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大学ウェブサイトのグローバルナビゲーションがわかりにくい

私はこれまで国立大学で4つのウェブサイトをディレクションしていた。大学本体ではなく学部やセンター、私立や専門学校などを入れるとけっこうな数になる。こういう経験から大学ウェブサイトのグローバルナビゲーションがなぜわかりにくいかを考えてみたい。

グローバルナビゲーションというのはPCではウェブサイトの上や左に設置されたメニューで、通常は階層化されたサイト構造の第2階層が並んでいる。

たとえば下のようなページ構成の場合、グローバルナビゲーションは「大学案内」「学部・大学院」「学生生活・就職」「研究・産学連携」「国際交流」となる。

HOME(トップページ)
ーー大学案内
ーーーー学長あいさつ
ーーーー沿革
ーー学部・大学院
ーーーー文学部
ーーーー経済学部
ーー学生生活・就職
ーーーー年間カレンダー
ーーーーシラバス
ーー研究・産学連携
ーーーーシーズ集
ーーーー産学連携
ーー国際交流
ーーーー短期留学
ーーーー長期留学

これだけならとくに問題はないのだけど、多くの大学ではこれにあわせて「対象者別メニュー」をグローバルナビゲーションに設けている。たとえば下のようなものだ。

HOME(トップページ)
ーー受験生の方
ーー在学生の方
ーー保護者の方
ーー企業・一般の方
ーー卒業生の方

もともとのメニューを「内容別メニュー」とすると、グローバルナビゲーションには2つのメニューが設置されていることになる。

内容別メニュー
ーー大学案内
ーー学部・大学院
ーー学生生活・就職
ーー研究・産学連携
ーー国際交流
対象者別メニュー
ーー受験生の方
ーー在学生の方
ーー保護者の方
ーー企業・一般の方
ーー卒業生の方

このときページ構成はどうなっているかというと、ツリー構造として実際にページがぶら下がっているのは内容別メニューのところで、対象者別メニューは内容別メニューへ誘導することを目的とした目次だけのページということになる。サイト内リンク集という言い方がわかりやすいかもしれない。これがなぜ必要になるかというと、たとえば受験生には「大学案内」の中の「学長あいさつ」も見てほしいし、「学生生活・就職」の中の「年間カレンダー」も見てほしいから、それらをまとめて「受験生の方」としてまとめたいから、という理由からだ。ユーザーにとってわかりやすくしたいという親切設計なのである。

対象者別メニュー
ーー受験生の方
ーーーー学長あいさつ(「大学案内」配下のページにリンク)
ーーーー年間カレンダー(「学生生活・就職」配下のページにリンク)

だけどこれはほんとうにわかりやすいのだろうか。対象者別メニューにはすべてのページが網羅されているわけではない。内容別メニューにはあっても対象者別メニューの中にはどこにもないページもあるし、対象者別メニューの中で重複しているページもある。たとえば「学長あいさつ」があちこちにあることもあるだろう。

大学案内
ーー学長あいさつ(本籍地)
受験生の方
ーー学長あいさつ(リンク)
保護者の方
ーー学長あいさつ(リンク)
企業・一般の方
ーー学長あいさつ(リンク)

大学としては、いろんな人に見てほしい、どこからでも行けるようにしたい、という気持ちかもしれないが、ユーザー側としては混乱するのではないか。親切が裏目にでるのではないかと思うのだ。

ビジネス用語で「MECE」(ミーシー)というのがある。これは「モレなく、ダブリなく」という意味で、何か物事を考えるときに、必要な要素を網羅しながらも(モレなく)、それらが重複しないように(ダブリなく)する考え方を指す。これでいえば、大学のグローバルナビゲーションはまったくMECE的ではないのである。

このグローバルナビゲーションの作り方のメリットもある。多くの大学がこのメニューを採用しているので、ユーザーとしてはこのメニューに慣れていて、たとえば企業の人が大学のサイトを見て回るときに、いつも「企業の方」から探しているから探しやすい、ということはあるだろう。みんながそうしているから、みんなに合わせたほうがわかりやすい、ということだ。このナビゲーションは日本にかぎらず海外の大学でもみられるが、とくに日本の大学では多くみられる。というかほとんどの大学がこれを採用している。

ではこれを採用しない場合にはどうなるかというと、たとえば東京大学では下のようなグローバルナビゲーションになっている。

HOME(トップページ)
ーー大学案内
ーー学部・大学院等
ーー入学案内
ーー教育・学生生活
ーー研究活動
ーー社会連携
ーー産学連携
ーー国際交流
ーー卒業生

これは内容別メニューと対象者別メニューを合体させたものだ。項目数が多すぎるので減らしたほうがいいと思うが、すべてをツリー構造でまとめた形になっているので、ユーザーとして迷うことはなさそうだ。

もっと大胆に構成を変えてしまう方法もある。たとえばハーバード大学では下のようなメニューになっている。

HOME
ーーAcademics
ーーCampus
ーーIn Focus
ーーVisit
ーーAbout
ーーNews

ここまでシンプルにするのは難しいかもしれないが、自分が必要な情報がどこにあるのかはこれを見ただけでわかるのではないだろうか。

私はウェブサイトのメニューはMECEであるべきだと考える。それはページ構成がツリー構造だからだ。ツリー構造になっているものをあえてごちゃごちゃにする必要はない。もちろん異論はあるだろう。だけど、いままでがそうだから、他がみんなそうだから、という理由でそうなっているのであれば、ぜひ再検討してみてほしい。

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