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Vol.8_コンセプト『行動なき成果は罪悪であり…』

私はいくつかの企業で評価制度の改訂や運用を手がけてきましたが、その際、制度の設計や適用だけでなく、コンセプトを浸透させることもしてきました。それが思いの外(?)良いデキなんじゃないかと、ずっと前から自画自賛しておりまして、

(誰も褒めてくれないので、)
今日は、そのコンセプトについて、評価制度の要諦と共にお話ししたいと思います。

※貼り付けた写真はドライブに行った先々で写したものですが、特に意味はなく、本文とはなんの関係もありません。


1.道徳なき経済は罪悪であり...

さて、話はいきなり二宮尊徳さん…

江戸時代に農村復興政策を指導した二宮尊徳さんは『道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である』と言いました。

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世のため人のためにならない事をして金儲けをするのは罪であるが、一方で、綺麗事ばかりを言って価値を生み出さなければなんの意味もない。

といったところでしょうか...?

この名言、会社経営や組織運営にも大変参考になるもので、素晴らしいと思います。特に”道徳”というなかなか誰も文句を言い難いモノ・コトに対して、「そんなものは寝言だ」という強烈な言葉を使って批判しているところにこの名言の重みがあり、形ばかりで表面的な正論を振りかざした言動を諌めています。

そして、この名言、時々後半部分だけを取り上げて「やはり結果は大事なんだよ!」などと言われることがありますが、いつどんなときでもセットでなくてはならず、前半と後半を独立して使うとその意味がなくなってしまうような気がしています。

つまり、『道徳と経済は両立させなくてはならない』というふうに捉えるべきだということです。

で、冒頭でも申し上げましたように、私は数社で何度か評価制度の設計と運用を行ってきたのですが、その中で”行動(プロセス)をいかに評価するか?”は常に焦点の一つであり、それを考えるたびに、見事に当てはまるこの名言を思い出すのです。

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2.行動評価と結果評価

行動(プロセス)の評価を行おうとした時、それを評価項目に入れ評価基準を設定したりしますが、単純に項目を追加したところで行動(プロセス)評価は機能しないんです。これがまた厄介なところなんです。。。

理由は2つあると考えています。

一つは、『行動は行動で評価して、結果は結果で評価する。』という行動と結果を分断して評価するということが起こりかねないということです。

つまり、結果に繋がっていない表面的な形ばかりの行動が評価されることになりかねないし、逆に、儲けてさえいれば行動がどうであろうと評価してしまうことにもなるということです。

もう一つは、逆のような作用になりますが、相当気をつけていないと、「結果が良ければ、それに引きずられて行動の評価も高くなる」ということです。

「結果が良いということは行動も良いはずだ」という『バイアス』がかかるということですね。(あるいはその逆)

これらの問題の解消は容易ではありません。そこで取り組んできたのが、『コンセプト』と『成果とはなんぞや?』の共有です。

3.『コンセプト』と『成果とはなんぞや?』

(1)コンセプト

コンセプトはズバリ!

行動なき結果は罪悪であり、
結果なき行動は寝言である。

行動が伴わない「棚からぼたもち」的な結果は、再現不能であることに加え、人や組織を怠惰にして成長を妨げ、周囲に悪影響を与える罪悪でしかない...。

逆に、どれだけ立派で模範的な行動を取っていても、どれだけ高度な専門知識や深い経験があっても、会社や組織の利益に貢献していなければ全くもって意味はない...。

行動と結果を両立している人が評価され、処遇されるような、そんな会社にしていきたい。

そんな想いをこのコンセプトに込めました。

わざわざ『コンセプト』と大げさにして打ち出すのは、人事制度(もっと言えば会社経営)を貫く基本的な考え方ということで、まさに「コンセプト」であるということと、『変わりますよっ!』とインパクトのある打ち出し方をして、社内の変化を促すためです。

基準を作ったからといって運用ができるということにはならず、この手のテーマは少なからず社風や文化といったところから変化させていかなければならす、小手先だけではなかなかうまくいかないような気がしています。

(2)成果とはなんぞや?

具体的に変えなければならない事の一つは『成果とはなんぞや?』という認識です。

私がこれまで経験してきた会社では「成果とは結果のことだ」かのような風潮というか定義付けをしている会社は結構ありました。明文化されていなくても「成果=結果」という雰囲気がある会社は珍しくないと思います。

「成果主義」と言えば聞こえは良いですが、運用を間違うと、それは本来の成果主義ではなく「結果主義」。人事評価の時期になると、「よくやっているけど結果が出てなきゃどうしようもないね。」「強引でわがままなところはあるけど結果出しているから評価せざるを得ないね」といったことは良く聞いてきました。

”成果主義の功罪”については世間でも盛んに取り沙汰されていますが、今回は本筋ではないので持論の展開は避けますが、やはり「結果主義」的な運用人の成長や組織運営の障害になると思います。

そこで、成果の定義を以下のように明文化して共有し、社内への浸透を図ってきました。

成果 = 行動 + 結果
『行動によって得られた結果』が”成果”
しっかり行動し、きちんと結果を出す

これも言うのは簡単なのですが、しっかりと社内に染み込ませて、実践されて効果が出るようになるのは、かなりの時間と労力が必要だと思います...💧

(3)評価する際の留意点

そして、これらの行動や結果を適切に評価することが大事になって来ますので、評価者勉強会で徹底したり、マニュアルを整備したりして、これも社内への浸透を図ってきました。

成果(行動+結果)を評価するとき、

◇結果は可能な限り数値で表現しましょう。数値で表現できない場合も、制作したもの、導入した制度、ルール、仕組み、などなど具体的に表現しましょう。

◇また、結果を表現するだけでなく、結果に繋がった主な行動(自身が行った対策・対応)も具体的にきちんと表現しましょう。

◇結果だけなら後からでも確認はできますが、『どういった行動が結果にどう結びついたのか?』についてはリアルタイムで把握しておくことが一番です。普段からしっかり把握しておきましょう。

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4.まとめ

今回は、「これ、なかなか良いんじゃない!?」と自画自賛している『コンセプト』について、評価制度の要諦と併せてお話させていただきました。

何事もそうですが、言うのは簡単で、会社経営・組織運営の中で実際にどう実践していくのかが大変なんですよね。どうやって会社に浸透させるか、どうやって文化や風土にまで染み込ませていくか...これは永遠のテーマ。

ある価値観を会社に染み込ませようとした時には、人それぞれの解釈を一定の範囲に収めるためにも、『同じストーリーを、同じ言葉で、繰り返し伝える』ことが大切なんじゃないかと感じています。

そして、なにかしらの制度に組み込んで、その価値観を『実際に表現していく』ことも繰り返していく。そんな息の長い活動が必要なのでしょう。

そういう意味において、今回ご紹介したコンセプトは、とても受け入れられやすく、分かりやすくもあり、繰り返し使えるとっても良く出来たものではないか…と、ここでもまた自画自賛するのであります。

組織開発(OD)に関して、皆さんの会社の事例をもっともっと勉強し、自社での活動に活かしたいと思います。

今日はここまで。

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