アワビが食べられなくなるかも?というはなし
先日国際保護自然連合が公開した最新のレッドリストに「黒アワビ」「メガイアワビ」「マダカアワビ」の3種類が選定されました。
黒アワビと言えば高級食材で有名ですが、目にする機会も多いので、「たまの贅沢」といった具合で食されている方も多いことでしょう。
その黒アワビが今回レッドリストに選ばれたということで、将来的にもしかしたら天然黒アワビが食べられなくなるかもというお話です。
そもそもレッドリストとは?
レッドリストは国際自然保護連合(IUCN)が作成した、絶滅の恐れのある野生動物のリストです。
日本国内でのレッドリストも作成されており、環境省や地方公共団体が作成に携わっています。
どの様な基準でレッドリストに選んでいるのかは割愛しますが、主に生物学的観点から、生き物の種類ごとの絶滅危険度を判断し、レッドリストに選定しています。
ちなみに少し古いデータですが、レッドリストのカテゴリーと判定基準をまとめたPDFを見つけましたので、気になる方はご覧ください。
環境省レッドリストカテゴリーと判定基準(2013.2)
レッドリストは国際自然保護連合が作成したものと、日本の環境省の作成したものとそれぞれありますが、判定の基準はそれぞれの団体によって異なります。
とはいえ、「片一方のレッドリストにしか乗っていないから、この生き物は絶滅の心配がないね」ということにはなりません。どこの団体が作成したものであれ、レッドリストに載ってしまった種は絶滅の可能性が高いという認識が重要です。
レッドリストに載るとどうなるのか
結論から言えばレッドリストに載ったからと言って今すぐに漁獲が制限されるなどの措置が取られることはありません。
但し、今後ワシントン条約などの議論の場では、このレッドリストの内容が科学的な根拠として取り扱われるでしょう。
もしワシントン条約で規制という話になればアワビの国際取引の規制対象となり、食卓はおろか、飲食店でも見かけることのない食材となるかもしれませんね。
アワビの絶滅の危険はどれくらいある?
今回レッドリストの対象となったアワビ3種は3段階の絶滅危惧種ランクのうち2番目(EN)の評価となりました。
これは「近い将来、野生での絶滅の危険が高い」という評価で、アワビの絶滅が深刻な問題となっていることを意味します。
今はまだ手を打てばどうにかなる状況ですが、このまま何も対策を取らなければ、20年もしないうちにアワビがこの世からいなくなってしまうかもしれません。
レッドリストの絶滅危惧種ランク
レッドリストの絶滅危惧種ランクは以下のようになっています。
絶滅危惧種と一言で言っても、その内容は更に細かく分けられています。野生化での絶滅の危険性が高いものから絶滅危惧、絶滅危惧1類、絶滅危惧2類とされ,絶滅危惧1類は1A(CR)と2B(CN)に分けられます。
細かく区別されていることから「絶滅危惧危惧にまでランクが上がらなければ大丈夫」と思ってしまいそうですが、このリストに選ばれてしまった時点でどのランクに分けられようとも絶滅の危険が高いということは理解しておくと良いでしょう。
こうなってしまった原因
アワビが絶滅危惧種に選ばれてしまった原因はどこにあるのでしょうか。
その原因を明確に結論付けることは困難ですが、有識者の間では、乱獲、密漁、海水温の上昇といった気候の変化、などが原因として挙げられています。
そのうちの乱獲と密漁は人間が原因となっていることは言うまでもありません。己の利益や食の満足を満たすことばかり考えた結果、ついにこのような事態になってしまいました。
限りある資源を大切にする心を持ち合わせていたいものです。
【まとめ】このままではアワビが絶滅してしまう
今回レッドリストに載ってしまった「黒アワビ」「メガイアワビ」「マダカアワビ」の3種は、このままではほぼ間違いなく絶滅するでしょう。
「レッドリストに載っただけだからまだ取引は規制されないんだ」と思って油断してはいけません。
だからと言ってアワビを食べるなというつもりもありませんが、今回のニュースは「貴重な資源はいつかはなくなってしまう」という現実を突きつけられるものでした。
私自身アワビは大好きです。きっと多くの人が好きでしょう。しかし、何もしなければいずれ食べられなくなる食材となります。
そんな悲しい現実を目の当たりにしない為にも、まずは今のこの現状を知ることから始めませんか?それがきっと自然の保護につながると思っています。