第3回:秋山浩保さん「政治のゴールには答えがない」
GR人材育成ゼミ第11期が、2023年7月4日より始動しました!
1、2回目を経て、第3回 (7月18日) のGRゼミレポートを、カビゴンよりお送りします。
今回は、第11期の副ゼミ長を務めて下さる秋山浩保さん(ニックネーム:やんけ)の、柏市長としての12年間の経験を踏まえた「政策決定の現実」がテーマでした。
秋山浩保さん (ニックネーム:やんけ) のご経歴
まず最初に、やんけのご経歴をご紹介します。彼は「民間における経営コンサルタントと社長経験、行政における市長経験の官民ハイブリッドキャリア」を築いて来られました。
学卒でベインアンドカンパニー社に入社され、経営コンサルタントとしてキャリアをスタート。ロジック思考、事業分析、大局的視点を鍛えつつ、ご活躍されました。
その後、ファンド等に請われ、またご自身の事業として、様々な業界にて企業経営に携わってこられました。社長経験を通じて、事業構築、組織運営、事業判断能力を磨き、リーダーとして事業を牽引されました。
12年間務めた千葉県柏市(人口43万人、首都圏のベッドタウン)の市長としては、行政組織運営、行政意思決定、選挙を学び、実践されました。特に財政運営については堅実な手腕を発揮し、地元の政治有識者の間では「財政の秋山」との異名も取りました。
政治とビジネスのゴールの違い
やんけの講義が始まるや否や、大きな枠組みの提示がありました。「ビジネスのゴールには答えがある」が、「政治のゴールには答えがない」というものです。
ビジネスの世界は、顧客に評価されて「売上」を立て、持続可能にするための「利益」を求めることがベースです。目指す結論は同じで、方法が違うだけなので、議論がかみ合います。一方で、政治の世界は「価値観」がベースとなっており、「それぞれが正しく、それぞれが間違っている」ことになります。議論がかみ合わず、結論が出ない状況が、政治においてはむしろ自然だというお話が印象的でした。
民間企業での勤務経験しか持たない私は、まずこの大きなギャップに驚きました。民間企業のビジネスパーソン出身で市長に就任されたやんけも、きっと当初はこのギャップに驚かれたのではと推察しました。分かりやすい対比を冒頭に示して下さったことで、以降のお話の理解が深まりました。
GRゼミにおける「政治の話」の特徴と「価値観」の整理
やんけは、GRゼミにおける「政治の話」は、価値観からスタートせず、リアルな実態からスタートすることが特徴であるとおっしゃいました。これは、政治的スタンスに関係なく、議論をかみ合わせて、着実に学びを積み上げるための工夫だそうです。
その一方で、実際の政治的意思決定は、リーダーの価値観に基づいて下されるので、自分の価値観を知り、深めることは不可欠であり、そのための順序もあると話して下さいました。
「政治の話」において、価値観の単なるぶつけあいは生産的になりにくいので避けるべきですが、自分の価値観を磨くこと自体は極めて重要であり、価値観は歴史観→社会観→戦略論の組み合わせによって磨くことができるということでした。
政策決定の現実
やんけは、地方自治体の政策が決まるまでの具体的なスケジュールを示すとともに、自治体の政策のほとんどは、職員が立案・実行していることを教えて下さいました。そして、職員発案ベースおよび政治家発案ベースの政策立案のそれぞれのフローや特徴についても言及して下さいました。
公務員の思考パターンについての解説は、実体験を踏まえた、納得感の高いものでした。また、市長の講演内容を、「原稿丸読み型」「新規事業中心」「分析提案中心」に分類し、この分類によって、市長のレベルの高さが分かるというお話も興味深かったです。
政策決定が、予算、業務フロー、スケジュール、各プレイヤーの力関係、思考パターン等に制約されながら実施されている現実を、立体的に理解することが出来ました。
全体を通じての感想
やんけが、政治の現場において命がけで学んでこられた知見を、惜しみなく共有して下さったことにとても感動しました。民間出身の市長として、限られた方々しか見たことのない景色を、的確な言語化を通じて、私たちゼミ生にも垣間見させていただきました。
様々な制約がある中で、自身の価値観に基づきながら、市民にとっての最善を追求してきたやんけの足跡は、成功エピソード、失敗エピソードともに、多くの学びに満ちていました。
授けて頂いた貴重な学びを、実践に結び付け、社会に役立つ人材になれるよう自身を鍛えていきたいと思います。