話が聞けたのですが、宇宙を股にかけるプロジェクトですから、計画通りにいかなかったことがたくさんあったそうです。ただ、たとえば不具合が起きたときに、「ぼくはこんなに一生懸命やってるのに、『はやぶさ』がいうことを聞かない。なぜだーーー!!」って怒ったとしても、物理法則は何も変わらないわけです。人間相手ならまだしも、自然や宇宙や物理法則に対して怒るなんて、まったく意味のない行為。それによって自分自身も余計嫌な気持ちになるだけです。ですから、プロフェッショナル集団のJAXAの皆さんは、多少都合が悪いことがあっても、嘆き悲しんでいる人はいませんでした。すぐ、「これからどうするか」という行動に移ります。
*7 JAXA|国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構。2010年に小惑星からのサンプルリターンを世界で初めて成功させた「はやぶさ」の帰還(きかん)オペレーションで注目された。
*8 金井宣茂|1976年生まれ。JAXA宇宙飛行士、医師。2017年~2018年、国際宇宙ステーションに長期滞在。
不機嫌や深刻さやネガティブ感情のメリットって、百害あって0・1利くらいしかないと、ぼくは思います。
そもそもすごい結果を残すとか、昨日より成長した自分にならなければいけない、みたいな目標って、誰しもに絶対に必要なものとは限らないとも思っています。求めて得られる保証はないわけですし。私は、ハイパーパフォーマンスまったく関係ない主義者です。オリンピック選手のように壮大な目標を立てることもありません。数年後こうなっていたいから、その目標から逆算して行動する、なんてこともやらない。ゆえに結果につながらなかったとしても、そのときやりきって没頭していられればそれでいいという大前提で生きています。だから、怒ったり悩んだりする必要がない。でも、結果を求めずに、やるべきことをやりきったときに、突然報われることが、かえってあったりもするのです。
……って、こんなことを推奨すると、偉い人からは怒られてしまいそうですが、自分の人生にとってそのネガティブ感情は本当に必要なのか、イライラが襲ってきたら一度考えてみてもいいかもしれません。
まとめ
・深刻さとはエンタメである
・悩むのは、自分の楽しみのため
・人が成長するのは、悩みによってではなく、決断と行動によって
・不機嫌は人を都合良く動かそうとしているから
どうでしょう、多少は悩むこと自体がバカバカしい気持ちになりましたか?
ここからは、実践編! そうは思っても、悩んでしまいそうになったときはどうすればいいのか。そもそも悩まないようにするためには具体的にどうすればいいか、を考えていきましょう。
もくじ
はじめに
メソッド1
「不安」の正体を明らかにしよう
-不安はどこからわいてくる?
-不安は社会の原動力
-不安の先には、死しかない
-コミュニケーションからの完全な断絶が、死
-「不安」はまったく役に立たないもの?
-不安への対症療法は、「これからどうするか」
-とりあえず、具体的にやってみる
-具体化って超大事
-「なんか大丈夫」感=セルフエスティーム
-考えるよりも、行動しよう
-人生で一番役に立たないプライドの話
-手っ取り早くセルフエスティームを上げるには
-COLUMN① パソコンは生産の道具、スマホは消費の道具
メソッド2
知らない人に話しかけてみよう
-「モテたい!」は、叶うのか?
-コミュ力は才能じゃない
-知らない人に話しかけるために必要な持ち物
-コミュニケーションとは、協力型のゲームだ
-聞いたらダメ、やったらアウトってなんだろう?
-人に好かれる方法はない
-彼氏・彼女がほしい! だったら知らない人に話しかけよう
-実践編① コミュニケーションに最も必要なのは「質問力」
-実践編② 質問はWhyよりも、Who・When・Where・What・Howが有効
-実践編③ 会話のきっかけ「木戸にたちかけし衣食住」
-実践編④ 会話を「えっ!」でトラップする
-実践編⑤ 間違った情報でもぶつけてOK
-実践編⑥ 自分の気持ちを表現する=説明力
-実践編⑦ あいさつをしよう、時間を守ろう
-実践編⑧ 大きな声が出せていれば、なんか大丈夫
-COLUMN② 「集中力」は「無視力」
メソッド3
“深刻ごっこ”禁止
-悩みは自分に何をもたらす?
-「みんな悩んで大きくなった」はウソ
-深刻さとはエンタメである
-決断だけが、人を成長させる
-承認を目的とすることはできない
-きみが不機嫌になるのはなぜ?
-実践編① バンザイして悩んでみよう
-実践編② 悩みから「暗くなる」をとっぱらってみる
-実践編③ 適度に“深刻ごっこ”を楽しむ
-実践編④ 悩むの禁止
-実践編⑤ やりきることを目的にする
-実践編⑥ 他人に期待しない
-実践編⑦ 愛嬌最強説
-COLUMN③ 引き出しを増やす方法
メソッド4
「面白そう!」さえあれば、人生は大丈夫
-「夢を持て」って言うけれど
-100個やって、どれか1個ハマればラッキー
-今しかできないことをやろう
-〇〇をやりたいのか、〇〇家になりたいのか
-楽しむってなんだろう?
-完全な自由はないけど、どの不自由にとらわれるかを選ぶ自由はある
-結論。不安を解消する方法=知らない人に話しかける
おわりに
というわけで、今日はここまで。明日もよろしくお願いします!