最愛なる堕天使 - 第3章 苦渋の決断
yoshiです。今回も、元カノストーリーの続きです。初めて別れの危機に直面し、運命の時を迎えようとしています。早速、今回が最終回になるかもしれません。
ーーー 幸せ満点の1~2ヶ月から一変。彼女の言う「黒歴史」は、俺を一瞬にして絶望の淵へと突き落とした。俺にとって最も受け容れ難い「他の男の存在」。それを受け容れるか受け容れないか。俺の葛藤はまだ収まるわけもなく、彼女の待つカラオケへと向かう。
ちなみにこのカラオケは、卑猥な行為をしまくって注意されたカラオケとは別のお店だ。ほぼ別れ話をするような雰囲気で集合したが、そのわりに彼女は俺が希望した「ツインテール」と「丸眼鏡」で待っていた。
俺たちは、今後の関係について話し合った。
ーー 周囲に全然打ち明けていない関係
ーー カラオケでしか会えない関係
ーー そんなカラオケで注意されてしまったこと
そして何よりも、俺が彼女の黒歴史を背負っていける自信がない。話が進むにつれて、空気が重たくなっていく。俺は、どうしても「他の男」の存在を許せない。例え今は俺のことだけを愛しているとはいえ、他の男のために、俺にも見せたことのない涙を毎晩流し、食事が喉を通らないほど想っていたのだから。
だがここで迷っていても、空気は重くなるばかり。考えれば考えるほど、俺も彼女も辛くなる。俺は腹を決め、彼女に告げた。
俺の答え、それは
ーー 「君を手放すことはできない」
彼女は初めて、俺の前で涙を流した。つられて俺も、涙を浮かべる。
運命とは非情なもの。だが、非情なだけではない。運命とは、不可解で、気まぐれで、とても面白いものだ。
俺は見事「黒歴史」を背負う、本当の覚悟を決めた。
カラオケで会うのが難しくなったことについては、その後も話した。俺は親に話したのでいつかは俺の家に来ることが可能だ。しかし俺の家は遠い、実は彼女と俺は少し遠距離だった。電車で2時間くらいかかる距離だ。俺の通っている学校も彼女側だったので、いつも会うときは彼女側の地区だった。
一方、彼女の家は難しいらしい。前にお姉さんが彼氏を連れて来た時、ご両親とその彼氏があまり合わなかったらしく、それ以来俺と会うのも躊躇っているとのこと。
このことから、彼女はおばあちゃんの家に連れていくことを提案してくれた。おじいちゃんとおばあちゃんに俺を紹介してもらい、これからはその家で会うことにした。ついに俺はそこで童貞を捨てることができるのだろうか。期待が膨らむ。
ーー その日のカラオケ会議は、そのままフ○ラをさせて終了
後日、おばあちゃんの家に行く予定を取り付けた。その日は偶然にも、おばあちゃんが出かけているらしく、基本二人きりで会うことができるらしい。俺は、この日が童貞卒業の日だと言わんばかりに、学校の帰りにコンビニで初めてコンドームを買ってから向かう。
しかし、また悲劇が起きる。なんとちょうどその日に「例のアノ日」がやってくる。俺はその事実を、会ってから彼女から直接告げられる。
彼女「今日は生理だから、やっぱりできないわ...」
俺は軽くショックを受け、不機嫌になる。
俺「え?わざわざゴム買って来たのに、なんだよ」
だが、彼女は逆ギレし始めた。
彼女「私だってなりたくてなってるわけじゃないんだから、そんな文句言わないでよ」
次第に空気は悪くなり、また喧嘩だ。こんなことはこの先もしょっちゅう起こる。今となっては女の「生理事情」なんて考えさせられることもないが、この時は生理というものの重さを身をもって解らされていた。
彼女は生理の影響が顕著に現れる。生理がくる度に暴飲暴食、吐き気、腹痛、そしてとにかく鬱になる。だから俺はそれに振り回されていた。彼女との大きな喧嘩は月に一回必ず訪れる。これが何を意味しているか、察しの良い読者であればすぐにわかるだろう。
ちょっとしたことで彼女が暴走する。そして鬱になる。俺のキレ方はというと、いじけたように無口になる。大きな喧嘩になるたび、俺たちは別れそうになる。でも結局最後にはどちらかが謝りまくる。「お願い私を捨てないで」と泣いて言うか、泣いて言われるか。俺が冷たい時は彼女が全力で非モテコミットし、彼女が冷たい時は俺が全力で非モテコミットする。お互いがジェットコースターに乗せ合っていたわけだ。
だがこれを1年2年と繰り返しているうちに、俺はだんだんとわかって来た。「相手をしなければ良い」ということに気づいた。しかもそれは、俺が楽になるというだけでなく、彼女にとっても楽になれる、まさにWin-Winの対応だった。
実際に、彼女の口からも「うるさいうざい、話かけられたくない、でも返信がないのも嫌だ、構ってほしい」と意味不明なことばかり言われていたのだ。
そしてたどり着いた結論は「返事はするが、適当で良い」。俺が気にすればするほど、それはお互いにストレスとなる。だから彼女の生理がきたら、彼女の病みトークは「あ、生理が来たんだな」くらいに受け止めて聞き流そうと。それからはかなり楽になった。だがやはり、愛する彼女のことだ。めちゃくちゃ重たくて辛そうな生理には向き合いたい。
俺は彼女のために、色々調べた。「生理中の彼女には特に優しくしろ」と書いてある記事を鵜呑みにし、生理の不調を乗り越えるべく、知見をひたすら集めたりもしていた。極め付けには、彼女の毎日の体調を日記形式で勝手に管理したりもしていた。
彼女への愛がとてつもなく強かったこと、この日記からわかるだろう。まあこの日記は見た感じ1~2週間くらいでやめていたが。俺は彼女を幸せにしたい。彼女のことを想っていた。
普通の男は、自己満足だ。「彼女のことが好きだ!離れられたくない!このまま続くといいなぁ!!!」と願って終わる。
やるとしても、彼女を喜ばせるために、ネットでこんな検索をし始める。
ーー [ 彼女 喜ばせる プレゼント ]
ーー [ 彼女 デート サプライズ ]
ーー [ 彼女 浮気されない ]
だが俺は、キチガイだ。「彼女を愛してやまない、俺以外の男に見向きをさせるわけにはいかない、生涯をかけて俺のものにする、だからこそ、俺が幸せにしなければ意味がない、他の男に幸せにされたくない、俺が死んだ後でも同じだ、彼女は他の男の手に渡ってはいけない、俺が死んだら彼女にも後を追ってもらわなければいけない」
俺が目を張って読み続けていたネット記事はというと。
ーー [ 彼女 依存させる ]
ーー [ 人間 幸福 本質 ]
ーー [ 宗教 洗脳 手法 ]
こんなものばかりだ。一般人からすると相当怖いと思うが、これが俺という人間だ。
俺について、だんだんとわかって来たと思う。俺はただの非モテではなく、独占欲が半端なく強く、サイコパスで、キチガイで、一人目の彼女から、人知を超えた恋愛をしようとしていたのである。
例えば宗教では、なるべく外部の情報をシャットアウトし、自分たちの教えをひたすら信者に叩き込む。外部からの雑念があると、信者は惑わされてしまうため、とにかく外部への干渉をなくすことが大事だと書いてあった。
だから俺は、速攻で行動に移した。彼女はツイッターで「黒歴史」を持っていたため、まずはツイッターを禁止した。健全に運用していたリア垢も含め、ツイッターを見ることも禁止した。最終的にはどうしても我慢の限界と言われ、俺もログインできる状態で新しいアカウントを作らせたが、1年くらいはやめさせていたと思う。
もちろん、彼女はもう裏垢をやらないだろう、そしてリア垢にもほぼ男友達はいない。だが、例え女友達の情報でも、雑念が入れば俺色に染め上げることはできない。女友達が彼氏との思い出をあげていれば、それがカップルの常識だと思ってしまうかもしれない。俺はそれを避けたかった。喋りの上手い男を見せるのも、イケメンを見せるのも、とにかく俺よりも秀でた人物がいる現実から、少しでも目を背けさせたかった。
次に、インスタを禁止した。最終的には彼女のやることがなくなりすぎて死にそうになっていたので、すぐに解禁してしまったが。インスタで友達と遊ぶ予定とかを話すという言い訳もあったが、それもLINEでいいだろとお構いなしに消させた。
最後に、LINEの男友達を消させた。男友達はほとんどいなかったが、例の裏垢時代にやりとりしていた男の連絡先が残っていたので、容赦無くブチギレて消させた。
彼女がツイッターやインスタをやっていないか、LINEの男友達を全て消しているかは信用する以外に何もできない。だが、俺は信用していた。LINEは実際に見せてもらっているし、スマホも会った時はくまなく調べることができる。もちろんスマホを見られるのは彼女公認だ。だからおそらく大丈夫だったと思う。
だが、彼女の日常には干渉できない。電車で2時間の遠距離であったし、学校終わりに会おうとしてもバスの終電が早いため、18時には別れなければいけない。学生の恋愛とはいえ、会うことはそう容易ではなかったのだ。
彼女を直接監視できない時間が多い。それが仇となり、男関係の修羅場は数回あった。俺の怒りようといったら、それはもう尋常ではない。だがそれは、愛ゆえだ。初めてできた彼女は、俺にとって神聖であり、初めての恋愛は、本当に幸福に満ちていた。隣で寝るだけで幸せだったし、何もしなくても良い、何も喋らなくても良いから、ただ顔を見つめ合うだけでも大切な時間だった。だからこそ、そんな存在を、そんな笑顔を、他の男に共有したくなかった。
俺にとって浮気の基準はセックスではない。会うだけでも、話すだけでも、あり得ないほどにブチギレていた。
次回は、彼女が男と関わって俺をブチギレさせた、「男関係の修羅場」をいくつか紹介しようと思う。いかに俺の束縛が強く、男関係の沸点が低いか、君たちは思い知ることとなる。
彼女は俺が幸せにする
いや、俺にしか幸せにできない
だからこそ、彼女は俺から離れてはいけなかった
yoshi