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Instagram新機能リール(Reels)大解剖 - Facebook社の狙い・ユーザー用途・アルゴリズムについてまとめてみた-

こんにちは、株式会社RadixというInstagramマーケティング支援サービスを提供している会社でマーケティングを担当している吉田睦史(ともふみ)と申します。

今回は、2020年8月6日に日本でリリースされたInstagramの新機能リール について、
アメリカで執筆された記事や、弊社でいくつかのアカウントで実践した結果から分かったことについて、共有しようと思います。

実装されたものの、何を目的としている機能なのか、運用者はどのように扱えばよいのか、明確になっていない方が多いと思うので、ぜひ参考にしてください。

こんな人に本記事はおすすめです。

・Reelが実装された理由が知りたい!
・Reelをどんな目的で使えば良いかを知りたい!
・Reelのを伸ばすコツを知りたい!

Twitterユーザーの方ではじめましての方がいましたら、フォロー頂けたら嬉しいです🙋‍♂️今後もインスタマーケテイングに関する情報を発信していくのぜひお願いいたします!

https://twitter.com/yoshida_Radix

Instagram新機能リールの基本的な機能

1) リール(Reels)とは

まずはじめに、そもそもリールって何なの?という方は下記でイメージが掴めると思うので、ぜひご覧ください。

リールは、中国のByteDance社が運営するモバイル向けショートビデオプラットフォーム「TikTok」のクローンサービスと言われており、機能やユーザーの用途は非常に似たものになっています。

サービスリリースのタイミングも秀逸でした。現在、アメリカではトランプ大統領がTikTokを情報流出による国家安全保障上の脅威として特定し、米国でのアプリ利用の禁止を脅かしており、パニックに陥った多数のTikTokerたちが、このInstagramの新サービスに乗り換えを行っています。

Tiktok利用による中国への情報流出懸念はアメリカ以外の国でも広がっており、日本では大阪府や神戸市、埼玉県などがTikTokの公式アカウント利用を停止するなど、TikTokからリールへの乗り換えは、今後も加速する可能性が高いです。

2) リールの基本的な機能

リールでは、今までインスタグラムでできなかった短尺動画の編集やアップロードが可能になりました。
機能は大きく2つで、1つは「動画編集」、もう1つは「アップロード」です。

■動画編集
下記の編集メニューがインスタグラムアプリ上で使用できます。
(リリースしたばかりなので機能は随時変わる可能性あり)

 -音源(BGM)の追加
 -再生速度の指定
 -カメラエフェクトの追加
 -タイマーの設定
 
使い方としては下記のようなステップになります。
 ①従来のストーリーズ追加ボタンをタップし「リール」を選択
 ②撮影を開始する前に各動画編集メニューを設定
 ③撮影が完了したら各場面にテキスト・落書き・ステッカーを追加
 ④キャプション(説明文)を追加しシェア

■アップロード
シェアできる先は大きく下記の3つになります。

 -ストーリーズ
 -フィード
 -リール

※リーチの初速を狙うためのコツ
リールの初速(いいね獲得)を早めるためには、「リール」だけでなく「フィード」にもシェアするべきです。
ただタイムラインの統一感が崩れてしまうことが嫌な方もいるはず。その場合は下記のステップで解決できます。

 ①フィードにシェア
 ②フィードに投稿されたリールを開き、右上の「・・・」をタップ
 ③「プロフィールグリッドから削除(Remove from Profile Grid)」を選択

上記を行うことで、タイムラインには表示されないけど、フォロワーには表示されるという状況を作ることができます

※リールが使えないケース
アプリ上でリールが使用できないケースも確認できています。その場合は下記のいずれかが考えられるので、対応をお願いします。

 -インスタグラムが最新バージョンにアップデートされていない
 -利用デバイスのOSが最新になっていない

なお、上記でも使用できない場合はリール機能が、現時点では全ユーザーに対応してない可能性があります

3) TikTokとの違い

TikTokと酷似しているリールですが、TikTokにある下記のような機能は使うことができません。
※今後実装される可能性はあります

・デュエットができない
TikTokの機能である、他のユーザーが投稿した動画とコラボできる「デュエット」は現在リール上ではできません。


Instagramがリールによって実現しようとしていること

1) 消費者の「可処分時間」をInstagramに使ってもらう

インスタグラムの売上は基本的に広告で成り立っています。ですので、インスタグラムが目指すところは「できるだけ多くのユーザーが、できるだけ多くの時間アプリに滞在してくれる」ことです。
今回のリール機能追加の思惑も、TikTokで使われている「過処分時間」をInstagramで使ってもらうこと。そのため、TikTokユーザーに違和感なく同じ目的で使ってもらえるように、リールのサービスコンセプトやUIはTikTokに大きく寄せています。

実際に、冒頭にあげたようなTikTokアプリ利用禁止の流れから、複数のTikTokerはすでにInstagramに移行しつつあり、また、同じ動画をTikTokにもリールにも投稿する、という流れもできてきています。

2) ビデオエンターテインメントプラットフォームとしての地位を確立する

上記に向けて、InstagramはTikTokのようなビデオエンターテインメントプラットフォームのポジションをも確立しようとしています。これまでは、ストーリーズやインスタライブなど、どちらかというと人との繋がりや生活の記録に重点を置いたソーシャルな機能の開発に重点を置いていましたが、リール機能は完全にエンターテインメントを念頭において設計された機能だと、インスタグラムのプロダクトディレクターであるRobby Stein氏が言及しています。
そのスコープの一つとして、発見タブの表示アルゴリズムも再設計を含んでいるようです。

余談ですが、ビデオエンターテインメントプラットフォームとしての地位確立に向けて、ポイントになるのがクリエイターにとってのプラットフォームの確立です。例えばクリエイターにプラットフォームでのリーチ拡大の機能を提供することや、動画をよりポップにするツールの開発。人気の高いクリエイターへの金銭の支払いなどが主になります。

TikTokはクリエイターファンド(Creator Fund)を創設しており、当初、今後1年で2億ドル(約212億円)を支払うとしていましたが、インスタグラムのリールがクリエイターに対し金銭的オフォーを出すというニュースが流れた翌日、資金を今後3年間で10億ドル(約1059億2098万円)以上に増額すると発表しています。
このことから、今後はプラットフォーム間でのクリエイターの争奪戦が繰り広げられると予想できます。

※参照:https://www.theverge.com/2020/8/5/21354117/instagram-reels-tiktok-vine-short-videos-stories-explore-music-effects-filters

リールは今後どうなっていくのか

上記の流れからも分かるように、インスタグラムはこの機能に大きくかけています。
Robby Stein氏によると、リール専用のハブを設置する予定だそうです。現在は、ユーザーがリールを閲覧する入り口は「発見タブ」からになりますが、TikTokの「あなたのためのページ」に相当するエリアができるみたいです。

Instagramは、ユーザーが永続的に好きなコンテンツと触れ合い続けられるように、これまでメイン機能だった「発見タブ」に加えて、「エンターテインメント」という軸で、勝負しようとしているようです。

ドイツですでに下記のようにリール専用タブのUIをテスト実施中

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※参照:https://twitter.com/JoshConstine/status/1291916454451806208

リールに関するアルゴリズム

弊社のいくつかのアカウントで検証した結果やアメリカでの検証記事などから、下記のようなことが仮説として見えてきています。

■ フィード投稿と近いアルゴリズム
通常のフィード投稿が表示されるアルゴリズム(発見タブにレコメンドされる仕組み)、は簡単に言うと「ユーザーとの関連性の高さ」×「ユーザーからの評価の高さ」です。つまり、ユーザーと近い属性のユーザーが評価したコンテンツが主にレコメンドされると言えます。
リール投稿が表示される仕組みも、ある程度は同じようなアルゴリズムが採用されている可能性が高いです。

■コンテンツの評価の仕組み
すでに確立したビデオエンターテインメントプラットフォームであるTikTokのコンテンツ評価方法が多く取り入れられていると考えられます。

TikTokのコンテンツ評価のアルゴリズムはざっとこんな感じです。もちろん、各要素の中でも重みづけがされています。

 -視聴維持率
  →MAXの動画時間に対して平均的にどの程度見られているか(スキップされずに)
 -平均再生回数
  →同一ユーザーから同じ動画を何回再生されたか(スワイプしないと何度も再生される)
 -視聴後(中)の行動
  →プロフィールアクセス、フォロー、スキップなど
 -コンテンツに対するアクショ
  →いいね、コメント、シェア、保存
  ※TikTokには存在しませんが、リールには保存があります

リーチ拡大の仕組み

■ 視聴数保証について
TikTokは誰のどんな動画であっても最低限数百の視聴が保証されている
、と言われています。この仕組みのおかげで、たとえ作ったばかりのアカウントであっても、動画をUPすれば質に限らず、200〜300前後の再生数が稼げるようになっています。結果として、TikTokはバズが生まれやすく、フォロワーが増えやすいと傾向があります。Instagramのリール機能にも同じような仕組みが搭載されているようです。

Tiktok(フォロワー0)でコンテンツ配信から1時間後の視聴数

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Instagram(フォロワー0)でコンテンツ配信から1時間後の視聴数

iOS の画像 (40)


■フォロワー数の影響について
Instagramのフィード投稿で多くのリーチを獲得するためには、一定のフォロワー数が必要です(もちろんコンテンツの質によっては度外視できる場合もあります)。なぜなら、Instagram側が投稿の評価を、アカウントとフォロワーとのエンゲージメント度合い、や投稿に対するフォロワーからのアクション数で判断している側面があるからです。

しかし、前述した通りリールの評価方法は異なるため、InstagramにおいてもTikTokのようなフォロワーからのエンゲージメントに依存しないレコメンドによる露出が行われている、ことが予測されます。

■先行利用者の優遇について
InstagramやFacebookといったサービスは、新機能利用者に対する優遇を行う傾向にあります。新しく始めるサービスは積極的に使って欲しいという意図があるため、ユーザーのメリットを訴求しようとします。
かつては、例えばInstagramではIGTVリリース時に、Facebookでは「動画投稿」の機能がリリースしたタイミングでは、エンゲージメントやリーチ数向上に、大きく寄与するような設計になっていました。

今回のリール機能でも同じ状況だと考えられます。TikTokのユーザーを取り入れるためには、まずはリールでコンテンツを生成するクリエイターの充実が不可欠です。そのためクリエイターにとってのメリット、つまりリールを使えば多くの人にリーチを拡大でき、フォロワーを増やせる、と言うわかりやすいメリットを提示するはずです。しばらくはリールによるリーチ拡大が、実現しやすい状態が続くのではと思います。

※現状有名人の投稿がバズっているのはリールのユーザーを集めるためでしょう

※弊社の事例ですがどんな投稿でも一定のリーチは確認できています
  リーチの拡大に再現性が持たせられるようになってきました

アカウント①

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アカウント②

画像7

アカウント③

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リールを伸ばすコツ

上記のアルゴリズムを鑑みた時に、下記のような動画になっているかを検証する必要があります。

 ①長い時間見られる動画になっているか
 ②繰り返し見たいと思える動画になっているか
 ③アクション(いいね・コメント・シェア・保存)したくなる動画になっているか
 ④発信者の他の動画も見たくなるか

①長い時間見られる動画になっているか
視聴維持率を高めるためのポイントは、フリとオチの構成です。
映像の初めに最後まで見たくなる(気になる・期待感のある)フリが無いとスキップされますし、初めにオチがあるとユーザーにとって最後まで映像を視聴する意味がなくなってしまい、これまたスキップされてしまいます。
また、動画が始まった時に、何についての動画なのかが分かりづらいと離脱されやすくなります

②繰り返し見たいと思える動画になっているか
繰り返し動画が見られるためには、何度見ても飽きない設計が重要です。
ポイントは、感情を動かす内容
です。

「すごい・かっこいい・可愛い・面白い・ためになる」といった感情を動画の中で醸成することができれば、繰り返し見たいと思ってもらうことができます。
また、展開のスピード感も重要で、視聴者にとって暇な時間が発生すると、もう一度再生することへのハードルになってしまいます。

③アクション(いいね・コメント・シェア・保存)したくなる動画になっているか
①②が実現できていれば、自ずと「いいね」「シェア」「保存」は促すことができるでしょう。一方で「コメント」は意図して促すことが難しいアクションです。ツッコミたい、ヤジを入れたい、といったユーザーインサイトを捉えた投稿が必要になります。
また、コメントは①や②にも影響を与える要素になります。コメントが多いと、目を通すのに時間がかかりますが、その間も映像は繰り返し流れ続けているので、視聴時間や回数を稼ぐことができます。

④発信者の他の動画も見たくなるか、フォローしたくなるか
TikTokと同じようにリールのアルゴリズムでも、動画を見た後のユーザーアクションが評価に繋がっている可能性が高いです。具体的には、動画を見た後に発信者の他の動画も見られたか、動画を見た後に発信者フォローされたか、といった要素です。

これは動画のトンマナやコンセプトの統一が重要です。他の動画も同じように自分の好みであれば、自然と閲覧やアカウントのフォローを期待できるためです。

企業や運用者はどんな用途でリールを使えば良いか

1) リール機能の役割

まずリール機能の役割について考える必要があります。
Instagramの機能を便宜的に分けると下記の2つになります。
※もちろんどの機能も下記の2つに影響しきれいに分けることはできません

①既存フォロワーとのエンゲージメント向上
②フォロワー外へのリーチ


①に関しては、特に双方向性の担保されたコミュニケーションが重要視され、ストーリーズやインスタライブが主な施策になります。

②に関しては、ユーザーとの関連性とコンテンツの質が重要視され、フィード投稿が主な施策になります。
そして、リール機能は明確にフォロワー外にリーチするための機能となります。

例えば、弊社の事例ですとリールによって、一週間でプロフアクセスが前週の約3倍に増加し、そこから複数のフォローが増えています。
(1週間で約10回のリール投稿)

iOS の画像 (16)

2) 企業や店舗はリール機能の活用に注力すべきか

次に、企業や店舗のインスタグラム運用者がどんな用途でリールを利用すべきか、についてですが、今のとろこは優先順位を上げてまで注力する必要はないと無いと考えています。
※個人のクリエイターはむしろ活用すべき

今バズっているリール投稿は有名人など知名度やルックスがある、もしくは、共感やシェアを促すようなエンタメ系の映像がほとんどです。個人クリエイターならまだしも、企業や店舗といったサービスのブランドを守りながら、そういったコンテンツを生み出すには大きな労力が必要ですし、難易度が高いと言えます。

また、リールのバズを起こしリーチを拡大したとしても、リールと普段の投稿の間に乖離があるのでフォローに繋がり難いですし、仮にフォローされたとしても長期的なブランドのファンや、ロイヤルティの高い顧客へは転化しないでしょう。リールに力を入れるのであれば、既存フォロワーとのエンゲージメント向上やフィード投稿によるバズを狙った方が効率が良いと考えられます。

最後に

長くなってしまいましたが、リール(Reels)はアップデートを前提にしているはずで、今後ユーザー動向に合わせてどんどん形を変えていくはずです。

参考になることがありましたら、「いいね」をいただけますと励みになります😌

今後もInstagramをはじめとするSNSマーケティングに関する情報を、Twitterで発信していくので、よければ見てみてください。何かあればお気軽にご相談もくださると嬉しいです。

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