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晴れた日の26℃だけが思い出せる

ここだけの話、私には26℃がわかる。30℃も15℃もピンとこないけど、気温が26℃の晴れている日に外に出て「あ、今26℃だな」ということが、ただ、わかる。

あれは小学校の頃、たぶん5月の晴れた日。学校が終わって3時とか、友達と空を見上げながら歩いて帰っていた。私は七分袖のTシャツを着ていた。袖と首回りがオレンジ色の、正面になんか数字がどどんとプリントされている、七分袖のTシャツ。その日の空はすごく晴れていて、少し暑いけど汗をかくほどでもなく、その七分袖のTシャツが本当にちょうどよかった。家に帰ってお天気ニュースを見ると、その日の最高気温は26℃だった。ただそれだけの記憶なんだけど、その日の気温と服がちょうどよすぎて、当時の私は感動してしまったのかもしれないし、26℃は夏日だからもっと暑いはず、と思い込んでいたにも関わらず意外と七分袖でちょうどよかったから驚いてしまったのかもしれない。そういうわけで(どういうわけか)、その日から私は26℃がつかめるようになった。

半袖を着ていても少し物足りなければ「あ、今26℃だ」とわかる。でもわかったところで、あとで答え合わせをして(ほらね、やっぱ26℃だったね)と、誰と分かち合えるわけでもなく自分の心の中で小さく満足することしかできない。

今の職場の近くの交差点に、大きな温度計が立っている。今朝、家を出たらすごく気持ちのいい秋晴れで、久しぶりに「あ、今26℃では」と思った。きっとあの温度計も26℃だな〜と思った。

誤差でしょう。温度計は、25℃だった。

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