書籍「あなたの不安を解消する方法がここに書いてあります。」 #全文公開チャレンジ 第13回
こんばんは。ニッポン放送・アナウンサーの吉田尚記です。
#ふあかい 全文公開の第13回。本日は「メソッド2」のつづきからお送りいたします。
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メソッド2 知らない人に話しかけてみよう
聞いたらダメ、やったらアウトってなんだろう?
かつてのぼくがそうでしたが、コミュニケーションが苦手な人って、相手の地雷を踏まないよう、変に気を回してしまっていることが多くないでしょうか。「これは言っちゃいけないよね」「聞いたら失礼だよね」といちいちブレーキをかけて、無難な質問・返ししかできない。結果、相手との会話は盛り上がることなく、いまいちな空気になってしまう……。
そんな人間からすると衝撃的な出来事がありました。仕事で東京の下町に行ったときのこと。
毎週いろんな街に行って、そこがどんなところかレポートをするというシリーズ番組で、向かったのは墨田区の曳舟京島。サボテンを地面に植えたら高さが2メートルを越えるおばけサボテンができた……というネタを追ってきたものの、肝心のおばけサボテンが全然見つからない。あちこち探すうちに、いかにも下町という風情の商店街の飲み屋さんに行きつきました。
そこで平日の4時ごろから飲み始めているおじちゃんたちに、「すみません、こういうおばけサボテンを探してるんですが」って聞いたら、「それは、むこうの方じゃねえかなー。あ、15分ぐらいかかるから、そこに停めてある自転車にのってっていいよ」という軽い返事が返ってきたんです。
みなさん、店でたまたま会った得体の知れない初対面の相手に、「自転車のってっていいよ」って言えますか? 自転車どうなっちゃうかわからないですよね。
お借りした自転車で教えてもらった場所に向かって、無事おばけサボテンを発見。「ありました!」って、自転車を返しに行ったら、今度は「おお! よかったねえ!!」って店内で拍手喝采が起きる。なんというか、人の性質が違う。
さらに衝撃的だったのが、途中で立ち寄ったコンビニ。ドアをくぐったとたん、店員さんが「いらっしゃいませ、こんちはー。お兄ちゃん、今日何にする?」と声をかけてきたんです。コンビニで「お兄ちゃん、今日何にする?」って、言われたことある人、います? ぼくだってもちろんそんな経験ない。
その瞬間、「あ、ぼくらは聞いていいことを無意識のうちにすごく狭めてる」って思ったんです。
誰が決めたわけでもないのに、「この相手と関わっていいのはここまで」と勝手な線引きをしてしまっている。コンビニの店員さんが客に「お兄ちゃん、今日何にする?」って聞いたっていいんです。会話って、もっと自由で適当でもいいはずなんだと。下町って、何百年も人がひしめき合って暮らしてきたところですから、この下町流のコミュニケーションがどこまでも自由であるのには、理由があります。私は関東人だから外から見て思うことですが、大阪の人が「面白い」のは、都会である歴史が東京よりも長いからじゃないか、と思っています。
もうひとつ、これは聞いた話なんですが、アニメーション監督の宮崎駿さんのところに、「アニメの作り方を教えてください」と申し込んだ中学生がいたそうです。それを聞いたとき、ぼくは「いきなり〝世界の宮崎〟に聞くって!」って面食らってしまったんですが、宮崎さんは実際に中学生とお会いになって、丁寧にアニメの作り方を教えられたとか。
*3 宮崎駿|1941年生まれ。日本を代表するアニメーション監督。『未来少年コナン』(1978年)で監督デビュー。以降、『風の谷のナウシカ』(1984年)、『となりのトトロ』(1988年)など数々のヒット作を監督し、2001年に公開された『千と千尋の神隠し』で、アカデミー賞長編アニメ賞を受賞。
よくよく考えてみれば、アニメの作り方って、宮崎さんの一番の得意分野。それを聞かれたくないと思っているはずがないんですよね。大人だと「宮崎駿のインタビュー取ってきたぜ!」と社会的な意味、プライドのためにインタビューを申し込むこともあるのかもしれませんが、中学生が「アニメの作り方を教えて下さい」と聞くのは、純粋な好奇心だ、と宮崎さんは判断したんでしょう。
ぼくたちは何か気になったことがあっても、相手に遠慮して「これは聞いちゃいけない」と思い込んでしまいます。でも、自分自身に置きかえてみてほしいんですが、実は「聞かれたくない」と思っていることって、圧倒的に少なくないですか? 聞かれても絶対に話さないぞ、と決めていることなんて、そんなにないですよね。
人間はおしなべて自分の話を聞いてもらいたいと思っている生き物です。と、思っていたら、そんな研究結果がハーバード大学社会的認知・情動神経科学研究所から発表されていました。
って、そんなすごい研究所に発表してもらわなくても、めちゃくちゃ当たり前のことなんですけど。
ハーヴァード大学社会的認知・情動神経科学研究所(Harvard University Social Cognitive and Affective Neuroscience Lab)の科学者たちはこのことを研究し、人は自分自身について語るときには、生理学的に快感を得られることを発見した。その理由は、その行為が脳の快楽や満足に関係する脳の神経領域を活性化させるからだ。しかもこれは、話しているのを聞く相手がいなくても機能するメカニズムなのだ。
「なぜわたしたちは自分のことを話すのが好きなのか?:研究結果」(WIRED NEWS(ITALIA)2013年8月23日公開)より
https://wired.jp/2013/08/23/talk-about-myself/
誰かに興味を持って聞いてもらえたら、それだけですごくうれしい。それが自分の得意分野のことだったら、なおさらです。そんな気持ち、あなたの中にもないでしょうか? ちなみにぼくは、いまこの本を読んでもらってるだけですごくうれしいです!
もちろん、時間的制約やその他の理由で、実際に聞いても反応してもらえないことはあります。宮崎監督にアニメの作り方を教えてもらえた中学生は、運がよかっただけかもしれない。ただ、間違いなく、知らない人に話しかけた。
それは「やってはいけないこと」ではないんです。トライしてみる価値はある。
しかも14歳ぐらいという年齢って、絶対的に大人から無碍にされない年齢です。これはもう保証します。
14歳はチートチャンス。だからどんどん話しかけていきましょう。
もくじ
はじめに
メソッド1
「不安」の正体を明らかにしよう
-不安はどこからわいてくる?
-不安は社会の原動力
-不安の先には、死しかない
-コミュニケーションからの完全な断絶が、死
-「不安」はまったく役に立たないもの?
-不安への対症療法は、「これからどうするか」
-とりあえず、具体的にやってみる
-具体化って超大事
-「なんか大丈夫」感=セルフエスティーム
-考えるよりも、行動しよう
-人生で一番役に立たないプライドの話
-手っ取り早くセルフエスティームを上げるには
-COLUMN① パソコンは生産の道具、スマホは消費の道具
メソッド2
知らない人に話しかけてみよう
-「モテたい!」は、叶うのか?
-コミュ力は才能じゃない
-知らない人に話しかけるために必要な持ち物
-コミュニケーションとは、協力型のゲームだ
-聞いたらダメ、やったらアウトってなんだろう?
-人に好かれる方法はない
-彼氏・彼女がほしい! だったら知らない人に話しかけよう
-実践編① コミュニケーションに最も必要なのは「質問力」
-実践編② 質問はWhyよりも、Who・When・Where・What・Howが有効
-実践編③ 会話のきっかけ「木戸にたちかけし衣食住」
-実践編④ 会話を「えっ!」でトラップする
-実践編⑤ 間違った情報でもぶつけてOK
-実践編⑥ 自分の気持ちを表現する=説明力
-実践編⑦ あいさつをしよう、時間を守ろう
-実践編⑧ 大きな声が出せていれば、なんか大丈夫
-COLUMN② 「集中力」は「無視力」
メソッド3
“深刻ごっこ”禁止
-悩みは自分に何をもたらす?
-「みんな悩んで大きくなった」はウソ
-深刻さとはエンタメである
-決断だけが、人を成長させる
-承認を目的とすることはできない
-きみが不機嫌になるのはなぜ?
-実践編① バンザイして悩んでみよう
-実践編② 悩みから「暗くなる」をとっぱらってみる
-実践編③ 適度に“深刻ごっこ”を楽しむ
-実践編④ 悩むの禁止
-実践編⑤ やりきることを目的にする
-実践編⑥ 他人に期待しない
-実践編⑦ 愛嬌最強説
-COLUMN③ 引き出しを増やす方法
メソッド4
「面白そう!」さえあれば、人生は大丈夫
-「夢を持て」って言うけれど
-100個やって、どれか1個ハマればラッキー
-今しかできないことをやろう
-〇〇をやりたいのか、〇〇家になりたいのか
-楽しむってなんだろう?
-完全な自由はないけど、どの不自由にとらわれるかを選ぶ自由はある
-結論。不安を解消する方法=知らない人に話しかける
おわりに
というわけで、今日はここまで。つづきは、また明日!
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