【キャリア】海外就職/転職で重宝する英語以外のサバイバルスキル(後編)
シンガポールの高層マンション。目が覚めると、窓の外には巨大なドリアンが空を飛んでいた。熟れたドリアンの強烈な香りが街中に広がり、窓を閉め切っていても部屋の中にまで漂ってくる。一体どういうことだ?僕は目を疑いながら、ベッドサイドに置いてあった昨夜の飲み残しのアイスコーヒーを一口飲む。なんだ、夢か。冷たくて苦い液体が、僕の眠気を覚ましてくれる。
僕はシンガポール在住の日本人ベーシスト、そして本業ではグローバル企業のエンジニア部門をまとめる窓際オンライン部族だ。そして、生粋のアイスコーヒー党なのだ。シンガポールの灼熱の太陽の下、キンキンに冷えたアイスコーヒーを流し込む。その瞬間、脳みそがキューッと収縮し、全身に電流が走るような感覚。これがたまらない。
さて、前回はグローバル社会で生き残るためのスキルについて語ったが、今回はさらに一歩踏み込んで、具体的な戦略について考えてみよう。日本でも海外でも、ビジネスパーソンには働く時間には限りがある。限られた時間の中で、周りから求められる期待値をどのように満たすのかが、成功の鍵と言えるだろう。そこで重要になるのが、日本とグローバルな社会で求められる期待値の違いを理解すること、そしてその環境で求められている期待値を満たすための戦略を持っていることだ。
戦略①:継続的なインパクト
日本でも同じだと思うが、グローバルな社会においても成功するために最も必要なのは実績だ。一般的には、実績がないとレイオフの対象になりやすかったり、居場所がなくなると考えられがちだが、ここで強調したいのは1回だけの大きな実績ではなく「継続的なインパクト」だ。より具体的に言うと、毎年1年間で達成する実績が生き残るために非常に重要なのだ。
例えば、あなたと同僚が人員削減の対象となった場合、どちらが生き残れるか考えてみよう。上司の立場からすると、人員削減の理由ではなく、どちらが今後も活躍できそうであるのかについての理由が求められる。特に、具体的な直近の実績を伝えることが重要で、「昨年は▢▢を達成し、今年は△△に挑戦している」と説明できるかどうかが重要だ。「何でも卒なくこなす」という一般的な表現より具体的なインパクトを示せる方が生き残りやすいだろう。
僕は毎年「2-3個の注力プロジェクト」を決め、そのプロジェクトに時間と手間をかけている。計画を立て、途中経過の報告やそこからくるフィードバックと方向転換、成果物への期待値設定などを入念に準備し、プロジェクトを成功に導くよう努める。まるで、ジャングルの奥地に眠る秘宝を探し求める探検隊のように。もちろん、注力プロジェクト以外にも日常業務はあるが、その中で時間を工夫して自らが定めた注力プロジェクトを押し進める。
この取り組みには理由がある。それは、日常業務以外での実績を他国にアピールし、グローバルでの自分のエリアの貢献度を示す材料として利用するためだ。また、上司が組織や部下の活動内容を具体的に話す際にも、僕の活動は重要な話のネタになる。個人や監督する部門の貢献が明確に伝えられ、昇進や昇格の際にはその理由としても役立つ。つまり、生き残るためには一撃必殺的な特大の実績だけではなく、毎年継続して出し続けるインパクトの方が遥かに重要なのだ。まるで、熱帯雨林の植物のように、常に新しい葉を芽生えさせ、成長し続けることが求められるのだ。
戦略②:良好な人間関係の構築
長いキャリアを積んでいく中で、スキルが高い一方で人間関係の構築が苦手な方に出会うことがある。例えば、「これは私の職務範囲ではないからやらない」「これは私が入手した情報だから共有できない」といった協力的でない態度や、特定の情報を囲い込むことで組織全体の成功を阻害する行動が挙げられる。まるで、自分の巣穴に宝物を隠して守る、洞窟に住む竜のようなものだ。
外資系企業では競争が激しく、自分が生き残るためには他の同僚との競争が避けられない、という印象があるかもしれない。しかし、成功して生き残る企業ほど、チームワークや組織文化を大切にし、尖った個人ではなく、チーム全体で成功できる人材を評価する。まるで、複雑なリズムを刻むサンバ隊のように、それぞれの楽器が調和してこそ、美しい音楽が生まれるのだ。
このような場合、まず第一に自分の仕事に影響がない範囲で、多少のボランティアを受けることで、助け合える仲間が増え、周りとの良好な関係を築こことができるかもしれない。まるで、砂漠を旅するキャラバン隊のように、お互いを助け合うことで、過酷な環境を生き抜くことができるのだ。またそのような仲間は将来の転職活動時にもサポートしてくれる可能性も高まる。
一方で、陰口や暴言、ネガティブ発言など行動に問題のある印象のよくない人は、たとえ現在の職場での影響が少なかったとしても、転職時などに行われる知人の聞き込み調査(バックグラウンド調査)で足を引っ張られることが往々にしてある。まるで、美しい蝶の羽に隠された毒針のように、その人の本質が露わになった時に、周りの人は離れていってしまうだろう。
企業文化を重視する会社ほど、新しいメンバーの受入時にはバックグラウンド調査を入念に行うため、一時の過ちが一生の過ちにならないよう、日頃から責任ある行動を心がけることが重要だ。大切なことは「イエスマンになること」ではなく、また一緒に働きたいと思ってくれる仲間を増やすことだ。周りを納得させられる理由があるのであれば、時に「No」があってもかまわない。心理的安全性が保たれた場所で苦労を共にした仲間たちは、たとえ予期しないレイオフなどに見舞われたとしても、あなたがピンチのときにきっと助けてくれるだろう。まるで、嵐の海で遭難した時に、助けの手を差し伸べてくれる仲間のように。
戦略③:上司からの信頼
グローバルな社会でキャリアを築くために、そして生き残るためにも、あなたの上司との関係は極めて重要だ。ここで言う「関係」は、単なるお世辞や上司へのごますりではなく、むしろ上司があなたを必要な人材として認識することを指す。
たとえば、1:1の会話ではいつも笑顔であり、どんな依頼にも「Yes」と答えながらも、その裏で仕事や上司に対する不満を漏らし、組織に悪い空気を広げるような態度は絶対に避けなければならない。まるで、甘い蜜を吸いに来た蜂のように、一見害がないように見えても、実は毒針を持っているようなものだ。
年功序列の環境であれば、このような態度でも少しずつ昇進していくことができるかもしれない。しかし、グローバルな社会ではそのような態度の人材は何らかの理由で切り捨てられる、もしくは人員削減の対象になる可能性が高まる。極端なことを言えば、人事権は上司が持っている。もちろん、好き嫌いで判断するような監督社の特権乱用は通用しないが、残念ながら活かすも殺すも日常のほんの些細な行動で決まると思っていたほうがいい。この点においては、もしかしたら日本企業より露骨かもしれない。まるで、熱帯雨林の激しい生存競争の中で、周りの環境に適応できない植物は、やがて枯れてしまうように。
逆に、上司からの依頼には全てに「Yes」ではなく、時には明確な理由を添えて「No」と言える姿勢や、最適な方法を臆することなく提案できる柔軟性、異なる意見を提示したり、不安や不満を不安や不満としてではなく改善点として建設的なフィードバックができることは、上司からの信頼を得る上で非常に重要だ。まるで、ジャングルの奥深くで、危険な動物たちと対峙しながらも、冷静に状況を判断し、適切な行動をとる探検家のように。
確かに生き残りを意識することも重要だが、攻撃は最大の防御であるのと同じで、信頼を獲得し自己成長をし続けることも生き残るための大きな理由となる。
グローバル社会で生き残るための秘訣
以上、グローバルな社会で成長しながら生き残るために意識しておくべき戦略について、可能な限り生々しい経験談を含めていくつか紹介した。ポイントは、あなたが組織にとって必要な存在であることを継続的に示すこと、そして一緒に仕事をする仲間や現在のキャリア継続の生命線とも言える上司から信頼を得ることだ。
自分が組織にとって必要な存在であるかどうかを判断するのは自分ではなく一緒に働いている仲間や上司であることを念頭に置きながら、現職だけでなく将来のビジネスパートナーとなれる仲間を多く増やしておくことがグローバルな社会で生き残る秘訣となるだろう。まるで、広大な海を航海する船のように、様々な人と出会い、協力し合いながら、目的地を目指していくのだ。
キャリアを築くということ
今回は、最近注目を浴びているグローバル企業の大規模な人員削減時代において、僕たち日本人がどのように生き残り、成功するかに焦点を当て、そのノウハウについてnoteにまとめてみた。
僕がこの内容を書いた本人だからといって、僕がどんな時代でも生き残ることができるということは全くない。むしろ僕自身も常に「自分のキャリアをどう築くか」「キャリアを(レイオフなどで)中断されないようにする方法」を模索し、もしもの時に備え、海外での生活を維持するための情報を蓄えつつ、信頼できる仲間のサポートを得ながら今日を生きているという現実がある。先日、もしもレイオフされてしまった場合の身の振り方もnoteにまとめたのでよかったら参考にしてほしい。
僕は、国内外でのグローバルテック企業での20年間以上の経験から、ビジネス書籍には書かれていない独自の生き残り術を見てきたのかもしれない。幸運なことに、その生き残り術によって、海外生活が10年くらいになる今日現在も、僕はこうして生き残ることができている。
僕は学生時代に努力しなかったことは否定しないし、意識的にグローバル企業に就職したわけではない。気が付いたらグローバルでキャリアを形成していただけだ。
僕はそんなどこにいるような日本人ではあるが、それでも大手外資系テック企業でのキャリア形成において意識してきたポイントがある。それは「3−5年ごとに、キャリアの一部を大きく変えること」だ。具体的には、以下のいずれかを3年に一度変え、挑戦し続けることをおすすめしている。
環境(働く場所、所属部門、居住国など)
役割(個人貢献者、ジェネラリスト、スペシャリスト、マネジメントなど)
専門性(技術カテゴリ、製品カテゴリ、専門知識やスキルなど)
これによって、変化する部分が3年に一度のチャレンジとなり、将来のキャリアの選択肢が増えることにつながる。
例えば、営業からマーケティング、そして管理職へと進む方と、営業からシニアな営業に至る方では、将来のキャリア選択において異なる選択肢が生まれるだろう。僕はこれを「キャリアバケット」と呼んでおり、バランスを保ちながら大きくなったキャリアバケットは、様々な要件を柔軟に受け入れやすくし、結果的に将来の選択肢を広げることができると信じている。
キャリアバケットには決まった型や正解があるわけではない。専門性を深めた攻撃力の高いロトの剣のようなキャリアバケットでもよいし、様々な職種やビジネスを経験することで広がるドラム缶のようなキャリアバケットでもかまわない。他人と一緒でなくて構わない。あなた自身のキャリアバケットを育てていくことが重要となる。
帰国子女でも大金持ちのサラブレッドでもない僕達は、外資系企業や海外法人で働いてグローバルな社会でキャリアを積むことで、日本では見られない多様で魅力的なキャリアバケットを作り上げることができるかもしれない。これが、日本から海外に飛び出す最大の醍醐味だと僕は信じている。
おわりに
グローバル社会を生き抜くための戦略、そしてキャリアを築くということについて、僕の経験を交えながら語ってきた。まるで、夜のジャングルで焚き火を囲み、旅の仲間たちに語りかけるように。
グローバル社会は、時に厳しく、容赦のない場所だ。しかし、同時に、多様な文化や価値観に触れ、自分自身の可能性を広げることができる、魅力的な場所でもある。
最後に、シンガポールで出会ったある老人の言葉を贈ろう。「人生は、まるで川の流れのようなものだ。流れに逆らうのではなく、流れに身を任せ、柔軟に生きていくことが大切だ」。グローバル社会を生き抜くためのヒントは、案外、身近なところにあるものなのかもしれない。
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