顔も知らない隣人に、初めて手紙を書いた日
洗濯物は部屋干しよりも、なるべく外に干したいタイプ。いつも天気予報で降水確率は確認してから干すのだけども、風の強さまでは確認しない。そのせいで、まだ今の部屋に暮らし始めて1年なのに、2回も洗濯物を強風で飛ばされている。
初めて飛ばしたのは今年の2月、その日は土曜日で、夕方帰宅してベランダに出ると、干していたはずのヒートテックが1枚なくなっていた。ベランダから身を乗り出して下(大家さんの庭)を覗いても何も見えず、ちょっとごめんなさい…と思いながら隣のベランダを覗くとハンガーとともにヨレヨレの黒いヒートテックが落ちていた。隣人の窓から部屋の光が漏れていないので、どうやらまだ帰宅していないらしい。どうにかこちらに引っ張ってこれないかと考えたが、頑張っても手が届かなそうな場所に落ちていてどうしよう…と困ってしまった。
今の時代なので、引越し時に隣人に挨拶などしておらず、顔も見たことがない。その頃、隣人はよく部屋でOfficial髭男dismの「Pretender」を熱唱していて(壁が薄いので聴こえる)、バレないように私も合わせてハモったりしていたが、時々彼女が奇声のようなものを発することもあったため、少し恐れていた。
古いタオル1枚くらいだったらきっと私も見て見ぬ振りをしてしまったかもしれないけど、さすがに誰のかわからないヒートテックとハンガーが自分のベランダに落ちていたら気持ち悪いだろうなと思い、「よし、手紙を書こう」と思い立った。
隣の部屋の○○○(部屋番号)の者です。洗濯物とハンガーが△△△のベランダに風で飛ばされてしまい、もし可能でしたらそのまま○○○のベランダへ放り投げておいていただけると助かります…。
ご迷惑おかけしてすみません!
2020.2.22
ちょうど前職で退職届を書くのに使っただけの便箋が余っていたので、2回くらい綺麗に書き直してから、隣人のドアポストに恐る恐る入れてみた。
隣人は夜中に帰宅したらしい。朝起きてベランダを確認したら、放り投げるどころか、物干し竿をかけるところにうまいことハンガーと洗濯物を引っ掛けておいてくれていた。隣人は優しかった。
それ以来、顔の知らない隣人のことを怖いと思ったことはない。
彼女は今日、Superflyの「愛をこめて花束を」を熱唱している。
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