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投資・資産運用は「不労所得」なのだろうか?
お金の本を読んでいて、ハッとしたことがありました。
日本人の多くは「投資の儲けは不労所得と思い込んでいる」、というくだりです。
みなさんはどう思いますか?
私も、投資は不労所得のような意識があったと思います。
あまり深く考えたこともなかったかもしれませんが、確かに「汗水垂らして労働した対価」として受け取る給料や報酬と違い、「お金をこっちからあっちへ」動かすだけで利益が得られるのは、不労所得と言ってよさそうに思えます。
それどころか、自分自身で株や為替などを、その都度「売り買い」すらせずに、最初に一度設定だけしておいて、あとはほったらかしで勝手に利益が積み上がっていく投資スタイルだと、さらに不労所得の色が濃いですね。
投資は「お金に働かせる」という表現もよく見かけます。
それはすなわち、人間=お金の持ち主は「働いていない」ってことになり、そういう意味でも不労所得と言って不自然ではない気がします。
働くとは何ぞや?
「投資の儲けは不労所得」というのは思い込み、という根拠について。
「不労」というからには、その逆の「働く」の定義を改めて考えなおした方がいいかもしれません。
人間が「働く」ということを思い浮かべると、「商品を作る」「販売する」「宣伝する」「事務処理をする」「研究開発する」「客にサービスする」などが、いわゆる「仕事」のイメージですよね。
人が実際に時間を使って手や頭を動かして、何らかの生産物や価値を生み出す、ということになるかと思います。
では、経営者(=社長)は、何をやっているのでしょうか。
「作る」「売る」などの直接的な実務はやっていませんよね。
忙しそうではあるけど、何かの作業を長時間かけてやってるようにも見えなかったりします。
それでも、一般的には会社内で最も高い報酬をもらっているはずです。
投資家は経営者と同じ
経営者(=社長)の仕事とは何でしょう?
それはつまり、
・判断、決断すること
・その判断、決断の責任を取ること
と言うことができます。
一般社員は、会社の業績が多少上下しても、毎月一定の給料はもらえます。
会社が赤字になったからと言って、給料がゼロになったり、逆に会社にお金を納めないといけない、なんてことはありません。
(賞与が業績に連動する場合、金額は変わるかもしれませんが)
その意味では、責任もリスクも極めて小さい、と言えます。
しかし、経営者であれば、業績にすべての責任を負う必要があり、言い換えると、「大きなリスクを取っている」ということです。
売上や利益などの業績はもちろん、そこで働く多くの社員、およびその家族の人生にも責任を持っているので、その重責は相当大きいです。
言い換えれば、そのリスクや重圧に対する報酬が、社長の報酬ってこと。
投資家も、実は経営者と同じ。
経営者が、経営資産(ヒト、モノ、カネ)を、どのように最適に配分し、効率的に、より大きな売上や利益を上げていくかを考えるのが仕事だとすると、投資家も自分が持っているお金をどう配分して利益を出すかを考えるという意味では同じことをやっています。
ハイリスクか、ローリスクか、拡大思考か(100万円を1億円に)、安定志向の最適経営か(毎年○万円を維持)など、人それぞれで経営戦略が異なるのも、会社経営に似ていますね。
投資家=経営者。
「自分のお金」という社員を働かせる社長、と考えると、「投資の儲けは不労所得」という認識とは、全く違った視点で見えるようになりますね。
頭の中で汗をかきかき、決断して、リスクを取って、時には失敗をして、経営を維持していく、というのは全然「不労所得」じゃなさそう、って話でした。