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老漁師と若き商人の話──釣りから学ぶ商売の極意
僕は田舎育ちなので、子供の頃の遊びと言えば、山の中でかけまわったり、虫を捕まえたり木の実を拾ったり。
家の前には川が流れていたので、夏にはそこで泳いだり釣りをしたりしていた。
その経験の中で今でも思い出すのは、はじめて川で魚釣りをして『1匹の魚を釣り上げた時の感動』だ。
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はじめのうちはなかなか釣れなかったが、子供ながらにいろいろ考え『竿を変え浮きを変え餌を変え。。』
何度か工夫をした後、ある工夫をしたことで今まで何のあたりもなかったが、糸を垂らした途端直ぐに魚が食いつき、1匹釣り上げることができた。
その時の感動とは、ただ魚が釣れたという感動ではなく、工夫をして釣り上げることができた!という感動だ。
それは今でも心に残っている。その工夫とはちょっとしたことなのだか。。。最後に書いているのでお楽しみに。。。
ちなみにその川では、アユやヤマメが釣れた。
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僕は今商売をしているが、その強烈な経験から得られた教訓は、商売でも生かすことができるのではないかと思っている。
それはどういうことかというと。。下記物語にしばしおつきあいください。
1.港町の出会い
むかしむかし、とある小さな港町に、一人の老漁師・源蔵がいた。
彼は何十年も海で魚を釣り続け、その腕前は町一番と言われていた。
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ある日、都会から来た若き商人・翔太が、漁業ビジネスを学ぼうと港町を訪れる。
「魚を売るなら、まず魚を知れ」と言われ、翔太は源蔵のもとで釣りを学ぶことになる。
源蔵はにやりと笑いながら言った。
「『人を魚に例えるなら、商売は釣りと同じ。やり方次第で大漁にもなれば、一匹も捕れぬこともある』──そんな話を聞いたことはあるか?」
翔太は首を振り、「それを学びに来ました」と真剣な目で答えた。
2.魚の気持ちを知る
源蔵は翔太にこう語る。
「魚を釣るには、魚の気持ちになれ。潮の流れ、餌の種類、時間帯…すべてを読まねばならん」。
翔太は最初、ただ適当に糸を垂らしていたが、何も釣れない。
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しかし、源蔵の助言を受け、環境を観察し、餌を工夫し、辛抱強く待つことで、ようやく一匹の魚を釣り上げる。
商売の教訓①:顧客の立場に立ってニーズを読め
→ 商品やサービスを売るには、顧客の気持ちを理解しなければならない。
ただ売りつけるのではなく、相手のニーズを読んで提供することが大切だ。
源蔵は、釣り糸を垂らしながら話し出す。
「むかし、中国の『孫子』にもこうある。『彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず』。
これは戦の話だが、商売でも同じこと。相手(顧客)を知り、自分の商品を知れば、負けることはない。魚の気持ちを知らずして、どうして釣れると思う?」
翔太は、その言葉をじっくりと噛み締めた。
3.餌とタイミングの重要性
源蔵は次に、翔太にこう教える。
「釣れる魚によって餌を変えるんだ。どんな魚も同じ餌で釣れるわけじゃない。それに、潮の流れが変われば、魚の動きも変わる」。
翔太は、適切な餌とタイミングの大切さを学ぶ。
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商売の教訓②:ターゲットに合わせた戦略を
→ どんなビジネスでも、ターゲットに合わせた商品やサービスを提供することが重要だ。また、流行や市場の変化に敏感になり、適切なタイミングで打ち出すことも成功の鍵となる。
源蔵は、翔太の様子を見て笑いながら言った。
「『郷に入っては郷に従え』って言葉を知ってるか?」
翔太はうなずいた。「その土地の習慣に従え、という意味ですよね?」
「そうだ。だが、それは商売にも当てはまる。魚の種類に応じた餌を使うのと同じで、客に合わせた売り方をせねばならん。都会の流行をそのまま田舎で売ってもうまくいかんし、その逆も然り。市場を見て、合わせることが大事だ」
4.焦らず待つことの大切さ
翔太は次第に釣りに慣れてきたが、まだまだ忍耐が足りなかった。
すぐに結果を求めてしまい、焦って糸を引くことが多かった。
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そんな翔太に、源蔵は「大物はじっくり待て」と諭す。「慌てると逃げられる。じっくり機を待てば、必ず大きな獲物がくる」。
商売の教訓③:焦らず、長期的な視点を持て
→ すぐに結果を求めすぎると、大きなチャンスを逃すことがある。ビジネスも同じで、長期的な視点を持ち、機が熟すまで辛抱することが成功への道となる。
源蔵は、静かに海を眺めながらこう言った。
「欲張りすぎると、獲物をとれるチャンスを失うんだ」
翔太はハッとした。
「商売でも、短期的な利益ばかり求めて、信用を失ったら元も子もない、ということですね」
源蔵は満足げに頷いた。「そういうことだ」
5.釣りと商売の共通点
翔太は数ヶ月の修行を経て、ただの「釣り好き」ではなく、「魚の動きを読める漁師」となっていた。
源蔵は最後にこう言った。「釣りも商売も、相手の心を読み、正しい方法で、正しい時に仕掛けることが肝心なんだよ」。
翔太はその言葉を胸に、港町を後にする。
そして数年後、商売の知恵を学んだ彼は、成功した商人となった。
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まとめ
釣りから学べる教訓は、商売にも生かせる。
ちなみに冒頭に書いた、僕がした工夫はこんな感じだ。
(1)竿をリール竿から渓流釣り用の竿に変えた
子供用リール竿⇒渓流釣り1本竿
敏感な『あたり』を捉えられるようになった。
(2)釣りのポイントを変えた
流れのはやい場所⇒川の流れの緩い『ふち』と呼ばれる場所
魚の動きが見える、ゆったり餌を置いてまてる
(3)浮きとおもりを変えた
餌を流す深さを浅い場所⇒若干深い場所へ
魚の泳いでいる位置に合わせて食いつきやすい場所へ流す
(4)餌を変えた
毛バリ⇒金属ルアー⇒小麦粉をねった疑似餌⇒ミミズ⇒川の中にいる虫
最終的に最も効果が上がったのは、餌を変えた時だった。まさに入れ食いという状態。
川の中の石をひっくり返して、石の底にしがみついている、小さな虫(ウスバカゲロウの幼虫など)を餌にした。
僕が学びを得たのは、顧客が何を求めているかを考え適切な方法でアプローチするという事だった。