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【人生】これから海外を目指すキミへ(最後まで読んでください)

シンガポールの高層マンション。窓の外には、マリーナベイ・サンズの影が長く伸びて、プールサイドで日光浴を楽しむ欧米人たちの白い肌が、まるで焼きたてのパンのように輝いていた。

冷房の効いた部屋で、僕はアイスコーヒーを飲みながら、今日の出来事を思い出していた。それは、シンガポールに来てから3年、初めて経験するような、奇妙で、滑稽で、そして少しだけ恐ろしい出来事だった。

事の発端は、いつものように、僕が近所のホーカーセンターで朝食をとっていた時のことだ。シンガポールに住み始めてから、僕はすっかりホーカーセンターの虜になっていた。あの雑多な雰囲気、食欲をそそる匂い、そして何より、信じられないほど安い値段で食べられる美味しい料理の数々。毎朝、ここでカヤトーストとアイスコーヒーを食べるのが、僕のささやかな日課になっていた。

その日も、いつものようにカヤトーストを頬張り、アイス コピ オ コソン(ブラック無糖のアイスコーヒー)をすすっていた。すると、突然、目の前に見慣れない男が現れた。年は40代くらいだろうか。小太りで、顔色が悪く、どこか胡散臭い雰囲気を漂わせる男だった。男は、僕に向かってニヤリと笑いかけると、片言の英語で話しかけてきた。

「ユー、日本人?」

僕は警戒しながらも、うなずいた。すると、男はさらにニヤニヤと笑いながら、こう言ったのだ。

「私、あなたの前世を知っている。」

前世? 僕は耳を疑った。まさか、こんなホーカーセンターで、いきなり前世の話をする男に出会うとは。しかも、相手は胡散臭さ満点の男だ。僕は、この男を相手にしない方がいいと直感的に思った。

「すみません、興味ありません。」

そう言って、僕は席を立とうとした。しかし、男は僕の腕を掴んで、引き止めた。

「ちょっと待って! あなたの前世は、とても偉大な人物だったんだ。聞いて驚かないでくれよ。あなたは、なんと……」

男はもったいぶった様子で、言葉を切った。そして、次の瞬間、信じられない言葉を口にしたのだ。

「マレーシアの初代首相、トゥンク・アブドゥル・ラーマンだったんだよ!」

僕は、思わずアイス コピを吹き出しそうになった。マレーシアの初代首相? 冗談もいい加減にしてほしい。僕は日本人だし、シンガポールに住んでいるとはいえ、マレーシアの歴史には全く興味がない。それに、前世なんて、信じるわけがない。

「そんなわけないじゃないですか。僕はただのベーシストです。」

僕は冷静にそう言った。しかし、男は全く聞く耳を持たない。

「いやいや、あなたは自分の前世を思い出せないだけなんだ。私は特別な力を持っていて、人の前世を見ることができるんだ。そして、あなたを見た瞬間、確信した。あなたは、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの生まれ変わりなんだ!」

男は、まるで宗教の勧誘者のように、熱心に語りかけてきた。僕は、この男がただの変人ではない、何か危ない思想を持った人間かもしれないと思い始めた。ここは、一刻も早くこの場を離れるべきだ。

「すみません、忙しいので。」

僕は、男の腕を振りほどき、足早にホーカーセンターを後にした。しかし、男は諦めずに、僕の後をつけてくる。

「待ってくれ! あなたは、マレーシアの運命を背負っているんだ! 今こそ、立ち上がる時なんだ!」

男の大声に、周りの人々が振り返る。僕は、恥ずかしさと恐怖で、顔から火が出るようだった。こんなことをされたら、もう二度とこのホーカーセンターには来られないかもしれない。

僕は、走って男から逃げようとした。しかし、男も負けじと追いかけてくる。まるで、鬼ごっこをしているような気分だった。僕は、人混みをかき分け、路地裏を抜け、なんとか男を振り切った。

息を切らしながら、僕は自宅マンションに戻った。あの男のことは、早く忘れよう。そう思っていたのに、男の言葉が、頭から離れない。

「あなたは、マレーシアの運命を背負っているんだ!」

まさか、本当に僕がマレーシアの初代首相の生まれ変わりなのだろうか? いやいや、そんなはずはない。僕は、ただの日本人だ。シンガポールに住んでいる、ビールよりアイスコーヒーが大好きな、ただのベーシストだ。

しかし、もしも、万が一、あの男の言葉が本当だったら? 僕は、一体どうすればいいのだろうか? マレーシアの運命を背負う? そんな大それたこと、僕にはできない。

僕は、頭を抱えて、ベッドに倒れ込んだ。すると、突然、部屋の電話が鳴り響いた。

「もしもし?」

恐る恐る電話に出ると、相手は流暢な英語で話しかけてきた。

「Is this Mr. Tanaka? I'm calling from the Malaysian Embassy.」

マレーシア大使館? なぜ? 僕は、心臓がバクバクと高鳴るのを感じた。

「Yes...」

僕が答えると、相手は、落ち着いた声でこう言った。

「We've been expecting you, Mr. Prime Minister.」

Prime Minister? 首相? 僕は、目の前が真っ暗になった。

僕は、マレーシア大使館からの電話を切った後、放心状態でソファに座り込んでいた。「We've been expecting you, Mr. Prime Minister.」 あの言葉が、頭の中でリフレインする。一体どういうことなのか? なぜ、マレーシア大使館は、僕を首相だと思っているのか? 僕は、ただの日本人だ。シンガポールに住んでいる、ビールよりアイスコーヒーが大好きな、ただのベーシストだ。首相なんて、とんでもない。

しかし、あのホーカーセンターの男の言葉と、マレーシア大使館からの電話。この二つが、偶然とは思えない。もしかしたら、本当に僕は、何かとんでもないことに巻き込まれてしまったのかもしれない。

僕は、混乱した頭で、もう一度、あの男の言葉を思い出した。「あなたは、マレーシアの運命を背負っているんだ!」 そして、マレーシア大使館の職員の言葉。「We've been expecting you, Mr. Prime Minister.」

もしも、本当に僕がマレーシアの初代首相の生まれ変わりで、マレーシアの運命を背負っているのだとしたら? 僕は、一体どうすればいいのだろうか? マレーシアに行って、首相になる? そんなこと、できるわけがない。僕は、政治のことなんて何も知らないし、マレー語も話せない。それに、僕は、シンガポールでの生活が好きだ。この街の喧騒、多様な文化、そして、何よりも、ホーカーセンターの美味しい料理の数々。僕は、ここを離れたくない。

しかし、もしも、僕がマレーシアに行かなければ、マレーシアはどうなってしまうのだろうか? 国民は? 経済は? 僕のせいで、マレーシアが混乱に陥ってしまうかもしれない。

僕は、葛藤していた。自分の希望と、マレーシアの運命の間で。一体、僕はどうすればいいのだろうか?

その時、部屋のドアをノックする音がした。恐る恐るドアを開けると、そこには、見慣れない男が立っていた。身長は高く、がっしりとした体格で、黒いスーツを着ている。男は、僕に向かって、にこやかに微笑みかけると、流暢な日本語で話しかけてきた。

「田中様でしょうか? マレーシア大使館から参りました、アフマドと申します。」

僕は、思わず息を呑んだ。マレーシア大使館の人間が、本当に僕の部屋までやって来たのだ。

「どうぞ、お入りください。」

僕は、アフマドを部屋に招き入れた。アフマドは、ソファに座ると、丁寧な口調で自己紹介を始めた。

「私は、マレーシア大使館の外交官です。本日は、田中様にあるお願いがあり、参りました。」

アフマドは、少し間を置いてから、続けた。

「実は、我が国では、最近、奇妙な現象が起きておりまして…」

アフマドの話によると、マレーシアでは、ここ数週間、政府高官や財界の要人が、次々と不可解な行動をとるようになっていたらしい。首相は、突然、公の場で踊り出したり、財務大臣は、全財産を慈善団体に寄付してしまったり、と、まるで人格が変わってしまったかのような行動をとるようになったという。

そして、つい先日、マレーシアの国立博物館に保管されている、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの肖像画が、突然、涙を流したというのだ。この事件をきっかけに、国民の間では、「トゥンク・アブドゥル・ラーマンの魂が、何かを訴えているのではないか?」という噂が広まり、国中がパニック状態に陥っているという。

「そこで、我々は、ある可能性を考えました。もしかしたら、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの魂は、生まれ変わっているのではないか? そして、その生まれ変わりこそ、田中様なのではないかと。」

アフマドは、真剣な表情で、僕を見つめた。

「田中様、どうか、我が国を救ってください。あなただけが、マレーシアを救えるのです。」

僕は、アフマドの言葉に、衝撃を受けた。まさか、そんなことが… 僕は、ただの日本人だ。シンガポールに住んでいる、ビールよりアイスコーヒーが大好きな、ただのベーシストだ。マレーシアを救う? そんなこと、僕には…

しかし、アフマドの真剣な眼差しを見ていると、僕は、自分の運命を、もはや避けることはできないと感じた。

「わかりました。マレーシアに行きます。」

僕は、覚悟を決めて、そう言った。

僕は、荷造りをしながら、これから始まる新たな人生に思いを馳せていた。マレーシア行きを決意してから、大使館のスタッフが慌ただしく動き回り、あっという間にプライベートジェットの準備が整った。まるで映画のワンシーンのようだった。

「田中様、準備が整いました。いつでも出発できます。」

アフマドが、部屋に入ってきた。彼の顔には、安堵の色が浮かんでいた。

「ありがとう、アフマド。君のおかげだ。」

僕は、心から感謝の気持ちを伝えた。

「いえ、田中様。これは、私の使命です。どうか、マレーシアを救ってください。」

アフマドは、深々と頭を下げた。

僕は、スーツケースを引きずりながら、部屋を後にした。振り返ると、見慣れた部屋が、どこか違って見えた。まるで、別れの挨拶をしているようだった。

プライベートジェットに乗り込むと、豪華な内装に圧倒された。広々としたキャビンには、革張りのソファや、大きなスクリーン、そして、バーカウンターまで備え付けられていた。

「田中様、どうぞごゆっくりおくつろぎください。マレーシアまでは、約40分です。」

CAの女性が、笑顔で僕に話しかけてきた。

僕は、ソファに深く腰掛け、アイスコーヒーを注文した。マレーシアでは、どんな生活が待っているのだろうか? 僕は、不安と期待が入り混じった気持ちで、窓の外を眺めていた。

やがて、ジェット機は、チャンギ空港の滑走路を離陸し、夜の空へと舞い上がった。シンガポールの夜景が、どんどん小さくなっていく。僕は、まるで夢の中にいるような気分だった。

マレーシアのクアラルンプール国際空港に到着すると、空港職員たちが、僕を出迎えてくれた。彼らは、一様に緊張した面持ちで、僕に深々と頭を下げた。

「ようこそ、マレーシアへ、田中首相。」

空港職員の一人が、そう言った。僕は、まだ首相と呼ばれることに慣れていなかったが、彼らの真剣な表情を見て、自分の置かれている状況の重大さを改めて認識した。

空港から、首相官邸までは、厳重な警備体制が敷かれていた。沿道には、多くの市民が詰めかけ、僕に向かって手を振っていた。彼らの顔には、期待と不安が入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。

首相官邸に到着すると、マハティール首相が出迎えてくれた。彼は、僕の手を握りしめると、こう言った。

「田中首相、ようこそマレーシアへ。君を待っていたよ。」

マハティール首相は、僕を執務室に案内した。重厚な机の上には、山積みの書類が置かれていた。

「田中首相、君には、これから、マレーシアの首相として、国の舵取りをしてもらいたい。」

マハティール首相は、真剣な表情で、僕に言った。

「しかし、僕は、政治のことは何も知りません…」

僕は、戸惑いを隠せないでいた。

「大丈夫だ。君には、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの魂が宿っている。きっと、うまくやっていけるさ。」

マハティール首相は、僕を励ますように、肩を叩いた。

僕は、深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。そうだ、僕は、マレーシアの運命を背負っているのだ。ここで、逃げ出すわけにはいかない。

「わかりました。頑張ります。」

僕は、決意を込めて、そう言った。

こうして、僕は、シンガポールに住む、ビールよりアイスコーヒーが大好きな、ただのベーシストから、マレーシアの首相へと、華麗なる転身を遂げたのであった。

首相官邸の一室で、僕は、目の前に置かれた山積みの書類を前に、途方に暮れていた。マハティール首相は、「君には、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの魂が宿っている」と言ったが、残念ながら、僕には、前世の記憶も、政治の知識も、ましてやマレー語の能力も、全くと言っていいほどなかった。

「一体、僕はどうすればいいんだ…」

僕は、アイスコーヒーを飲み干すと、ため息をついた。すると、突然、部屋のドアが開き、一人の女性が入ってきた。彼女は、マレーシアの伝統衣装であるバジュ・クロンを着ており、顔には、憂いを帯びた表情を浮かべていた。

「あなたは、田中さんですね? 私は、この国の巫女、シティと申します。」

シティは、僕に向かって深々と頭を下げた。

「巫女?」

僕は、聞き慣れない言葉に、首を傾げた。

「はい。私は、神々の声を聞くことができるのです。そして、神々は、あなたに、重要なメッセージを託されました。」

シティは、真剣な眼差しで、僕を見つめた。

「メッセージ?」

僕は、ますます混乱してきた。一体、何が起こっているんだ?

「神々は、あなたこそ、マレーシアを救う救世主であると告げられました。あなたは、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの魂を受け継ぎ、この国に、再び平和と繁栄をもたらすために、生まれてきたのです。」

シティの言葉は、まるで、古代からの預言のように、僕の心に響いた。

「しかし、僕は、ただのベーシストです。政治のことは、何も…」

僕は、言葉を詰まらせた。

「心配しないでください。神々は、あなたに、特別な力と知恵を与えてくださっています。あなたは、必ず、この国を救うことができます。」

シティは、優しく微笑みながら、僕の手を握った。彼女の温かい手に触れ、僕は、不思議な安心感を覚えた。

「わかりました。僕は、頑張ります。」

僕は、シティの言葉に励まされ、再び、決意を新たにした。

シティは、僕に、マレーシアの歴史、政治、文化、そして、神々の教えについて、詳しく教えてくれた。彼女は、まるで、僕の専属家庭教師のように、熱心に指導してくれた。僕は、シティの教えを、スポンジのように吸収していった。

数日後、僕は、マレーシア国民に向けて、就任演説を行うことになった。首相官邸の大ホールには、多くの政府関係者や報道陣が集まっていた。僕は、緊張しながらも、壇上に立った。

「国民の皆さん、私は、田中と申します。シンガポールから来ました。私は、この国の初代首相、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの魂を受け継ぎ、マレーシアの首相に就任いたしました。」

僕は、深呼吸をして、ゆっくりと語り始めた。

「私は、政治の経験はありません。しかし、私は、この国を愛し、国民の皆さんを幸せにしたいという強い気持ちを持っています。私は、全身全霊を込めて、この国の発展のために尽くすことを誓います。」

僕の言葉は、国民の心に響き渡った。会場からは、大きな拍手と歓声が沸き起こった。

こうして、僕は、マレーシアの首相としての第一歩を踏み出した。それは、まるで、未知の世界への冒険の始まりだった。

首相就任から数週間が経った。慣れない公務に追われ、毎日がめまぐるしく過ぎていく。マレーシア国民の期待を一身に背負い、僕は、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの再来として、国政に邁進していた。

シティの指導のおかげで、僕は、マレー語をマスターし、政治の知識も深めていった。また、首相としての風格を身につけるため、服装や立ち居振る舞いにも気を配った。かつての、シンガポールに住む、ビールよりアイスコーヒーが大好きな、ただのベーシストの姿は、そこにはなかった。

しかし、首相としての仕事は、想像以上に困難を極めた。国内では、経済の低迷、民族間の対立、汚職問題など、山積する課題が待ち受けていた。国際社会では、隣国との領土問題、イスラム過激派のテロの脅威など、対応に苦慮する事態が続発した。

僕は、毎日、膨大な量の資料を読み込み、閣僚や官僚たちと議論を重ね、政策を決定していった。時には、厳しい批判にさらされ、眠れない夜を過ごすこともあった。それでも、僕は、決して諦めなかった。なぜなら、僕は、マレーシアの運命を背負っているのだから。

ある日、僕は、国民との対話集会に出席した。会場には、様々な民族、年齢、職業の人々が集まっていた。彼らは、僕に、様々な質問を投げかけてきた。経済問題、教育問題、環境問題、そして、僕の政治姿勢について。

僕は、彼らの質問に、一つひとつ丁寧に答えていった。時には、厳しい意見や批判も浴びせられたが、僕は、真摯に耳を傾け、自分の考えを伝えた。

集会が終わった後、一人の老人が、僕に近づいてきた。彼は、涙を流しながら、こう言った。

「首相、あなたは、トゥンク・アブドゥル・ラーマンの再来です。あなたは、この国を救ってくれるでしょう。」

老人の言葉に、僕は、胸が熱くなった。僕は、自分がマレーシア国民から、どれほどの期待を寄せられているのかを、改めて実感した。

「私は、必ず、この国を救ってみせます。」

僕は、老人の手を握りしめ、力強くそう言った。

首相としての日々は、挑戦の連続だった。しかし、僕は、決して孤独ではなかった。シティは、いつも僕のそばにいて、支えてくれた。彼女は、僕の心の支えであり、最高の相談相手だった。

そして、マハティール首相をはじめとする、多くの閣僚や官僚たちも、僕を支えてくれた。彼らは、それぞれの専門知識や経験を生かし、僕をサポートしてくれた。

僕は、彼らと共に、様々な困難を乗り越え、マレーシアを、より良い国へと導いていくと決意した。それは、シンガポールに住む、ビールよりアイスコーヒーが大好きな、ただのベーシストだった僕には、想像もできなかった未来だった。

首相としての日々は、慌ただしく過ぎていった。気がつけば、就任から一年が経とうとしていた。その間、僕は、様々な改革を断行し、マレーシアは、着実に変化を遂げていった。経済は回復の兆しを見せ、民族間の対立も沈静化し、汚職も減少した。国民の生活は、少しずつだが、豊かになりつつあった。

国際社会においても、マレーシアは、重要な役割を果たすようになっていた。僕は、各国首脳と会談を重ね、国際的な課題解決に貢献した。かつて、シンガポールで、ベースを弾いていた自分が、世界を舞台に活躍しているとは、夢にも思わなかった。

しかし、首相としての重圧は、決して軽いものではなかった。常に、国民の期待に応えなければならないというプレッシャー、政治的な駆け引き、そして、テロの脅威。僕は、心身ともに、疲弊していた。

そんなある日、僕は、シティに、シンガポールに戻りたいと打ち明けた。

「シティ、僕は、もう疲れたんだ。首相の仕事は、僕には荷が重すぎる。僕は、シンガポールに戻って、また、ベーシストとして、自由に生きたい。」

シティは、静かに僕の話を聞いていた。そして、優しく微笑むと、こう言った。

「田中さん、あなたは、よく頑張りました。あなたは、マレーシアを救ったのです。もう、十分です。あなたは、自分の好きなように生きていいのです。」

シティの言葉に、僕は、涙が溢れてきた。僕は、シティに抱きしめられ、子供のように泣きじゃくった。

翌日、僕は、首相辞任を表明した。国民は、驚き、悲しんだ。しかし、僕は、自分の決断に後悔はなかった。僕は、マレーシア国民に、感謝の気持ちを伝えた。

「国民の皆さん、私は、今日、首相を辞任いたします。短い間でしたが、皆さんと共に過ごした日々は、私の人生にとって、かけがえのない宝物です。私は、マレーシアを愛しています。そして、これからも、ずっと、マレーシアを応援しています。」

僕の言葉に、国民は、涙を流して拍手喝采を送ってくれた。

僕は、マレーシアを後にし、シンガポールに戻った。高層マンションの、見慣れた部屋に戻ると、安堵感に包まれた。僕は、窓の外を眺めながら、アイスコーヒーを飲んだ。それは、格別な味がした。

僕は、再び、ベーシストとしての人生を歩み始めた。ライブハウスで演奏したり、作曲活動をしたり、音楽仲間と交流したり。シンガポールでの生活は、以前と変わらない、穏やかなものだった。

しかし、僕の中には、マレーシアでの経験が、深く刻まれていた。首相としての経験は、僕の人生観を大きく変えた。僕は、世界を見る目が変わり、人との関わり方も変わった。そして、何よりも、自分自身の可能性を信じることができるようになった。

ある日、僕は、シンガポールの街角で、ストリートミュージシャンが演奏しているのを見かけた。彼は、ギターを弾きながら、歌っていた。その歌は、マレーシアの民謡だった。

僕は、足を止め、彼の歌に聞き入った。彼の歌声は、力強く、そして、どこか哀愁を帯びていた。それは、マレーシアの魂の歌だった。

僕は、彼の歌を聴きながら、マレーシアでの日々を思い出していた。シティのこと、マハティール首相のこと、そして、マレーシア国民のこと。

僕は、マレーシアで、多くのことを学び、多くのことを経験した。それは、僕の人生にとって、かけがえのない財産となった。

僕は、これからも、マレーシアを愛し続け、マレーシアの人々との絆を大切にしていきたい。そして、いつか、また、マレーシアの地を踏みたい。

シンガポールの高層マンション。窓の外には、夕陽が沈み、空が茜色に染まっていた。僕は、アイスコーヒーを飲みながら、未来に思いを馳せていた。それは、希望に満ちた未来だった。

みたいなことは起こらないので、安心して夢見る海外移住を実現させてください。あと、もう一つ大切なことがあるとすれば、それは僕の苗字が田中でないということかもしれないし、あるいはそうではないのかもしれない、ということです。

でも、たとえ冗談であったとしても、これくらい本気でやる気合いは、快適な海外生活を送るうえで必要なのかもしれません。

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