絵に描いた餅で終わらせない!B2Bマーケティングに役立つ実践的なペルソナ作成法
みなさん、こんにちは。
予実管理のスタートアップDIGGLEの瀬川(@motoy0shi)です。
ペルソナを作ったものの、現場で活用されない…。
みなさんは、こんな経験はありませんか?
私も前職がマーケティングのコンサル的な仕事をしていて感じていたのが、ペルソナのコレジャナイ感でした。作ってみても、どこか絵に描いた餅のようで、現実味がない。それゆえ一生懸命つくったとしても、あまり活用されず、作っただけで終わってしまう…。そんなことが多くありました。
そこで今回の記事では、自身の経験を踏まえて、B2Bマーケティングにおける実践的なペルソナの作り方について具体的に紹介します。B2Bマーケティングに携わるみなさんに、少しでもお役に立てば嬉しいです。
ペルソナとは?本記事における定義と役割
この記事を始めるにあたり、ペルソナの定義を確認しておきましょう。この記事では、ペルソナの定義を「典型的な顧客の特徴を持つ、半架空の人物像」としています。
ここで重要なのは「半架空の」人物像である点です。完全な架空でも、現実にいる顧客でもダメなのです。なぜならば、完全な架空だと、企業側の「こんなお客様がいたら嬉しいな」という願望になってしまい、実効性がなくなってしまうからです。一方で、現実にいる顧客では、具体的すぎて特徴が偏ってしまう危険性があるからです。
ペルソナは、マーケティングの施策を考える上で拠り所となるものです。だからこそ、データに基づき、よくある顧客の特徴を持った、半架空の人物像であることが重要なのです。
ペルソナがマーケティングチームにおける"共通言語"となる理由
では、なぜペルソナが重要なのでしょうか。その答えは、人によって顧客が捉え方が違うため、同じ認識を持って施策に取り組むための共通言語が必要だからです。
ペルソナがない場合を考えてみましょう。仮に「都内でIT企業に勤める20代男性」と聞いた時、あなたはどのような人を思い浮かべるでしょうか。
20代であっても、新卒なのか、30歳目前なのかで価値観は異なるでしょうし、IT企業と一口に言っても、業種や事業によって大きく異なるはずです。おそらく10人いれば、10人違う人を思い浮かべるでしょう。
1人で事業をしているなら、ペルソナは不要かもしれません。しかし、事業成長して、人が増えてきた時に、この顧客の認識のズレは大きくなってきます。
当然、認識がズレれば、同じ方向を向いて施策をすることが難しくなります。そうなれば、部分最適化が進み、成果も限定的になっていくのです。
だからこそ、ペルソナという手段を使って、チームで同じ顧客像を持つことが重要なのです。
実践的なペルソナの作り方
では、ここから実際にペルソナの作り方について紹介していきます。
1. 顧客と接点を持つメンバーを招集する
まずは、顧客と接点を持つメンバーを集めて、プロジェクトを組成しましょう。重要なのは、マーケティングのメンバーだけで作らず、できるだけ多様な部署の人を巻き込むことです。
ペルソナづくりは、成果物だけではなく、作る上でのプロセスにも価値があります。立場が異なる部署の方を巻き込むことで、お互いの部署がどのようなことを考えて、お客様を捉えているかを知ることができ、相互理解にもつながります。
実際、私が現職でペルソナを作った際は、広報、セールス、カスタマーサクセス、PdMといったメンバーに参加してもらい、ファシリテーション&取りまとめ役としてマーケティング担当である私が入りました。
あとから振り返り会をした時に、メンバーから「他部署がどんなことを考えているか知れてよかった」というフィードバックをいただきました。
メンバーが増えるほど取りまとめるのは大変になりますが、できるだけ多様な人を巻き込むことが、良いペルソナを作る上でのミソだと思っています。
2. 議論の前提となるデータを集めて、ファクトシートをつくる
次は、議論の前提となる定性・定量情報を集め、ファクトシートを作っていきます。
ファクトシートとは、顧客に関するデータをまとめた会議用の資料です。私たちの場合、以下のような情報を掲載しました。
シンクタンクが出している業界レポート
競合他社のWebサイト等における訴求(どういったターゲットを狙っているのか)
資料請求いただく方の企業・人物の属性
受注している企業の傾向や、受注理由
営業メンバーを中心としたヒアリング結果
そして、ワークショップをするにあたり、関係者に事前に読んでもらってから参加いただくようにしました。こうすることで、ファクトを抜きにした議論になってしまうリスクを減らし、より現実的なペルソナを作れるようにしたのです。
3. ワークショップを開き、要素を洗い出す
次は、いよいよワークショップを開き、ペルソナを作る上での要素を洗い出していきます。
ワークショップでは、「共感マップ」というフレームワークを使っていきました。共感マップとは、ペルソナが置かれている状況や感情を整理・理解するためのフレームワークです。
このフレームワークでは、大きく6つの要素があります。
Think and Feel(考えていること、感じていること)
Hear(聞いていること)
Say and Do(言っていること、行動)
See(見ているもの)
Pain(痛みやストレス)
Gain(得られるもの)
ワークショップでは、Miro(オンラインホワイトボード)を使って、それぞれの項目に付箋を貼っていき、要素を洗い出していきました。
ポイントは、自分たちの商材が解決できるかどうかは一旦置いておいて、顧客自身が何を思い、考えているかを言語化していくことです。顧客は決して、自分たちのソリューションが解決できる課題だけに悩んでいるわけではありません。実際は、他にもさまざまな課題を持っているはずです。
そういった他の課題も含め、言語化していくことが、顧客を深く理解することにつながります。
4. ペルソナのスケルトン(骨格)を組み立てる
次は、これまで集めてきた情報をもとに、ペルソナのスケルトン(骨格)をつくっていきます。
ペルソナのスケルトンとは、ペルソナの特徴を箇条書きでまとめたものです。具体的には、以下のような項目をまとめると良いでしょう。
属性情報(企業、部署、役職など)
性格や価値観
情報の収集源
業務上の役割
業務上のゴール
業務上の悩み
なお、このスケルトンはペルソナが複数想定される場合は、ペルソナごとに作成しましょう。
5. 定量調査により、スケルトンを検証する
ペルソナのスケルトンができたら、確からしさを検証するために定量調査をしてみましょう。具体的には、ペルソナのスケルトンで出てきた要素を持つ人がどのくらい存在するかを数値で確認していく作業です。
例えば、ペルソナのスケルトンで「数値集計に時間が取られて、悩んでいる」といった要素があったとします。その際は、例えば、以下のような設問をつくることで、そのペルソナの要素に合致する人がどの程度存在するかを検証できます。
定量調査を行うことのメリットは、ペルソナに数値的な裏付けを持たせられることです。時々、ペルソナを作っても「それってあなたの意見でしょ」と実効性を問われて、せっかく作ったのに活用されていないという話を聞きます。
その点、定量調査を行い、ペルソナの蓋然性を裏打ちしていくことで、そういったリスクにも対処できるのです。ただし、定量調査だけでは全体感を把握できても、ペルソナの深掘りには不十分です。だからこそ、次のステップである顧客インタビューの併用しましょう。
6. 顧客インタビューを実施して、コンテキストを把握する
定量調査と並行して、顧客インタビューも実施していきます。ペルソナのスケルトンをもとに、ヒアリング対象を洗い出し、実際に30〜1時間程度インタビューを実施していきます。
インタビューでは、ペルソナのスケルトンで上げた要素の確認と、深掘りをしていきます。例えば、先述の「数値集計に時間が取られて、悩んでいる」という要素に対しては、以下のような質問がよいでしょう。
冒頭で、ペルソナはメンバー感の共通言語を作るために存在していると書きました。共通言語まで昇華させるためには、リアルさが必要不可欠です。だこらこそインタビューでは、自分が想像できるくらい丁寧に、コンテキスト(状況や背景)をヒアリングするのがオススメです。
7. ペルソナを肉付けしていく
いよいよ最後のステップです。定量調査、顧客インタビューを実施した内容をもとに、ペルソナを仕上げていきましょう。ペルソナのスケルトンをベースに、内容を具体的しつつまとめていきます。
特に重要なのが、
業務上の役割
業務上のゴール
業務上の悩み
の3点です。
B2Bは、なんらかの課題解決のために購買が発生します。だからこそ、ペルソナの課題とその背景を明らかにしておくと、その課題を解決するために自社の商材がどのように役立てられるかを考えるヒントになります。
おわりに
この記事では、実践的なペルソナのつくりかたについて紹介しました。
ペルソナ作りにおいては、いかに顧客を包括的に理解するかが肝です。この記事を読んで、ペルソナ作りに取り組んでみたいと思った方は、ぜひ顧客が何を考えているかを深く掘り下げてみてください。
さてB2Bマーケティングアドベントカレンダー2日目は、岩野さんの「今から始めるコンテンツマーケティング」です。ぜひお楽しみに!
【参考文献】
今回紹介したペルソナの作り方は、以下の本でも解説されています。興味を持ってくださった方は、ぜひ合わせてお読みください!
またペルソナの考え方は、高広さんが主宰されていた デジタル時代のB2Bマーケティング講座 から学んだところが大きく、本記事でもそのエッセンスが入っています。この場を借りてお礼いたします。