【ぬいぐるみの恩返し】12「二人きりのお散歩」
次の週末、佳乃さんはぼくをトートバッグに入れて散歩に連れて行ってくれた。佳乃さんは散歩をしながら、ぼくの写真を撮る。赤い花、ピンクの花、オレンジ色の花、いろいろな花と一緒に写真を撮ってくれた。ぼくもぱん田みたいに花の名前が分かればいいのにな。
佳乃さんは写真を撮る時以外にも、時々ぼくをバッグから出して、外の様子を見せてくれた。この間とは違う道だと思うけど、住宅街の道端や公園に植物がたくさんある。青空が広がっていて、鳥の声も聞こえて気持ちがいい。周りにこんなすてきなものがたくさんあるのに、家に閉じこもっているなんてもったいない。ぬいぐるみもどんどん外に出るべきだ。
佳乃さんと二人で出かけるのは本当に楽しかった。家に帰ると、佳乃さんはぼくの写真をSNSに載せた。ぱん田はいつものように佳乃さんとパソコンの画面を見ている。ぱん田が写真を見ながら、ぼくが見た花の名前を教えてくれた。
「この花はカンナって言うんだよ。このカンナはとってもきれいだね。これはハイビスカス。ハイビスカスにはいろんな種類があるんだよ。それから・・・」
すると、それを聞いていたガーにこんなことを言われた。
「おまえ、新入りのくせに佳乃と二人で出かけるなんて、生意気だ。」
ガーの一言で、せっかくの幸せな気分が台無しになった。
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