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悪意で人を傷つける「厄介な人」を見抜き身を守るヒント#7「狙われ体質改善のヒント」part1

本シリーズ記事では、いつ、どこで遭遇するかわからない「厄介な相手」から人格攻撃(モラルハラスメントなど)を仕掛けられる前に、普段の相手の言動から悪意の有無や攻撃手口を見抜き、攻撃される前にすばやく相手の意図を封じ込めるサバイバル戦略として、
・そもそもなぜ狙われやすい人、狙われにくい人がいるのか?
・タイプ別悪意の有無の見抜き方
・実践的なサバイバル術
・相手に舐められないメンタルを手に入れるトレーニング方法
について紹介していきます。

前回、前々回と厄介な相手に対するタイプ別サバイバル術をお話ししました。

今回の記事では視点を変えて、厄介な相手から狙われないための体質改善について2回に分けてお話ししたいと思います。


本記事に登場する「厄介な人」のなにが厄介かといって、「攻撃や操作されていることに気づけない」「被害者自身に落ち度があるように思い込ませる」など、一種のマインドコントロール攻撃を仕掛けてくるところと言えるかと思います。

そこで、そうしたマインドコントロールに引っかからない体質改善の「はじめの一歩」として、「嘘」に関する話からスタートしたいと思います。

誰でも息をするように嘘をついている?


野生の動物はたとえば狩をする際に獲物を欺いたり、狩られないために捕食者を欺くといった「嘘」を巧みに利用するということはよくあることです。

昆虫も植物に擬態するなどして、捕食者からの攻撃をかわす術を持っています。

人にもそのDNAは引き継がれています。

悪意の有無を別にすれば、人はみな大なり小なり嘘をつくということに異論はないかと思います。

心理的発達のプロセスにおいては、自分の欲望をコントロールするために自己説得的な意味で自分に嘘をついたり、他者とのコミュニケーションを円滑にするために嘘をついたり……。

あるいは、白髪染めや矯正下着、お化粧など、生活の中で自分では「嘘」「人を欺いている」と認識しないまま、私たちは「嘘」を無意識に利用しています。

こうした嘘のスキルは、発達の過程で経験を通して学んでいきます。

嘘には3つのレベルがあると心理学者S・R・リーカムは提唱しています。

レベル1:相手の考えに影響を与えようとする意図なしに(あるいは、そうしたことを考えることすらせずに)嘘をつくレベル

このレベルの嘘は、小さな子どもがイタズラをしたことを否定して罰を逃れようとするとき、ご褒美を貰おうとしてやってもいない良いことをやったと偽る時につく嘘です。
こうした嘘は、素朴で利己的な嘘であり、そのため相手に嘘が見抜かれることも多いといえます。

レベル2:相手の考えに影響を与える意図をもって嘘をつくレベル

このレベルの嘘は、相手の情報や状況を把握したうえで、自分がつく嘘の内容によって相手にどのような影響を与えることができるのかをわかってつく嘘で、レベル1の嘘よりも高度かつ効果的な嘘と言えます。

例えば、本当は在庫があるにも関わらず「在庫切れ」と偽り、もうワンランク上の代替商品を売るなどがこのレベルです。

レベル3:自分の嘘が相手の考えに及ぼす影響を認識するだけでなく、相手に対する自己評価までも認識したうえで意図をもって嘘をつくレベル

このレベルの嘘になると、相手の言語的、非言語的な反応を観察し、適宜、調整しながら嘘をついていくといった巧妙な技術も必要になります。

また、自分の誠実さを相手に信頼してもらうために、自分がつく嘘をあたかも真実かのように自分でも思い込むといった自己洗脳もやってのけます。

このレベルの嘘になると、ある意味「熟練した嘘つき」であり、嘘を他人にも自分にも自在にコントロールできるレベルといってもいいでしょう。

このように嘘には熟練レベルがあるわけですが、相手のレベルに関わりなく、そもそも私たちは外部から「嘘の記憶」をいとも簡単に刷り込まれてしまう生き物のようです。

心理学者のE・F・ロフタス、K・ケッチャムが行った「嘘の刷り込み」実験があります。

これは「あのショッピングセンターで、迷子になったときのことを覚えてる?」と質問された被験者がどんな反応を示すかというとてもシンプルな実験です。

その結果、たとえ実際に迷子になった経験がなかったとしても、「迷子になった前提」で質問されてしまうと、質問された被験者は「そんなこともあったかもしれないな…」と質問を疑うことなく受け入れたばかりか、さらには自ら捏造した記憶を語り出した人までいたそうです。

私たちの記憶は、脳内のハードディスクに「記憶ファイル」として保存されているのではなく、引き出そうとする都度、記憶が再構成され、そして上書き保存されていくということが様々な研究で明らかになっています。

そのため、私たちが記憶していることの中には、もしかしたら最近になって無意識に書き換えられてものもあるかもしれないのです。

前回の記事で前述したガスライティングの手口の中にも、「嘘の記憶を植え付ける」「記憶を操作する」というものがありますが、実は「些細な暗示」でも私たちの記憶は容易に操作されてしまうことは様々な研究から証明されています。

その中の一つにワシントン大学のエリザベス・ロフタス博士らが行った強盗事件の目撃実験があります。

この実験では被験者に、ある強盗事件を描いた一連のスライドを見せ、その後で事件に関する様々な「誤った情報(例えば、強盗はねじ回しではなくハンマーを使っていたなど)」を含んだ話を聞かせたのちに、被験者に想起能力テストを行うというものです。

その結果、誤った情報を聞かされた被験者群は、事件の内容について著しく誤って思い出すという結果になりました。

この実験のさらに興味深いところは、誤った情報を聞かされていない被験者群と、誤った情報を聞かされた被験者群共に、「回答の反応速度」には違いが見られず、また「自分の回答の正確性」に対する自信度合いにも違いがみられなかったという点です。

つまり、誤った情報を与えられた被験者群は、自分がスライドで見た記憶が、途中の誤った言語情報によって書き換えられたことをまるで自覚できていなかったのです。

このように、私たちの記憶は些細な暗示で書き換えられるばかりか、その都度、記憶が無自覚に上書きされていくという、かなり絶望的な状態にあるといえます。

嘘を見抜くのは当たるも八卦のバクチなのか?


さらに残念な実験結果があります。

心理学者P・エクマンとフォードの実験では、被験者にあるビデオ映像を見てもらいます。そのビデオ映像には、なんらかの映画を見ている人の姿が映し出されているのですが、どんな映画を見ているのかまでは被験者には明かされていません。
そして、その映画の内容が楽しい映画なのか怖い映画なのかに関わらず、「いま自分は楽しい気分だ」と語ってもらうという内容の映像です。

その実験によると、警察官や弁護士、裁判官、ポリグラフ(嘘発見器)操作技師、FBI捜査官など、いってみれば「嘘を見抜く仕事」をしているプロの職業人たちですら、嘘を正しく感知する確率は、なんとコイン投げと同じ確率(1/2)でしかなかったのです。

ですが、ここでガッカリしてはいけません。

ある職業の人たちは、なんと約80%の確率で嘘を見抜いたのです。

それは、精神科医の被験者群の12%、シークレットサービスの被験者群の29%は約80%の確率で嘘を見抜いたのです。

ここに私たちが悪意ある嘘を見抜く希望が隠されています。

では、嘘を見抜けなかった人と嘘を見抜いた人の「見抜き方」には、具体的にどのような違いがあったのでしょうか?


相手の嘘を見抜けなかった被験者群が主に注意を向けていた点は、相手の「発話内容そのもの(話の筋道、論理性など)」でした。

一方、見抜けた被験者群は、

・発話内容と非言語的キュー(言葉では肯定しておきながら、首を横に振っているなど)とのアンマッチ

・感情の微細表出(その場にそぐわない瞬間的な表情など感情の動き)

に注意を向けていたのです。

つまりこの2つについての観察力を高めることができれば、私たちの嘘を見抜く能力も飛躍的に向上させることができるということが言えるかと思います。

では具体的な観察ポイントを見ていきたいと思います。

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