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『ペースメーカって何ですか?』(ペースメーカを知るために)
私は今までペースメーカ(pacemaker)とは縁のないところで生きてきました。家族にも親戚にも友人にも同僚にも、周囲にはペースメーカを付けている人はいません。
そんな私が、急にペースメーカの植え込み手術を受けることになり、
「ペースメーカって何?」「植え込むってどういうこと?」
わからないことだらけで、不安がいっぱい。
そんな気持ちで手術前に書いたnoteは↓こちらです。
自分自身がペースメーカの理解を深めるため、そしてペースメーカを知らない人に知ってもらうため、冊子『ペースメーカって何ですか?』(日本メドトロニック発行)から引用してお伝えします。
以下、『ペースメーカって何ですか?』より引用
■心臓のこと、ペースメーカのこと 〜知っているから安心できる〜
希望ある明日への第一歩です。
そのためにまず知っておきたい心臓の病気、ペースメーカの構造や種類のこと。
疑問があれば、医師に問いかけてみてください。
医師とのコミュニケーションが、次の一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。
1-1 心臓の働きと心電図
心臓は全身に血液を送り出すポンプです。休むことなく、1日に約10万回に収縮と拡張という拍動を繰り返しています。心臓はこぶしほどの大きさで、心筋(しんきん)と呼ばれる特殊な筋肉でできています。心臓の中は4つの部屋に分かれており、上側のふたつをそれぞれ左心房、右心房と呼び、下側のふたつを左心室、右心室と呼びます。この4つの部屋がリズミカルに拍動を繰り返すことで、心臓は効率的に血液を送り出すことができます。
心房と心室がリズミカルに収縮するために、心臓は特別な情報伝達回路をもっています。拍動と呼ばれる心臓の動きは、心臓内で作られる電気刺激と密接な関係があります。洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる場所で1分間に70回前後の電気刺激が作り出されます。電気刺激は、まず心房を通ることで心房の筋肉を収縮させ、さらに房室結節と呼ばれる心臓中心部を通って心室に伝えられ、心室の筋肉を刺激します。心臓内の電気を伝達する回路は刺激伝導系と呼ばれ、心臓を規則正しいリズムで拍動させるための重要な働きをしています。
このような心臓内の電気の流れを検出し、それを図にしたものが心電図です。心臓が病気になったときは、心電図にも正常とは異なる変化が現れます。医師はその心電図の変化を読み取ることにより、心臓の病気を診断することができるのです。
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1-2 心臓の病気
心臓の病気にはさまざまなものがあります。
心筋梗塞や拡張型心筋症のように、心臓の筋肉がダメージを受けて収縮できなくなってしまう病気、心臓に血液を送るルートである冠動脈が狭くなることにより起こる狭心症、心臓の弁が故障してしまう心臓弁膜症、心臓のリズムが不規則になる不整脈などがあります。
さらに、この不整脈にも種類があり、ひとくちに心臓病と言ってもさまざまな病気があるのです。そして、それぞれの病気に対して、異なった治療法がとられています。
1-3 ペースメーカが必要な心臓病
簡単にいうと、心臓のリズムが遅くなってしまう病気にペースメーカが必要になります。症状は一時的に意識を失うものから、生活に支障をきたすほどのひどいめまい、からだの力が抜けたようになり疲れやすくなる、などが一般的なものとして挙げられます。
専門的な病名では、房室ブロックや洞不全症候群といわれる病気に、ペースメーカ治療が行われています。
これらの病気は心筋梗塞や心筋炎などの別の心臓病により、引き起こされる場合もありますが、多くは単独で発症し、心筋や弁には異常がないにもかかわらず心臓の拍動のリズムだけがきわめてゆっくりしている、という症状で現れます。
・房室ブロック
心臓には、収縮を命令する司令センターで「洞結節」と呼ばれる特殊な細胞の集まりと、「刺激伝導系」と呼ばれる洞結節からの命令を伝える電話線のような役割を担う部分があります。
洞結節で出された指令は心房に送られ、少し遅れて寝室に伝わることで筋肉が電気的に興奮し、心臓に機械的収縮を起こします。この繰り返しにより心臓は規則正しくリズムを刻み、血液を全身に送り出しています。
房室ブロックという病気は指令センターからの命令を伝える電話線が切れてしまっている状態であり、心室が心房とは関係なく独自にゆっくりしたリズムで収縮します。このような状態では、脳や全身に必要な血液が十分に行きわたらなくなり、意識を失う、または生命に関わるような状態となる場合もあります。
・洞不全症候群
洞不全症候群は、心臓のリズムの司令センターである洞結節の故障によって起こります。洞結節が1分間に30回しか収縮の命令が出せなくなったり、突然数秒間まったく司令が出せなくなったり、心房細動という非常に速いリズムが起った直後に洞結節の指令がなかなか出ず、5秒も6秒も沈黙するものがあったりします。このような状態になると心室も収縮せず、血液が送り出せなくなり、そのため意識がもうろうとしたり、一時的に意識を失うといったことが起こります。
このような房室ブロックや洞不全症候群には、ペースメーカの植込み手術が有効な治療手段となります。また、慢性の心房細動により心室の脈が遅いという症状がある場合も、ペースメーカの植込みが治療手段となります。
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1-4 ペースメーカとは
心臓は、心臓内で作られる生理的電気が心筋を刺激して拍動します。その心臓の整体機能を利用して発明されたのがペースメーカです。ペースメーカは心臓を24時間監視しながら、必要に応じて人工的に電気を発し、心臓の働きをサポートするものです。
現在では一般的な不整脈治療として確立しています。
最近では患者さんの体動、呼吸数、心電図上の変化などの指標をとらえて、より正常に近い心臓のリズムをつくり出すペースメーカが開発されています。重さも20g程度と軽量で、長寿命のものも登場しています。
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1-5 ペースメーカの構造と働き
ペースメーカ本体の内部には、電池と信号を発生する電気回路とマイクロコンピュータが組み込まれています。表面は頑丈なチタンという金属ケースで覆われ、内部が密閉された構造になっています。ペースメーカは心臓へ電気刺激を伝えるための細長い電極(リード)っとセットで構成されています。
リードの先端は、24時間心臓の活動を観察し、その状態をペースメーカ本体に即時に伝えるという重要な役割を持ちます。心臓の活動の変化を素早く察知して、心臓が本来の機能を十分果たせるようにサポートします。
また、ペースメーカ本体に組み込まれたコンピュータは、治療記録を保存します。担当医師は体外から治療記録を読み取り、適切な治療が行われているかを確認します。患者さんの容態や心臓の状態、また症状の変化に対応できるように体外からペースメーカ本体の設定を変更することができます。
■入院のこと、手術のこと 〜知っているから準備ができる〜
身体のことだけを考えてください。経済的な不安をサポートする医療保険制度。家族の負担をサポートする看護師。手術に専念できる環境が整っています。
これからの人生を共にするペースメーカを、より多くの人に受け入れてほしいからです。
2-1 入院前に準備しなければならないことはありますか?
病院から準備するようにいわれる入院用品以外に、 事前に用意するものは特にありません。
2-2 ペースメーカの植込み方法
ここでは最も一般的な植込み方法をご紹介します。
まず、ペースメーカの植込みは局所麻酔下で行われます。全身麻酔ではないため手術中も意識ははっきりしています。麻酔が十分に効いてから、鎖骨の下の皮膚を鎖骨と平行に数cm切開し、皮下にペースメーカが入る小さなポケットをつくります。次に、鎖骨の下を走る太い静脈にリードを通して、心臓の中の適切な位置まで挿入します。続いて、リードの位置が適切であるか測定器械を使って調べます。この時、患者さんに深呼吸や咳払いをしていただき、リードと心臓の接触具合がよいかどうかも調べます。よい状態であれば、リードが動かないようにしっかりとめます。リードはペースメーカの種類により、2本使用する場合と1本だけ使用する場合があります。最後にリードをペースメーカ本体につなぎ、本体を皮下のポケットにしまい、切開した部分を縫合して手術は終わりです。
2-3 手術時間
植込み方法や患者さんによって異なりますが、手術はおよそ1〜2時間で完了します。手術自体は全身麻酔で行われる開腹術や開胸術のように大がかりではないため、内科系の医師も行っています。
ただし、子供の場合は大人と違い、開胸術にて心臓の外側にリードを取り付け、腹部左側の肋骨下あたりにペースメーカを植込むケースが多くなります。この方法は、リードがはずれる心配が少なく、運動量の激しい子供には適した方法といえます。なお、腹部にペースメーカを植込む場合は、全身麻酔下での手術が必要となります。大きなペースメーカの植込みが難しい乳幼児には、ペースメーカの種類を変えたりすることで対応します。また、からだの成長が止まる17〜18歳くらいになれば、大人と同じ鎖骨の下に植込み位置を移すこともできます。
2-4 術後から退院まで
多くの場合、抜糸までが入院期間となり、抜糸する時期は手術から1週間〜10日前後です。
医療機関にもよりますが、ペースメーカを植え込んだ後は手術の傷の回復と経過観察のために、植え込んだ側の上肢を固定し、心電図モニターしながら数日間ベッドで安静にしていただく場合もあります。また、リードが心臓内に固定されるまでには植込み後1〜2ヶ月かかります。リードの先端が心臓の組織から抜けたりずれたりするのは、1〜2ヶ月未満の間に起こりやすいため注意が必要です。
そのため、退院後はほぼ普通の生活が可能ですが、植込み後1〜2ヶ月は植え込んだ側の腕を大きく動かしたり、重い荷物を持ったり、背伸びなどの動きは控えてください。
抜糸後も切開部を引っかくことで傷口が開いてしまい、感染症を起こす危険性があるため注意が必要です。退院後、切開部に痛みや熱を感じた場合は、感染症や血行障害の可能性があるため、担当医師にご相談ください。
2-5 合併症について
ペースメーカの植込み手術では皮膚切開を行います。そのため、他の手術と同様に手術に伴う合併症の可能性が存在します。ここでは、ペースメーカの代表的な合併症をご紹介します。
⚫︎創部出血 手術により生じた傷口から出血することを示します
⚫︎皮下血腫 皮下組織への出血が溜まって凝固し、血の塊を形成する状態を示します
⚫︎創部感染 植込み部位に細菌感染を起こすもので、高齢の方や糖尿病を患われている方に多い傾向があります。発生頻度は1%以下と言われています
⚫︎気胸 肺が虚脱する病態であり、鎖骨下静脈穿刺の際に肺を刺してしまうことが原因で起こります
⚫︎血栓症 血液の中に塊ができ、それが血管に詰まってしまう状態を示します
⚫︎心臓穿孔 リードの挿入時や植込み後慢性期にリード先端部が心臓の壁を突き抜けてしまい心臓外部に大量の出血を起こしてショック状態に陥る危険性を持つものですが、発生率は0.1%ときわめて低いとされています
2-6 費用はどのくらいかかりますか?健康保険は使えますか?
ペースメーカには、植込み手術や入院などの諸経費がかかります。
ただし、高額療養費制度等の医療費が高額な場合に上限を超えた金額を支給する制度を利用すれば、自己負担額が年齢と所得に応じて定められた上限額を超える部分は給付金として支給されるため、実際の自己負担額を抑えることもできます。詳細は加入されている保険組合などにお問い合わせください。また、個人が加入されている民間保険のプランによっては給付の対象になることもありますので、加入されている保険会社などにお問い合わせください。
2-7 入院中の付き添いは必要ですか?
入院する病院によって異なりますが、ペースメーカの植込みを行う多くの施設は、看護師の人員が十分に配置されている厚生労働省の「基準看護」という区分の病院であることが多いため、原則的に付き添いは不要です。
ただし、手術の当日は患者さんを精神的に励ます意味で、ご家族の方などが来院された方がよいこともありますので、入院された施設の担当医師や看護師におたずねください。
2-8 入院中はどんなことに気を付ければいいですか?
お風呂は抜糸まで我慢してください。バランスを考えた病院の食事をしっかりとり、規則正しい入院生活を送ってください。その他については手術を受けた医療機関の入院規則を守ること以外に、とくに注意すべきことはありません。
退院後は植込み前とほぼ同じ生活ができます。
■退院後の日常生活のこと 〜知っているから毎日が楽しい〜
その笑顔を絶やさないでください。
電気製品の取り扱い、職場の設備環境、医療機関における特定の検査や治療、ペースメーカ本体を圧迫する運動。
ずっと安心して暮らすために、心に留めておいてほしいことがあります。
3-1 退院後の生活
退院後は病気になる以前の生活とほぼ同じ生活を送ることが可能です。
しかし、ペースメーカが体内にあることで少しだけ制限があります。ペースメーカは、超小型の精巧なコンピュータのようなものですので、外部からの電気や磁力に影響を受けることがあります。普通の家庭用電気製品はおおむね問題ありませんが、電気製品の一部、職場の設備環境、また医療施設における特定の検査・治療などで注意が必要なものや避けてほしい機器や道具がいくつかあります。※別ページの表を参照
もしこれらの機器の影響により、ペースメーカの作動に異常を感じた場合は、直ちにその場から離れるか、使用中の機器の電源を切ってください。通常、ペースメーカの作動はもとに戻ります。また、外部からの電気や磁力によってペースメーカが破壊されたり、設定が変更されることはほとんどありません。ご心配な方は担当医にご相談ください。
3-2 定期検診
ペースメーカは信頼性の高い機器です。したがって、病院での定期検診は機器そのものの調子を点検するというより、作動状況や電池の消耗具合、リードの抵抗値などをプログラマという装置を使って調べ、患者さんの健康管理をしっかり行います。この操作は身体の外側から電波を使用して行われるため、痛みなどはほとんどありません。症状により異なりますが、3〜6ヶ月に1回は、ペースメーカの定期検診を受けることが必要ですから、それ以上の長い旅行や、引越しをする際には行き先の医療機関できちんと受診できるように紹介状をもらうようにしてください。
まれに薬の副作用と同様、ペースメーカによる合併症が発生する場合もあります。担当医師の指示に従い、定期検診は必ず受けましょう。また、息が苦しい、胸が痛い、めまいがする、手足のむくみがある、しゃっくりが止まらない、熱が出る、手術した箇所に腫れを感じるなどの異常を感じた場合は、直ちに担当医師に連絡してください。
3-3 いつも心がけておくことは?
毎日安静時(特に朝起きたとき)に脈を取り、記録することを習慣づけるとよいでしょう。
また、担当医師の指示通りに定期検査を受け、ペースメーカの作動状況やペースメーカと心臓との関係を確認しておく必要があります。食べ物やお酒も適量の範囲内であれば、これといった規制はありません。ただし、大きな電気や磁力が発生する機器は避けなければなりません。また、画像診断用医療機器による検査についても注意が必要です。※これらの点については別ページの注意事項を参照
ペースメーカは少ない脈を補う機器です。ご自身の脈により動作が変化したり、状況に合わせて脈の数を調整したりする機能を持つペースメーカもありますので、ペースメーカがつねに一定のリズムを刻むとは限りません。毎日安静時の脈をはかる場合の指標については、担当医師にお問い合わせください。
3-4 退院後に生じる可能性のある合併症
❶ペースメーカ本体、電極リードの感染
まれにペースメーカ本体や電極リードの感染を生じることがあります。抗生物質を使って良くなることもありますが、感染した本体やリードを取り除かなくてはいけなくなることもあります。
❷リード移動、断線
長い経過の間にはリードの先端が移動してしまったり、断線を起こすことがあります。定期検診では、心電図や胸部のレントゲン写真による検査や、専用の機械を使ってリードに移動がないか確認します。小さな移動や断線の場合には、本体の設定を変更することで対処できることもありますが、これにより電池が早期に消耗したり適切な通電(治療)ができなくなるような時には、新たにリードを入れなくてはいけません。
3-5 家庭での電気製品の使用
電気製品を使う場合、直接身体に電気を通すもの、外へ強い電磁波を出すものの使用を避けてください。たとえば、使用中の電磁調理器に近寄ること、電極を貼るタイプの治療器などを使うことには注意が必要です。電気毛布は普通に使っている限り影響を与えないと思われますが、長時間使用するものですから、できれば事前にふとんを温めておき、眠るときはコンセントを抜く方がよいでしょう。
また、ペースメーカは磁力に影響を受けます。植込み部に磁力などを近づけないようにしてください。肩こり用の磁石入絆創膏などは使用して構いませんが、ペースメーカのすぐそばに貼るのは避けてください。
携帯電話を使用される場合は、巻末の「使用上の注意事項」をご覧ください。その他に心配な電気製品の使用については、担当医師にご相談ください。
《家庭や職場での注意》
下の表は注意の度合いを色で区別しています。ここに記載の電気機器は故障していないこと、適切にアースが取りつけられていること、器具の取り扱い注意事項を守っていることが前提となります。さらにこの表の内容は当社の製品を対象とした一般的な事項であり、他社製品で同一の影響や結果を保証するものではありません。詳細は巻末の「使用上の注意事項」をご覧ください。
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3-6 運動してもいいですか?
植込み後1〜3ヶ月経過すれば、散歩や軽いジョギング、ゲートボールやプールの中を歩くなどの運動はもちろん、日常的な運動に制限はありません。
ただし、ペースメーカ本体を圧迫したり、リードに思わぬ力がかかったりする姿勢や運動には注意が必要です。たとえば、激しく体がぶつかる運動(柔道などの格闘技、ラグビーなどの団体競技)や、ペースメーカの植込み部位に近い腕の筋肉を続けて動かす運動(腕立て伏せ、鉄棒へのぶら下がりなど)も避けてください。
腹部にペースメーカを植込んだ場合には、腹部をこすったり圧迫したりするような運動は控えた方がよいでしょう。担当医師とご相談の上、ペースメーカ植込み後も色々なスポーツを楽しんでください。
3-7 お風呂やサウナに入ってもいいですか?
お風呂やサウナもペースメーカには影響はありません。ただし、電気風呂(銭湯などにある湯に低周波電流が流れている風呂)はペースメーカに影響を与えます。
一般的に熱いお風呂や長湯は脈拍を上げ、心臓に負担をかけるといわれています。入浴時間は10〜20分程度にしましょう。また、サウナ風呂も同様の理由であまり長く入らない方が心臓のためにもよいでしょう。
3-8 乗り物の影響はありますか?
自動車やバイクのエンジンは、セルモータを回すときに大きな電流が流れ、ペースメーカに影響をおよぼす場合があります。したがって、エンジンがかかっている自動車のボンネットを開けて内部をのぞき込むような動作は避けてください。
自動車の運転は可能ですが、急ブレーキをかけた場合にシートベルトがペースメーカに強い衝撃を与えるおそれがあります。あらかじめ植込み部付近にはクッションをあてるなどして、強い圧迫を防ぐようにしておくとよいでしょう。
3-9 旅行に行ってもいいですか?
ペースメーカを植え込まれていても、旅行をすることに問題はありません。ただし、航空機へ搭乗する際の金属探知機にペースメーカが反応したり、影響を受けたりする場合があります。空港の係官にペースメーカ手帳を提示した方がよいでしょう。海外の空港でも有効です。
ペースメーカ手帳は、つねに携帯しておくことをすすめします。たとえば、救急車でかかりつけではない病院に運ばれるというような、何か突発的なことがあったときにも役立ちます。
ペースメーカによっては、夜間特別に脈を遅くするようにプログラムしてある場合もありますので、時差があるところに行く場合は、旅行前に一度担当医師にご相談いただいたほうがよいでしょう。
3-10 機器の寿命は何年くらいですか?
電池の寿命は、病気の状態やペースメーカの種類などにより異なりますので、担当医師にお問い合わせください。ペースメーカは、病院で電池の残存量を調べることができるようになっています。その意味からも定期検診を欠かさないことが大切です。
また、リードの寿命は、植え込まれた状態や生体内での条件によってかなり違ってきます。1本のリードで一生過ごせる場合から、数年で新しいリードに交換しなければならない場合まで差が出ることもあります。リードも電池同様に、突然使用できなくなることはあまりありませんが、定期検診を受け、リードの状態もつねに確かめておくことが大切です。
3-11 ペースメーカ本体の交換
ペースメーカは内蔵されている電池で作動しています。したがって、ペースメーカ本体の交換時期は、電池の消耗(ペースメーカがどのくらい電流を消費したか)の程度によって異なります。定期検診の際に担当医師が交換の時期を判断します。
電池が消耗した場合、ペースメーカの交換が必要になります。一般に「電池交換」と呼ばれることもありますが、ペースメーカの電池は頑丈なチタンケースに回路と共に密閉状態で組み込まれているため、実際には電池のみの交換はできません。したがって、ペースメーカ本体ごと交換することになります。この時、リードの交換が必要な場合や、新たにリードを追加する場合もあります。通常、これらもこの交換手術と同時に行われます。
3-12 身体障害者の認定について
ペースメーカを植え込んだ患者さんは、身体障害者福祉法により身体障害者の認定を受けることができます。
この身体障害者の認定は、原則として患者さんご自身の申請が必要となります。申請を希望される方は、所定の申請用紙に必要事項をご記入いただき、医師により記載された身体障害者診断書を添えて、福祉事務所に提出してください。
申請用紙は、お住まいの地域の市役所・区役所・町役場の福祉課、支援課、または福祉センターにあります。各市町村によって異なりますので、申請場所や申請用紙取得に関しては、入院された病院のソーシャルワーカー、入院病棟スタッフや病院の相談窓口、または患者さん本人がお住まいになる地域の福祉事務所におたずねください。
3-13 医療機器登録制度(医療機器トラッキング制度)
万一、医療機器に不具合が生じた場合に事故を未然に防止するため、医療機器について安全情報が、速やかに、かつ確実に製造会社から医師を介し患者さんへ提供されることを目的として、医療機器登録制度(医療機器トラッキング制度)が平成7年7月1日より実施されています。この制度は、ペースメーカを使用されている患者さんにとって、非常に重要な制度です。
この制度に関する詳細は、登録手続きの際に担当医師より渡される「あなたの健康を守るために:様式1」の表面および裏面に記載されています。
登録のための様式は3種類ありますが、登録に関するすべての記入事項は、手術を受けられる患者さん(もしくは患者さんのご家族の方)の同意を前提としていますので、くわしくは担当医師までおたずねください。
3-14 ペースメーカ植込み後に配布されるもの
ペースメーカを植え込まれた後、患者さんには以下のものが配布されます。
❶ペースメーカ手帳
ペースメーカ手帳を受けられた際、記入された患者さんご自身に関する情報に誤りがないかを確認してください。記入事項に誤りがある場合には、担当医師に連絡してください。この手帳は患者さんのペースメーカにかかわる通院記録となります。手帳には担当医師が治療過程などの必要事項を記入しますので、定期検診の際には持参して、求められたときには提出してください。また、患者さんが植込み型の治療機器を使用していることを9カ国語で記載してありますので、外出先や旅行の際にもつねに携帯されることをおすすめします。
❷条件付きMRI対応カード
条件付きMRI対応ペースメーカが植え込まれた患者さんには、後日『条件付きMRI対応カード』が送付されます。MRI検査を受ける上で提示が必要ですので、ペースメーカ手帳とセットで携帯してください。また、検査時のペースメーカやご自身の身体の状態によって、MRI検査を受けられない場合もあります。
※以降は「使用上の注意事項」について
引用元『ペースメーカって何ですか?』について
⚫︎引用元:冊子『ペースメーカって何ですか?』
患者さんに快適な日常と安心をお届けするために
「ペースメーカ」についての大切なお話
⚫︎発行元:株式会社日本メドトロニック
最後に
ただ冊子を読んでいるだけではわからなかった(読み飛ばしていた?)ことが、このnoteを書くことで、少し理解できた気がします。
ペースメーカとの付き合いはまだ始まったばかり。これから死ぬまでずっとずっと、長い長い付き合いになります。ペースメーカと仲良くなれたらいいなと思います。
そして、このnoteがペースメーカの理解に役立ったら嬉しいです。
(追伸)
一部だけ引用するつもりが、ほぼ全てのページになってしまいました。引用に問題があるようでしたら、削除または修正しますのでお知らせください。
↓手術前のキモチを書いた記事はこちら
↓実際の手術&入院の記録はこちら