見出し画像

高校数学の欠点〜問題集の「解説」の不親切さ(2,242字)

公立高校3年生男子に中間テスト数学のやり直しをさせていたときの話です。

彼はいつも真面目で、小学生の時からずっと指導しているのですが、いかんせん数学の出来が良くありません。

これ以上の向上を望むのは酷であるというくらい、本人の努力を間近で見てきているだけに、心が痛みます。

文系志望なので数学は「数 I・A」と「数 II・B」だけでよいのですが、特に「数 I・A」が伸びません。

「数 II・B」は、解法パターンを暗記すればある程度は何とかなります。

しかし、「数 I・A」は、基本パターンを覚えたとしても、それらを自分で色々と組み合わせなければならないので厄介です。

私自身は数学が好きで得意だったので、上記の違いを感じたことはなかったのですが、数学の苦手な生徒と向き合っているうちに、「数 I・A」の難しさを肌で感じるようになりました。


[1]みんなに優しい解説を

今でも数研出版が主流

高校数学が苦手になる原因のひとつとして、「解説の不親切さ」が挙げられます。

今回取り上げる問題の解説にも、文字と式しかありません。

いつも塾生には図を描くよう口酸っぱく指導していますが、グラフを扱う問題において、図を描かずに解くことはありえません。

にもかかわらず、式だけで解こうとする生徒が続出するのには、「模範解説」の影響も大きいと考えられます。

ぜひグラフをつけてほしい

ある出版社の編集者に聞いたところでは、彼らも人であるから、やはり「解説は分かりやすく伝わりやすいものを作りたい」という思いはあるらしい。

しかしながら、誌面の都合上、どうしてもスペースが制限され、泣く泣く最小限の情報しか書くことができないそうです。

彼らの言わんとするところは分からなくもありませんが、私から言わせるとやはり「本末転倒」です。

「分かりやすさ」と「ページ数」を天秤にかけて、最終的に「分かりやすさ」を犠牲にするというのなら、出版などしない方がマシです。

私の座右の書として、細野真宏「本当によくわかるシリーズ」がありますが、是非これを見習ってほしいところです。

このシリーズは、小学生でもわかる平易な表現を用いながら、知らぬ間に東大・京大などの高みへ導く最高傑作です。

最近この本を書店であまり見かけないことが残念でなりません。

小学生でも理解できる分かりやすい説明
1次式の包絡点の問題
東大の問題でも簡単に解けるようになる


今どんな本が流行しているのかという視点で書店を見て回ると、世の中の現在がよく見えます。

表紙がきらびやかだったり、内容が偉そうだったり、外見ばかり目立って中身はさっぱりという本が堂々と売られています。

私たち消費者も真実を見抜く目を養う必要があるということです。

[2]解説の不親切さと向き合う

話は脱線しましたが、子どもの「数学嫌い」を助長する原因として、「解説の不親切さ」が挙げられることは言うまでもありません。

数学は、必ず図形的なイメージを頭に描きながら解くべき科目であり、解説に図がないことはありえません。

この模範解説に「解説が必要」という皮肉

(1) においても、ただ単にこの問題の正解を求めるだけならば解説の書き方で良いのですが、(2)以降の問題に発展させる場合においては、図形上のイメージを頭に浮かべる必要があり、それなしに高得点獲得につなげることはできません。

出版社の方々は、本当に数学の楽しさ・面白さを世に広げたいのであれば、誌面の刷新に本気で取り組まなければなりません。

この図を載せるだけで、
分かりやすさは段違いなのですが…


(1) を解くときに丁寧に図を描くと、(2)で見えてくることがあります。

「なんとか解けそうだ !!」という希望が大切

自分で手を動かしてグラフを描くと、どうしても「グラフG1」と「グラフG2」の関係性が気になり、その関係性が以降で問われるのではないかという予測が立ちます。

その予測をもとに (2) の問題文を読んでみると、「グラフG1」が出てこないことに気づきます。

この気づきが非常に大切です。

この一見難しそうに見えるマーク式問題を短時間で解く上において、「解答の方向性」 を見極めることが重要です。

ややもすると問題の複雑さに心折れてしまいがちですが、あらかじめ図を描いておくことで、解答の方向性を見失うことなく、希望の光を見失わずに、進むべき最短距離をとることができます。

「グラフG1」と「グラフG2」の関係性が問われるのではないかという予測をもとに臨んだ (2) で、「グラフG1」の記述がない。

単に「グラフG2」の場合分けだけすればよいのだという安心感を持って問題に臨めるのです。

[3]みんなに優しい世界を

このことは、数学の得意な人たちにとっては当たり前のことであり、意識上にものぼらないほどの些細なことですが、数学の苦手な生徒は、今自分がこの問題をどのようなスタンスで解けばよいのか、全体像の見えない中で暗中模索しながら苦労しています。

「単に『グラフG2』の場合分けだけをすればいいんだ !!」という、至極当たり前の見通しですが、問題を解く中で、この安心感を持ちながら臨めるかどうかで天と地ほど違ってきます。

「自分で問題をコントロールしている」という安心感をもって取り組めるか、「無理やり問題を解かされている」という焦燥感を持って取り組むかは大きく異なります。

数学の苦手な子どもたちにも、できる限り「数学の楽しさ・面白さ・安心感」を持って取り組んでもらいたい。

そう強く願います。

いいなと思ったら応援しよう!