書籍「あなたの不安を解消する方法がここに書いてあります。」 #全文公開チャレンジ 第4回
こんばんは。ニッポン放送・アナウンサーの吉田尚記です。
#ふあかい 全文公開の第4回は「メソッド1」のつづきからお届けします。
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メソッド1 「不安」の正体を明らかにしよう
「不安」はまったく役に立たないもの?
一方で、不安な気持ちは害悪なだけか、というと、そうでもなかったりするようです。予防医学の研究者・石川善樹さんとの共著『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』(KADOKAWA)で、石川さんは「人は恐怖を感じると目先のリスクを過大評価しめちゃくちゃ厳密に考え始める」というお話をされていました。
*5 石川善樹|医学博士。予防医学のほか、行動科学、計算創造学などを専門に研究を行う。吉田とは2017年に『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』を共著で上梓(じょうし)。
不安だからこそ人間はあれこれ考えるし、不安だからこそ慎重に行動する。そういうときって、気づき力がすごく高いんですって。クリエイティブなことを考えるときには、ポジティブな思考が向いていて、厳密に何かを考えるには、ネガティブな思考が向いているのだそうです。そして、研究者にとっては、その両方が必要。研究者=冷静なイメージですが、実際はテンションが高かったり低かったり、ふり幅が大きい方がいろんな角度から対象を見られる。だから、石川さんはその両方にスイッチできるように訓練されたりもしているとか。研究者ならではの視点ですよね。
でも、ぼくは石川さんとは人生観が少し違っていて、実績とかはどうでもいい。ぼくのテーマは「一生、最後まで楽しかった人の勝ち」。
だから、やっぱり言い切っちゃいたいんですが、「不安なままなのは、もったいない」。
だからといって今感じている不安を、「不安なんて感じるな!」というのは暴論ですよね。ぼくが一番嫌いな精神論。今この本を読んでくださっている人が何かを不安に感じていることは紛れもない事実です。
ここは命令形じゃなく、実行できる対症療法を具体的にお伝えします。
不安への対症療法は、「これからどうするか」
不安な気持ちがわいてきたら、最初に何を思いますか?
冒頭で紹介した、「友人に陰キャとからかわれているかもしれない不安」問題で考えてみたいと思います。もし自分がこの問題に直面したとしたら。
「陰キャとからかってくるアイツが本当にウザい」
「しょうがないじゃん、人と話すのが怖いんだから」
まずは、相手を非難したり、自分を悲観したりする気持ちがわいてきてしまいがちではないでしょうか。
でもこのふたつって、いくら掘り下げてみても、ぶっちゃけ無意味。結局、何の問題解決にもなりません。
ここで、ちょっとぼくの好きなアドラー心理学の話をさせてください。
アドラー心理学とは、20世紀前半に活躍した心理学者アルフレッド・アドラーが創始した心理学の一派です。2013年に発売された『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健著/ダイヤモンド社)も、アドラー心理学について紹介された本でした。大ベストセラーとなった同書は、もしかしたら手にとったことがあるという人もいるかもしれませんね。
*6 アルフレッド・アドラー|1870年オーストリア生まれ。1937年没。ジークムント・フロイト、カール・グスタフ・ユングと並び、現代の心理学の礎(いしずえ)を築いた精神科医。「アドラー心理学」と呼ばれる個人心理学を創始した。
アドラー心理学の最大の特徴は、人間が抱える悩みは、すべてが対人関係に終始しているとしたこと。さらに因果論を否定し、過去でも未来でもなく、イマ・ココからどう生きるかがすべてとするなど、他の心理学とは一線を画す考え方を提示しています。
*7 因果論|ふたつの出来事を、一方を原因、一方を結果として結び付ける考え方。心理学では主に、現在の苦しみの原因を過去の出来事(いわゆるトラウマ)に求めようとする方法論。
「はじめに」でもお伝えした通り、ぼくはこのアドラー心理学に大きな影響を受けています。最初の出会いは、18歳のときに読んだ『アドラー心理学 トーキングセミナー─性格はいつでも変えられる』(野田俊作著/星雲社)。この本にものすごい衝撃を受けてしまいました。あまりにも入り過ぎて、今では自分のこの考え方がアドラーに影響されたものなのか、自分発なのか、その境界があいまいになってしまっている部分すらあるくらい。
アドラー心理学について、この本ではこの後も何度も触れさせていただきますが、ここではそのひとつ、グループセラピーでの試みを紹介したいと思います。
あるグループ内で何かトラブルが起こったとしましょう。その関係者たちは、自分たちがどんな目にあったか、誰が悪いかを口々に言い合っています。場は険悪な雰囲気です。トラブルが起きたとき、人間の話すことはすべて「悪いあの人」「かわいそうな私」「これからどうするか」に分類できます。何もしないと、「悪いあの人」「かわいそうな私」という発言が、9割を占めてしまうそうです。そういう言い合い、よくありますよね。
今度はその当事者たちを集めて、輪になって座ってもらい、一人ひとりに三角柱を渡します。
3つの側面にはそれぞれ「悪いあの人」「かわいそうな私」「これからどうするか」と発言のテーマが書かれています。
司会者は、集まった人々に、「発言する際は、その3つの側面のいずれかをみんなに見せ、自分が今からどの趣旨で話すかを明示するように」と指示します。するとどうなるでしょうか……。
直前まであれほど被害を訴え、誰かを悪しざまにののしっていた人たちが、いざ三角柱を渡されてみたら、発言する際に示すのはみんな一様に「これからどうするか」。それ以降、全員から建設的な意見しか出なかった、のだそうです。
もう、この実験大好き! とってもエレガントで、でもちょっとだけ意地悪で最高!
状況を客観的に見ると、この3つのテーマの中で建設的なのは「これからどうするか」しかないとわかる。「悪いあの人」「かわいそうな私」についてしゃべったところで、何も解決しないってことを、みんな頭では理解できているんですよね。
でも、思考を野放しにしていると、口から自然に出てくるのは、自分がいかにかわいそうか、悪いのは誰かということばかりになってしまいます。
普段、悪口を言っている人というのは、いかに思考放棄してしまっているのかがよくわかるエピソードではないでしょうか。
この例を、今回の問題にも当てはめてみたいと思います。
「友だちから、陰キャとからかわれていないか不安」。
感情はいったん置いておくとして、ここで選ぶべきテーマはどれか。もうわかると思います。
「悪いあの人」の悪口を言っても、「かわいそうな私」を悲観しても、事態はまったく変わりません。建設的なのは、「これからどうするか」だけ。
これからどうするか。それこそが、わいてきた不安に立ち向かうための対症療法です。
もくじ
はじめに
メソッド1
「不安」の正体を明らかにしよう
-不安はどこからわいてくる?
-不安は社会の原動力
-不安の先には、死しかない
-コミュニケーションからの完全な断絶が、死
-「不安」はまったく役に立たないもの?
-不安への対症療法は、「これからどうするか」
-とりあえず、具体的にやってみる
-具体化って超大事
-「なんか大丈夫」感=セルフエスティーム
-考えるよりも、行動しよう
-人生で一番役に立たないプライドの話
-手っ取り早くセルフエスティームを上げるには
-COLUMN① パソコンは生産の道具、スマホは消費の道具
メソッド2
知らない人に話しかけてみよう
-「モテたい!」は、叶うのか?
-コミュ力は才能じゃない
-知らない人に話しかけるために必要な持ち物
-コミュニケーションとは、協力型のゲームだ
-聞いたらダメ、やったらアウトってなんだろう?
-人に好かれる方法はない
-彼氏・彼女がほしい! だったら知らない人に話しかけよう
-実践編① コミュニケーションに最も必要なのは「質問力」
-実践編② 質問はWhyよりも、Who・When・Where・What・Howが有効
-実践編③ 会話のきっかけ「木戸にたちかけし衣食住」
-実践編④ 会話を「えっ!」でトラップする
-実践編⑤ 間違った情報でもぶつけてOK
-実践編⑥ 自分の気持ちを表現する=説明力
-実践編⑦ あいさつをしよう、時間を守ろう
-実践編⑧ 大きな声が出せていれば、なんか大丈夫
-COLUMN② 「集中力」は「無視力」
メソッド3
“深刻ごっこ”禁止
-悩みは自分に何をもたらす?
-「みんな悩んで大きくなった」はウソ
-深刻さとはエンタメである
-決断だけが、人を成長させる
-承認を目的とすることはできない
-きみが不機嫌になるのはなぜ?
-実践編① バンザイして悩んでみよう
-実践編② 悩みから「暗くなる」をとっぱらってみる
-実践編③ 適度に“深刻ごっこ”を楽しむ
-実践編④ 悩むの禁止
-実践編⑤ やりきることを目的にする
-実践編⑥ 他人に期待しない
-実践編⑦ 愛嬌最強説
-COLUMN③ 引き出しを増やす方法
メソッド4
「面白そう!」さえあれば、人生は大丈夫
-「夢を持て」って言うけれど
-100個やって、どれか1個ハマればラッキー
-今しかできないことをやろう
-〇〇をやりたいのか、〇〇家になりたいのか
-楽しむってなんだろう?
-完全な自由はないけど、どの不自由にとらわれるかを選ぶ自由はある
-結論。不安を解消する方法=知らない人に話しかける
おわりに
というわけで、今日はここまで。続きはまた明日!