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悪意で人を傷つける「厄介な人」を見抜き身を守るヒント#4「狙われやすいホットボタン10選」
本シリーズ記事では、いつ、どこで遭遇するかわからない「厄介な相手」から人格攻撃(ハラスメント)を仕掛けられる前に、普段の相手の言動から悪意の有無や攻撃手口を見抜き、攻撃される前にすばやく相手の意図を封じ込めるサバイバル戦略として、
・そもそもなぜ狙われやすい人、狙われにくい人がいるのか?
・タイプ別悪意の有無の見抜き方
・実践的なサバイバル術
・相手に舐められないメンタルを手に入れるトレーニング方法
について紹介していきます。
どんな場所に行っても悪意を持った厄介な人に狙われやすい人と、狙われにくい人が現実問題としています。
厄介な人に「目をつけられやすい人」「捕食されやすい人」とそうじゃない人の違いは一体どこにあるのでしょうか?
ビック・ファイブから見た狙われやすい人の傾向
「厄介な相手」から身を守るヒント#1で紹介した「ビック・ファイブ」の因子でざっくりと人物特性を見てみると、これまでの経験上ハラスメント的な行為に狙われやすい人には総じて次のような傾向があります。
●外向性(Extraversion)が低い傾向(内向性が高い傾向)
物静かで一人でいることが多く、自分からはあまり他者と関わろうとしない。外交性の高い人に振り回される。
●神経症的傾向(Neuroticism)が高い傾向
自信がなくネガティブな言動が多い。何かしらの不安ごと、心配ごとがいつも頭を悩ませている。
自責、自罰、自己犠牲的な振る舞いが多い。ストレスに弱い(すぐに顔にでる)。
●誠実性(Conscientiousness)が高い傾向
自分の気持ちを我慢する。責任感が強く真面目。几帳面で決めたことは最後までやり遂げる。
●調和性(Agreeableness)が高い傾向
他者への共感力や配慮の姿勢を見せる。他者への親切や貢献に尽くす。周りとの対立を避け、普段から空気を読む。
●開放性(Openness)が低い傾向
ルールを守り、保守的で慎重。挑戦や変化を避ける。
これら4つの特徴がある人物のことを誤解を恐れずに言ってしまえば「真面目でおとなしく、自分よりも周りを優先する自己犠牲の人」と言えるかと思います。
とはいえ「ベタなハラスメント」をするような浅はかな輩にとっては、こうした人物像は確かにドンピシャなターゲットと言えるのかもしれませんが、この記事で扱っている「悪意で人を傷つける厄介な人」に限って言えば、ことはそう単純ではありません。
というのも、前回の「#3『悪意の内面世界に迫る』」の記事でもお話ししたように、サディスティックな「変質性」が十分に満たされないから……。誤解を恐れずに言えば「簡単すぎてつまらない」のです。
つまり、悪意で人を傷つけるような厄介な人は、ゲーム感覚で人を傷つける駆け引きを楽しむという変質性も持っているのです。
野生における捕食者と被食者の駆け引きと人間関係における駆け引きの違い
私たち人間を含めて、地球上の生物は様々な形で「自分以外」の生物を利用して生きています。利用の典型例が捕食・被食による食物連鎖です。
田んぼの稲の葉をイナゴが食べる → イナゴをカマキリが食べる → カマキリをスズメが食べる → スズメをタカが食べる
では、捕食者はどのような相手をターゲットにするのでしょうか?
捕食者が肉食動物の場合、被食者が草食動物ならなんでもいいのかと言えば、そうではありません。
例えば、捕食者よりも大きい動物、早い動物、硬い動物、賢い動物、反撃能力が高い動物に対しては、捕食者もそうやすやすとは手を出そうとはしません。
手を出すのは、反撃や逃走のリスクがより低いもの、より仕留めやすいものを基本的にはターゲットにします。
これは、生理学者ウォルター・B・キャノンによって初めて提唱された、脊椎動物が生きるか死ぬかの瀬戸際にとる「戦う、逃げる、すくむ反応(fight-or-flight-or-freeze response)」の3つの反応の中で言えば、「逃げる」「すくむ」の反応をしやすい相手を選ぶと言えます。
人間世界で言えば、厄介な相手と関わらないようにひたすら逃げ回ることに汲々としている人や、どうせ抵抗するだけ無駄だと最初から抵抗をあきらめる人が真っ先に狙われやすいと言えるでしょう。
とはいえ、被食者側も容易に捕食されないための様々な戦略をとっています。その戦略には大きく「模倣」「警告」「擬態」の3種類あります。
1)模倣(カモフラージュ)
これは、捕食者に見つけられにくくするために自分の色や姿を背景や他の生物に似せる方法のことをいいます。
人間世界で言えば「その他大勢」の中に溶け込み目をつけられないようにコソコソするイメージです。
2)警告色、警告模様
これは模倣とは真逆の戦略で、自分はまずいとか、毒があるとか、不快な臭いがあるということをことさら目立たせ、捕食意欲を削ぐものです。
人間世界で言えば権力者と仲がいいことをアピールするなど、虎の威を借る狐のような振る舞いをすることで絡まれないようにする戦略をとるといったことです。
3)擬態
これは毒のある動物などの形態を真似ることで、捕食者の目を欺くというものです。
人間世界で言えば「面倒臭い人」「口うるさい人」などのフリをして、絡んだら面倒なことになるというアピールをするなどです。
こうした戦略は野生の動物世界では優れた防衛戦略として有効に機能しますが、悪意で人を傷つけるような厄介な人にとっては、こうした戦略をとっている人はむしろ「格好のターゲット」として逆に選ばれやすくなる恐れがあります。
なぜなら、厄介な人のサディスティックな変質性が刺激されより楽しみを増すことになるからです。
反応チェックリスト
「直感的」に当てはまるものにチェックを入れてください。
□過去にイジメを受けたことがあり、それを周りに隠している。
□自分の中で折り合いのついていない劣等感をいくつか持っている。
□自分の弱みを見せずに強がる傾向がある。
□厄介事が起きると「自分のせいかも」と思いやすい。
□プライベートのことに関してどちらかといえばオープンにしている。
□自分の中で折り合いのついていない罪悪感をいくつか持っている。
□どちらかといえば依存心が強い方だと思う。
□自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先する。
□自分のことよりも、先回りで相手のことを考えてしまう。
□人に献身的に奉仕するほうだ。
□一人で問題を抱え込みやすい。
□人に頼んだり相談することが苦手。
□自分の短所や弱点はバレてはいけないと思う。
□真面目な人だと言われる。
□想定外の事態にひどく動揺する。
□人の気持ちの痛みを感じやすい方だ。
□責任感が強い方だ。
□承認欲求が強い方だ。
□他人と比較されるとひどく動揺する。
□「この前手伝ったよね」と言われると、嫌なことでも引き受けてしまう。
□白黒はっきりつけないと気が済まないほうだ。
□人から誤解を受けることが絶えられない方だ。
□些細なことで傷つき落ち込むことがある。
□頼まれるとNOと言えない。
□人前で自分の意見を言うことをためらうことが多い。
□誰かに認められたいと強く思う。
□人から素直だと言われる。
□人から優しい、親切だと言われる。
□周りの空気に敏感で、受け取りやすい方だ。
□意見が対立したときでも心を割って話し合えば解決できると思う。
□誠心誠意話し合えば分かり合えるし、相手も心を入れ替えると思う。
リストの内容は、大なり小なり誰にでも当てはまるものかと思います。ですからチェックが入ったからといって神経過敏になる必要は少しもありません。
ここで考えたいのは、チェックの入った部分は「ホットボタン」になりやすく、そこを狙い澄まして厄介な人が攻撃してくる可能性が高いということです。
ホットボタンとは、そこを前触れなく突かれると気持ちが強く動き、冷静ではいられなくなってしまう「心理的弱点」のことです。
人はホットボタンを予告なく突かれると、いつもは隠している「裏の顔」を露呈しやすくなります。
そうした一瞬の動揺を足がかりにして、厄介な人は「どのホットボタンが相手にとってよりダメージが強いのか」を虎視眈々と見定めているのです。
狙われやすい「危険なホットボタン」10選
ホットボタン①「メランコリー親和型」タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
自分の気持ちよりも場の空気を優先にする。調和を重要視し衝突を避ける結果、八方美人になっている。周りに献身的に奉仕する一方、自分は周りに助けを求めない。自分に対するハードルが高い。秩序やルールを重んじる。責任感が強く真面目。 など
※メランコリー親和型とは、ドイツの精神科医テレンバッハが提唱した性格傾向の一つ。秩序愛が基本にあり、良心的で義務を重んじ、真面目できっちりした性格。保守的で変化に弱い傾向があり、所属している会社や地域の中で期待される役割に自分を合わせるといった特徴を持っている。
ホットボタン②社会不安症タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
人前で緊張しやすい。自分よりも相手の意見を優先しやすい。頼まれてもいないのに周りの機嫌をとってしまう。沈黙に耐えられない。自己主張が苦手で周りに流される。恥をかくことをことさら恐れる。 など
ホットボタン③承認欲求渇望タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
聞かれてもいないのにリア充っぷりをアピールする。SNSに楽しそうにしている場面をよくアップする。賞賛されるためにことさら話を盛る。自分が話題の中心になるように会話を誘導する。「困ったな」「どうしよう」と気持ちを言葉にして周囲の注意を誘う。 など
ホットボタン④ゼロか100かタイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
「いい、悪い」「正しい、間違っている」「やる、やらない」「白、黒」「ゼロ、100」「勝ち、負け」「興味があるもの、ないもの」など、物事を両端で判断しグレーゾーンや例外が一切存在しないかのように振る舞う。「べき論」で一刀両断する。たとえ根拠が薄くても自分の意見が正しいと思っている。 など
ホットボタン⑤コンプレックス抑圧タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
出来ないことを出来ると強がる。知らないのに知ったかぶりをする。人に自分の欠点や弱点をことさら隠そうとする。完璧主義。前例がないことには挑戦しない。周りの動向を見て大丈夫そうなことを確認してから行動する。減点されること、評価を下げられることを恐れている。 など
ホットボタン⑥悲劇のヒロイン、ヒーロータイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
「ひどいと思わない?」「ずるい」「私ばっかり」など、自分を被害者ポジションで語るのが口癖。相手に同情や共感を求める。自分にとって理不尽な面、欠けている面ばかりをクローズアップし悲劇のヒロインを装うが実は話のオチが自慢話になっていることもある。 など
ホットボタン⑦事情通タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
「旦那さんの年収は?」「夜の生活は?」など極めてプライベートな質問をする。詮索好きの一方で、自分のことは隠す。芸能ニュース、政治家の失言、陰謀論、オカルト好き。ネタに飢えている。 など
ホットボタン⑧自虐・自罰タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
「私のせい」「どうせ私なんて」「私が我慢する」が口癖になっている。お世辞やおべっかが多く、必要以上にへりくだる。場を盛り上げようとして周りがドン引きするような自虐ネタを披露する。自分に関係のないことまで「私のせいかも…」と心配する。期待をプレッシャーとして受け取る。必要以上に落ち込み自分を責めるが改善には繋げない。 など
ホットボタン⑨五感敏感タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
身近な人の気持ち、周りの雰囲気の影響をモロに受けやすい。他の人が気に留めない刺激(貧乏ゆすり、ペン回し、キーボードのタイプ音、舌打ち など)に強いストレスを感じる。すぐに気疲れする。 など
ホットボタン⑩ポリアンナ症候群タイプ
(ホットボタンを見抜かれる特徴的な振る舞い例)
物事の悪い側面をみようとせずに、過度なポジティグ思考。敵を作らないことを信条にしている。頼まれてもNOと言わない。誰にでもいい顔をして八方美人になっている。「いい人」「優しい人」「明るい人」と言われることが多いが「信頼できる人」とは言われない。 など
ということで、「悪意で人を傷つける厄介な人視点」から見た10個の典型的なホットボタンをお話ししました。
君子危うきに近寄らずは裏目にでる?
ここまでお読みいただいた方なら、悪意の相手には「返報性の法則」がまるで働かないばかりか、親切がかえって仇になるなど、世間一般で言われているコミュニケーションスキルや関係性の築き方がまるで通じない相手だということは理解いただけたと思います。
これは、アダム・グラント著『「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』で言えばテイカー(真っ先に自分の利益を優先させ、与えない人)に全振りしているタイプと言ってもいいでしょう。
だからといって、厄介な相手から距離をおこうとしたらしたで、「無視されている」と被害者を装って攻撃してくるため、一度狙いをつけられてしまうと距離置く(君子危うきに近寄らず)というアプローチも得策とはいえません。
そこで次回は、狙いを定められるめに相手の悪意の有無を見抜き、素早く対処するためのファスト戦略について、タイプ別に具体的な事例を挙げて説明したいと思います。
初動の段階で見抜くことができれば、悪意で人を傷つける厄介な相手からの攻撃を食い止めることは十分に可能なのです。
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