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【お金の不安がなくなる】"生活防衛資金”目的と貯め方

あなたは「どれくらい貯金があれば安心して今の生活を送れるのか」考えたことはありますか?

貯金というと、自分の老後であったり、子どもの教育資金などをイメージされる方が多いと思いますが、今回の記事でお伝えする内容は、今の生活の不安に対して備える「生活防衛資金」についてです。

「生活防衛資金」という言葉を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれませんが、必要な金額を把握せずに貯金や投資をするよりも、目的や目標を決めて生活防衛資金を貯めておく人の方が、お金の不安を減らし、安心して生活を送ることができます。

そのため、この記事では、生活防衛資金を貯める目的や、具体的にいくら貯まっているのが理想なのか、生活防衛資金を貯めるために取るべき行動についてお伝えしていきます。


生活防衛資金はなぜ必要?

生活防衛資金と貯金がごちゃごちゃにならないように、生活防衛資金の定義について整理しておきましょう。

「生活防衛資金」とは、病気やケガ、失業、会社の倒産などの不測の事態に備えて用意しておく貯金の一部のことを言います。

つまり、目的は保険としての役割が強く、老後資金や教育資金とは目的が異なります。

何年か先のイベントに備えるというよりも、今起きたら困ることに対して準備しておく必要があるため、老後資金や教育資金とは別の口座で管理する必要がありますし、すぐに引き出せる現金で準備しておく必要があります。

生活防衛資金を準備しておくことで、何かあっても大丈夫という心の余裕が生まれ、十分な金額が確保できれば無駄な保険に入らなくても良くなります。


心の余裕を手にいれる

『貧すれば鈍する』ということわざがあるように、人はお金の不足を感じるとIQが下がってしまい、通常では考えられないような愚かな行動をとってしまうことがわかっています。

株価が暴落した時に、慌てて持っている株を投げ売りしてしまったり、仕事やお金がなくなると犯罪に手を染めてしまうのも、全て脳がお金の不足を感じてIQが下がってしまうことが原因になります。

身体や精神が壊れるまで残業してしまったり、ブラック企業から転職できなくなるのも、お金に不足を感じているからになります。

そのため、生活防衛資金を貯めることで「何かあっても大丈夫」という、お金に余裕を持った暮らしを送ることが、精神の安定を保つためにとても重要になります。

生活防衛資金とは、失業や病気で働けなくなった時に生活を維持するためであったり、家族に何かあったときに助けてあげることができるお金で、すぐ引き出せる現金(預金)で用意しておきます。


無駄な保険に入らなくてよくなる

生活防衛資金は保険としての役割もあるので、それ以上無駄な保険に入らなくて良くなるというメリットがあります。

生活防衛資金が全くない時に失業や病気になってしまうと、生活が苦しくなるので、その場合に保険に入っておくという考え方はいいのですが、生活防衛資金が貯まっている状態で、さらに保険をかけるというのは、2重で保険をかけているのと同じことになるので、そこに保険料を支払うのは無駄が大きいです。

生命保険センターの調査(令和3年)によると、一世帯が一年で払っている生命保険料(医療保険含む)が約37万円、月額で換算すると一月に平均3万円程度という計算になります。

この金額を見て、あなたならどう思うでしょうか。

僕の考えとしては、日本は社会保障制度が整っているので、そこまで保険に加入する必要はないと思っています。

ここでは、生活防衛資金が貯まっていれば、保険に加入する必要がない理由を「ケガや病気になった時」「死亡した時」に分けて、FPの視点でお伝えしていこうと思います。


ケガや病気になった時

公務員や会社員であれば、病気や怪我で働けなくなっても、傷病手当金が支給されます。

傷病手当金とは、基本給の3分の2の金額を最長で1年半受け取ることができる制度で、うつ病などで長期休養が必要となった時にも受け取りが可能です。

傷病手当金は、最長で1年半の間手当てを受け取ることができますが、平均支給日数は30日であることを考えると、【基本給の3分の1×30日分】の貯金があれば、一般的なケガや病気には対応できる計算になります。

さらに、公務員の場合は、傷病職免という制度があるので、90日間は基本給が全額支給されている状態で、療養に専念することができます。

ガンなどの高額な医療費が必要になった時にも、高額療養費制度があるため、生活防衛資金があれば民間の保険に加入していなくても対応することができます。

例えば、標準報酬月額40万円の場合、総医療費が100万円(窓口負担額が30万円)であったとしても、自己負担限度額は8万7千円となります。

このように、病気になったときにも傷病手当金や高額医療費制度というセーフティネットがあるため、生活防衛資金が貯まっていれば必ずしも保険に加入する必要性は少なく、保険をかけるにしても少額の賭け金で良いことが分かります。

保険にかけるくらいであれば、病気になることを前提に考えるのではなく、病気にならないようにジムに通ったり、野菜中心の食生活に投資した方がよほど人生の満足度は向上します。


死亡した時

死亡したり高度障害になったときに、残された家族が生活していけるのか、不安を感じて生命保険に加入している方も多いと思います。

そこでまず死亡した際に受ける、公的支援について見ていきましょう。

年金の加入者(被保険者)が亡くなった場合、遺族には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が支給されます。

詳しい計算方法は省略しますが、僕のモデルケース【妻と子ども一人、保険加入期間20年、標準報酬月額47万円】では、年額で約180万円が妻に支払われる計算になります。

これを月に換算すれば、毎月15万円の収入があるわけなので、ヘタに離婚して養育費をもらうよりもずっと大きな金額になることが分かります。

続いて、マイホームを変動金利で購入した方であれば、「団体信用保険」という保険に必ず加入しているはずなので、以後の住宅ローンの返済は無くなります。

子どもの教育資金として「学資保険」に加入している人も、以後の保険料の負担がなく、満期時に設定した金額を受け取ることができます。

さらに、故人の遺産が相続されたり、退職金が支給されたりすることを考えれば、何千万円もの生命保険をかける必要が本当にあるのかというのは冷静に考える必要があると思います。

相続税対策で生命保険に加入するという理由でなければ、ほとんど不要と言えるでしょう。

このように、生活防衛資金を保険と考えれば、医療保険や生命保険などの保険に加入する必要性は少なくなります。

それでも保険に加入しておきたいのであれば、会社などで団体で加入できる掛け捨てのグループ保険(医療保険)くらいで十分ではないかと思います。


転職や起業にチャレンジしやすくなる

40代の方の中には「年収が低い」「職場の環境が良くない」という理由で転職を考えたり、「人生100年時代を見据えて自分の力で食べていけるようなりたい」という理由で起業を考えている人も少なくありません。

転職するまでの期間や、起業してから生活費を稼げるようになるまでの間は、貯金を切り崩しながら耐えるしかありません。

この時、生活防衛資金が十分でないと、転職先の会社をじっくりと検討できなかったり、起業して早く成果を出そうと質の悪い情報商材を掴まされる可能性があります。

焦って転職や企業で失敗しないためにも、生活防衛資金が必要になります。

さらに、雇用保険に加入している会社員であれば、会社都合であれ、自己都合であれ、給料の50%から80%程度失業手当てを受け取ることができます。

例えば、【退職前6ヶ月間の賃金総額が200万円、年齢が40歳、被保険者期間が10年〜20年、自己都合による退職】の場合は、総額74万5千円、月額で約17万4千円を最長で120日(約4ヶ月)受け取ることができます。

ただし、公務員の場合はそもそも解雇が想定されていないため、失業手当は受け取ることができないので注意してください。

こうした制度も活用しつつ、生活防衛資金を準備できれば、転職や起業にもチャレンジしやすくなります。


生活防衛資金はいくら必要?

生活防衛資金は、月々の生活費の6ヶ月から2年分を用意しておくことが理想とされています。

この月々の生活費は、最低限生活していくために必要なお金という金額になるので、給料から貯蓄に回していたお金などを差し引いた金額になります。

これも、家計簿をつけている人であればすぐに計算できると思います。

また、会社員や公務員など安定した仕事かどうかや、転職や起業を考えているかどうかによっても必要な金額は変わってきます。


会社員や公務員の場合は6ヶ月分で十分

会社員や公務員の場合は、よほどのことがないと解雇されることがない守られた身分とされています。

さらに、前述したように、病気になったときには傷病手当金が支給されますし、死亡した際にも遺族厚生年金が支給さるなど手厚い保証があります。

そのため、生活費の6ヶ月分の生活防衛資金が貯まっていれば、十分と言えます。

一方、自営業など個人事業主の場合は、会社員や公務員に比べて手当や保証が少なく、売上も安定してあるとは限らないため、1年から2年分の生活防衛資金は用意しておいた方がいいでしょう。


転職や起業を考えている場合は1年から2年分を用意

転職や起業を考えている場合は、1年から2年分の生活防衛資金を用意しておくことが理想とされています。

生活防衛資金が不足すると、じっくりと転職先を検討できなかったり、転職のタイミングでAIなどの新しいスキルをみにつけたりすることも難しくなってきます。

起業する場合にも、最初の事業でいきなり成功する人は少なく、自分が何に向いているのかを試行錯誤しながら進めていくことになると思うので、成果が出るまでに時間が必要です。

そのため、会社員や公務員の方でも、転職や起業を考えている場合は、少し多めに生活防衛資金を蓄えておくと必要があります。

この時、失業手当てや退職金がどれくらい支給されるのかも試算しておくといいでしょう。

また、転職や起業活動中にパートナーがしっかりと稼いでくれるというパワーカップルの場合は、生活防衛資金がそれほど必要でない場合もあるので、世帯収入をもとに必要な金額を考えるといいでしょう。


生活防衛資金を貯めるにはどうしたらいいか

生活防衛資金を貯めるために、まず最初に考えなければいけないのが現状を把握することです。

生活防衛資金は、月々の生活費の6ヶ月から2年分を用意する必要があるので、月々の生活費がいくならのかや、貯蓄がいくらあるのかをざっくりとでも把握しておかなければいけません。

その上で家計簿をつけておくと計算が早いですし、生活費用の口座と貯金用の口座を分けておくと貯金額も把握しやすいです。

最近は夫婦共働き世帯も多いので、夫婦合わせての生活費や貯蓄額も把握しておく必要があります。

お金のことはパートナーであっても聞きにくいという方もいると思いますが、最低限自分が負担している生活費と貯蓄額は把握できるようにしておきましょう。

現状の把握ができたら、生活防衛資金が十分貯まっているのかどうかで、支出を見直していきます。


生活防衛資金が十分貯まっていない場合

生活防衛資金が十分ではないという方の場合は、大きく2つのパターンに分かれると思います。

一つは、最近の投資ブームに引っ張られて、株などの金融資産に余裕資金を注ぎ込んでいるパターンです。

今年は新NISA制度になって、投資可能枠が増えたことにより、NISAで運用しないともったいないと考えて、貯金を崩して株式投資に回しているという方も少なくありません。(僕もNISAを始めたばかりの頃はそうでした)

しかし、今年もすでに経験したように暴落はいつ起こるかわかりません。

暴落時に生活防衛資金が不足していると、株価の暴落に精神的に耐えきれず安値で売却してしまうことになりかねませんし、実際に今年の暴落では新NISAを始めたばかりの人の多くが株式市場から撤退してしまいました。

つまり、投資にはリスクが付きものである以上、株価の暴落に備えて無リスク資産である現金も持っておくことが重要であり、生活防衛資金以外の貯金からコツコツと投資に回していくことが最善の方法となります。


二つ目は、支出が収入を上回る赤字家計の場合です。

日本では、ひとり親世帯や高齢者など6人に1人が相対的貧困という状態に陥っており、社会問題となっています。

この場合、社会全体としての支援も当然必要ですが、家計でできる対応としては、「収入を増やす」「支出を減らす」のどちらか、またはその両方になります。

そして、まず優先して考えるのは「支出を減らす」ことになります。

「収入を増やす」ためには、副業を始めたり、転職をするなどの対応策がありますが、どちらも成果が出るまでには時間がかかりますし、必ずしも収入が増えるという保証はありません。

また、残業という方法は一時的には収入が増えますが、その分自分や家族の時間、健康を失うリスクがあるので、長期的に見ると得策ではありません。

一方で「支出を減らす」というのは、保険代や携帯料金、家賃などの固定費の中で見直せる余地があれば、生活の満足度を下げずに支出を減らすことができて再現性が高い対策になります。

また、家計簿をつけることで、少ない収入でも生活を切り詰めてなんとかやりくりをしているという場合でも、無駄を省ける部分が見えてくることがあります。

このように、赤字家計の場合には、固定費を削減したり家計簿をつけて無駄な支出を減らすことで、生活防衛資金を貯めるための地盤を固めることが重要になってきます。

家計簿をつけるのは面倒くさいという方は、前回の記事を参考になるのでぜひ読んでみてください。


生活防衛資金は十分貯まっている場合

生活防衛資金がすでに十分貯まっているという方は、それ以上現金(預金)で持っておくよりも、投資に回した方が効率の良いお金の使い方になります。

健全な経済成長をとげていった場合、少しずつ物価が上がっていくというのが普通です。
そのため、貯金だけで持っていると、物に対して現金の価値が下がっていくというリスクもあるからです。

ですが、僕の考えでは、「NISAなどの金融資産に投資することだけが最適解ではない」と思っています。

人生100年時代を豊かに過ごすためには、お金という有形資産は当然必要ですが、それ以外の仕事、健康、家族、友人など無形資産に投資することも同じくらいに重要です。

具体的には、読書やセミナーに参加して脳をアップデートしたり、野菜中心の食事や運動をして健康を維持したり、家族や友人と旅行や食事に行って絆を深めたりすることにお金を使うということです。

矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、生活防衛資金を準備して今の不安に備えて、NISAなどの制度を活用して将来の不安にもある程度の備えができたら、それ以上お金に執着せず、無形資産に投資することが、今も将来も幸せな人生を送ることに繋がると感じています。


まとめ

生活防衛資金とは、病気やケガ、失業、会社の倒産などの不測の事態に備えて用意しておく貯金の一部であり、生活防衛資金を準備しておくことで、無駄な保険に入らなくてもよくなったり、心に余裕が生まれます。

生活防衛資金は、現金で用意する必要があり、人によって金額は異なりますが、会社員や公務員であれば生活費の6ヶ月分転職や起業を考えている人であれば1年から2年分の生活防衛資金があると、安心して転職活動や起業に専念することできます。

生活防衛資金を貯めるためには、NISAなど金融投資に回しすぎないことや、家計簿をつけることで、固定費を見直すことから始めることが大切です。

生活防錆資金が十分貯まっている場合は、NISAなど金融投資に回した方が効率の良いお金の貯め方になりますが、人生100年時代を豊かに過ごすためには、仕事、健康、家族、友人など無形資産と呼ばれるものにも積極的に投資をしていくことが重要になります。


生活防衛資金は、これから投資、副業、起業を始めるための精神的土台となるものです。

将来に向けて行動することはとても大切ですが、その前に足元をしっかりと固めて、不安を取り除いてから行動した方がいい結果に繋がると思います。
ぜひ今回の記事を参考に「生活防衛費」を準備してみてください。


今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

次回の記事では「老後資金の考え方と試算方法」という内容の記事を投稿すします。

僕のシリーズ記事『LIFE SHIFT 40歳からの人生戦略』では、人生後半を戦略的にデザインしていくために必要な「考え方やアクションプラン」について、30本ほどの記事で構成しています。

週1〜2本くらいのペースで記事を追加していくので、「記事が面白い」「次も読んでみたい」と思っていただいた方は、ぜひフォローをお願いします。

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