【ぬいぐるみの恩返し】13「ここはどこ?」
その翌日、佳乃さんはまたぼくだけをトートバッグに入れて出かけた。今度はお散歩ではなかった。
ぼくたちは車に乗って、何か大きな建物に来た。ぼくはバッグから取り出されて写真を何枚か撮られた。ここは外国みたいだ。でも、飛行機には乗っていないし、そんなに遠くへ来たわけじゃないから、マレーシアのはずなんだけど・・・。しばらくしてまたバックから取り出されて、写真を撮られた。今度はスケートリンクが見えた。ここはいったいどこなんだろう。
佳乃さんは家に帰ると、ぼくの写真をSNSに載せた。パソコンの画面を見ていたぱん田が言った。
「プトラ、ピラミッドに行ったんだね。プトラの行ったところはピラミッドっていう名前のショッピングモールだよ。」
「そうなんだ。なんだかとっても面白いところだったよ。ぱん田も行ったことある?」
ぼくたちが話していると、ガーが言った。
「新入りのくせに、佳乃と二人で出かけるなんて生意気だ。」
まただ。そんなことを言われても、ぼくにはどうしようもない。せっかく佳乃さんと二人で楽しくお出かけしても、帰ってくるとガーに嫌味を言われて、悲しくなった。それに、早くこの家に来た方が偉いというわけでもないはずだ。
前の家にはほかのぬいぐるみがいなかったから、ぬいぐるみ関係に悩むことはなかった。ほかのぬいぐるみがいれば、さぞ楽しいだろうと思っていた。
ぼくとガーは一緒に住んでいるといっても、持ち主が同じというだけのことだ。ぼくたちがお互いを選んだわけではない。気の合わないぬいぐるみがいるのはしょうがないのだろう。
ガーさえいなければこの家は最高なのに、と思ってしまう。
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