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監査役なんて仕事でも

あまり大きな声で言えないが、私は監査役という仕事が好きではない。

最大の理由は「執行側ではない」からだ。

34年間会社で事業に携わり、うち25年は経営に関する仕事をしてきた。

事業成長、業界ポジションのアップ、ブランド強化、ガバナンスの強化、執行体制の強化など会社をいかに良くするかという思考が染み付いてしまっている。

このテーマの天職だと思える瞬間など今の役職では期待していなかったが、今日、それに反することが起きてしまった。

M専務(本部長委嘱)と懇談をした時のことだった。

10/1付でM専務の直下の副本部長に、本部内の2つの組織の「担当役員」のポジションが与えられた。

M専務としては社長から「こうするから」と言われたのみで、取締役会に諮られ承認された。

その本部の事業全体の担当役員はM専務だが、一部は副本部長が担当役員でもある。

一般的には考えにくい役員人事であり、部下たちが混乱することは誰もが想像する。

とは言え、監査役としては余程常識を外れた意思決定でない限り、取締役社長の業務に口出しするつもりはない。

今日はM専務から本人の心境や周りの反応を聞いておこうかと雑談気分で話し始めた。

その件に話を持っていくも、はぐらかすように事業方向性の話になった。

「成長戦略が描きにくく、それは他社も同様で皆同じ感覚だ」「それをカバーするために、以前採算性が良くないため撤退した周辺事業をもう一度やる」という内容だった。

否定はしなかったがそれは戦略として評価されず、成果にも繋がらないと感じた。

そこから私の悪いクセが出てしまった。「監査役としてではないですが…」

現状のデフレの常態化と連動しているかのような、低価格化とコスト競争力強化を追求しているビジネスから、国内最高級のサービスレベルと高価格のプロジェクトを理想形として打ち出し、それをメインブランド化すること。

そのブランド以下のプロジェクトは当社の意思でできるところまで対応すれば、たとえダウンサイズしても納得できること。

社内においても目指すべき理想形に向かい社員が夢を持って仕事に取り組めること。

これらをベトナムでの経験と実践を交えて語ってしまった。

抑えてるつもりだが自然と熱が入る。

私の予想では「そんな理想を言っても…」と返ってくるかと思ったが、それまでの暗く険しい表情が、明るく柔らかくなった。

「そうだよ!高級路線でやりたいよ…」から始まり私以上に語られてしまった。

その後には、最初に聞きたかった先の役員人事に関しても心境含めて話してもらった。

私は何かを与えたようだが、「私がベトナムで推進していたことを日本でもやったらどうですか」と言ったまでである。

何かしらの発想の転換や新たな糸口を伝えることで、その人の頭上に立ち込めていた雲が一気に晴れ、希望を見出した表情が垣間見える時!

たとえ好きではない監査役の仕事でも、「こういうのやっぱり自分に向いているかな」と思ってしまうのである。

でもやはり、自分の力で事業を成し遂げる仕事は面白い。

転職かな(笑)


#天職だと感じた瞬間

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