東証市場再編でどうなる/知ったかぶりの床屋談義 Vol.2
2022年4月に東京証券取引所、いわゆる東証の市場区分が変わる。これまで「東証1部」「東証2部」「マザーズ」「JASDAQ・スタンダード」「JASDAQ・グロース」の5つに分かれていた市場区分が、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに再編されるのだ。
再編の理由としては、まずわかりやすくすること。これまでは5つに分かれているにもかかわらず6割近くの企業が最上位の東証1部にいたり、マザーズとJASDAQのグロースの違いが明確でなかったりと、よくわからない区分だった。新しい区分では各市場のコンセプトを明確にし、かつ審査基準を厳しくしたうえで再編が行われる。
また再編のもう1つの理由としては、海外からの投資を呼び込むこと。アメリカではコロナ禍でも史上最高値を更新するなか、日本株は低迷を続けている。東証の時価総額の合計は米国のニューヨーク証券取引所やナスダックに大きく水をあけられるばかりか、2020年7月には中国の上海証券取引所、2021年5月には欧州のユーロネクストにも抜かれて世界5位に転落してしまった。東証の区分を整理することで海外からの投資を呼び込もうというわけだ。
プライム市場
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流通株式時価総額が100億円以上、流通株式比率は35%以上)があり、高いガバナンス水準を持つ企業向けの市場で、ようするにグローバルな一流企業を対象にしている。
スタンダード市場
一定の時価総額(流通株式時価総額が10億円以上、流通株式比率は25%以上)があり、基本的なガバナンス水準を持つ企業向けの市場で、ようするに国内でがんばっている堅実な企業を対象にしている。
グロース市場
最低限の時価総額(流通株式時価総額が5億円以上、流通株式比率は25%以上)があり、高い成長可能性を実現するための事業計画とガバナンスがある企業向けの市場で、ようするにベンチャー企業を対象にしている。
再編の課題
企業がどこの市場に上場するかは基準をクリアしていれば企業が選択することができる。プライムの実力があってもスタンダードを選ぶことができるし、また現時点でプライムに適合していなくても計画書を提出することでプライムを選択できる経過措置がある。その結果、プライム市場には東証1部の8割強の企業が横滑りすることになってしまった。東証1部からスタンダードに移行すると投資家が離れてしまうことを恐れ、プライムを選択する企業が多かったのだろう。
株価への影響
東証1部からスタンダード市場にいくと株が売られるのではと思えるが、実際、そのようにリリースした企業をみると株価には影響がなかったようだ。逆に東証2部やJASDAQからプライムにいくと発表した企業でも株価はほとんど反応しなかった。いまのところは投資家も様子見なのかもしれない。
影響があるとしたら個別銘柄よりもTOPIXだろう。TOPIXは東証1部のすべての株価なので、再編されれば影響は受けるはずだ。ただ再編してすぐに入れ替えがあるわけではなく、組み込まれている企業はそのままで、徐々に入れ替えを行っていくらしい。だからこれも影響が出るのは先のことだろう。
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