大学ウェブサイトのグローバルナビゲーションがわかりにくい
私はこれまで国立大学で4つのウェブサイトをディレクションしていた。大学本体ではなく学部やセンター、私立や専門学校などを入れるとけっこうな数になる。こういう経験から大学ウェブサイトのグローバルナビゲーションがなぜわかりにくいかを考えてみたい。
グローバルナビゲーションというのはPCではウェブサイトの上や左に設置されたメニューで、通常は階層化されたサイト構造の第2階層が並んでいる。
たとえば下のようなページ構成の場合、グローバルナビゲーションは「大学案内」「学部・大学院」「学生生活・就職」「研究・産学連携」「国際交流」となる。
これだけならとくに問題はないのだけど、多くの大学ではこれにあわせて「対象者別メニュー」をグローバルナビゲーションに設けている。たとえば下のようなものだ。
もともとのメニューを「内容別メニュー」とすると、グローバルナビゲーションには2つのメニューが設置されていることになる。
このときページ構成はどうなっているかというと、ツリー構造として実際にページがぶら下がっているのは内容別メニューのところで、対象者別メニューは内容別メニューへ誘導することを目的とした目次だけのページということになる。サイト内リンク集という言い方がわかりやすいかもしれない。これがなぜ必要になるかというと、たとえば受験生には「大学案内」の中の「学長あいさつ」も見てほしいし、「学生生活・就職」の中の「年間カレンダー」も見てほしいから、それらをまとめて「受験生の方」としてまとめたいから、という理由からだ。ユーザーにとってわかりやすくしたいという親切設計なのである。
だけどこれはほんとうにわかりやすいのだろうか。対象者別メニューにはすべてのページが網羅されているわけではない。内容別メニューにはあっても対象者別メニューの中にはどこにもないページもあるし、対象者別メニューの中で重複しているページもある。たとえば「学長あいさつ」があちこちにあることもあるだろう。
大学としては、いろんな人に見てほしい、どこからでも行けるようにしたい、という気持ちかもしれないが、ユーザー側としては混乱するのではないか。親切が裏目にでるのではないかと思うのだ。
ビジネス用語で「MECE」(ミーシー)というのがある。これは「モレなく、ダブリなく」という意味で、何か物事を考えるときに、必要な要素を網羅しながらも(モレなく)、それらが重複しないように(ダブリなく)する考え方を指す。これでいえば、大学のグローバルナビゲーションはまったくMECE的ではないのである。
このグローバルナビゲーションの作り方のメリットもある。多くの大学がこのメニューを採用しているので、ユーザーとしてはこのメニューに慣れていて、たとえば企業の人が大学のサイトを見て回るときに、いつも「企業の方」から探しているから探しやすい、ということはあるだろう。みんながそうしているから、みんなに合わせたほうがわかりやすい、ということだ。このナビゲーションは日本にかぎらず海外の大学でもみられるが、とくに日本の大学では多くみられる。というかほとんどの大学がこれを採用している。
ではこれを採用しない場合にはどうなるかというと、たとえば東京大学では下のようなグローバルナビゲーションになっている。
これは内容別メニューと対象者別メニューを合体させたものだ。項目数が多すぎるので減らしたほうがいいと思うが、すべてをツリー構造でまとめた形になっているので、ユーザーとして迷うことはなさそうだ。
もっと大胆に構成を変えてしまう方法もある。たとえばハーバード大学では下のようなメニューになっている。
ここまでシンプルにするのは難しいかもしれないが、自分が必要な情報がどこにあるのかはこれを見ただけでわかるのではないだろうか。
私はウェブサイトのメニューはMECEであるべきだと考える。それはページ構成がツリー構造だからだ。ツリー構造になっているものをあえてごちゃごちゃにする必要はない。もちろん異論はあるだろう。だけど、いままでがそうだから、他がみんなそうだから、という理由でそうなっているのであれば、ぜひ再検討してみてほしい。