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【老後の不安がなくなる!?】誰も教えてくれなかった老後資金の考え方と試算方法
みなさんは、『アリとキリギリス』という寓話をご存知でしょうか。
夏の間にせっせと働いたアリは、寒い冬を乗り越えることができ、遊んで暮らしてしていたキリギリスは冬になると食料がなくなり悲惨な最後を迎えるというお話です。
この寓話の教訓は、人生には「働くべきとき」と、「遊ぶべきとき」があるというものです。
これは、もっともな話です。
でも、ここで、一つ疑問が生じないでしょうか?
それは、「アリはいつ遊ぶことができるの でしょうか?」というものです。
現代を生きる私たちは、「老後」という大きな不安を常に抱えています。
この不安をなくそうと、まるで競い合うかのように、今の生活を犠牲にして稼いだお金を貯金や投資に回しています。
お金があることで「心の安定」を保てるのは間違いないですし、それを否定するつもりもありません。
ですが、「老後を安心して生活すること」だけが人生の目的ではないはずです。
人生の目的とは、「"今”もそして"将来(老後)”も幸せな人生を歩み続けること」であるべきです。
それなのに、なぜ人は"今”の生活を犠牲にしてまでお金を貯めようとするのでしょうか?
僕が思うに、原因は「不安の正体」がはっきりしていないからになります。
体の調子が悪い時に、病院に行って診断名がついたり、薬を処方してもらうことで、気持ちが落ち着いて楽になるのと同じで、「不安の正体」が分かって、対応方法を知ることができれば、将来だけでなく、今の生活も充実させることができるようになります。
では、「不安の正体」とは何でしょうか?
それは、「老後いくらお金があれば大丈夫か分からない」ということです。
自分が何歳まで生きるかというのは当然分かりませんし、将来どれくらい年金がもらえるのかや、日々生活するのにどれくらいお金が必要になるのかを予測するのはとても難しいものです。
ですが、何も目標を立てなければ、お金がいくらあって不安が無くなること絶対にありません。
大切なことは、自分はどんな老後を迎えたいのかをイメージして、概算でもいいので必要な老後資金を計算することです。
そして、老後に向けた人生設計を主体的に思い描くことができたときに、人は「アリの生き方」から「キリギリスの生き方」を選ぶことができるのです。
かつて「老後2000万円問題」言葉が話題となりましたが、これもただの平均値をとっただけの数字に過ぎません。
老後資金がいくら必要なのかというのは、人によって千差万別です。
そして、これは誰かに教えてもらうものではなく、自分で考えて、計算するしかありません。
そのため、この記事では、老後資金を貯める目的をお伝えし、老後資金を試算する上で必要な考え方についてご紹介します。
長文になりますので、少しずつ休みながら読んでみたり、老後資金を計算するため、電卓などが近くにある環境で読んでみてください。
この記事を読んでいただくことで、みなさんの老後の不安が軽くなると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
多くの人が死ぬ時に一番裕福になっている
この記事でお伝えする内容については、お金の名著『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の影響を大きく受けています。
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この本内容を要約すると次のようになります。
人は退職までに貯めたお金をほとんど使わずに死んでいく
人生で最も大切な仕事は「思い出づくり」である
若い時の時間は貴重だから、今しかできないことにお金を使いなさい
本のタイトルのとおり、著者のビル・パーキンスは、「お金は使い切って死ね」と言っています。
僕はここまで極端ではなくても、死んだ後の世界にはお金を持っていくことはできないのだから、せめて今生きている間に有効に使いましょうという話にはとても共感できるものがあります。
歳をとってから海外旅行に行きたいと思っても気力がないし、キャンプや登山を始めたくても体力は衰えています。
多少無理をしてでも、若い時にしかできない経験にお金を使うのは、とても必要なことだと思います。
本の中でも紹介されていますが、ほとんどの人が退職前に貯めたお金を使いきれずに最後を迎えています。
アメリカの連邦銀行の調査によると、退職前に50万ドル(約7500万円)以上の資産を持つ経済的に豊かな人は、20年後もしくは死ぬまでに資産の11.8%しか使っておらず、退職前に「20万ドル(約3000万円)未満の資産を持つ、一般的な人であっても、退職後の18年間で資産の25%しか使っておらず、全退職者の3分の1が、退職後にも資産を増やしているというのです。
いやいや、それは経済大国アメリカの話であって、世界に先んじて高齢化社会を突き進んでいる日本では、もっと老後はお金に困るはずだと思って調べてみました。
結果としては、日本も同じような傾向があることがわかりました。
まず、退職時にどれくらいの貯蓄があるのかをみてみましょう。
令和6年度版高齢社会白書によると、65歳以上の世帯の貯蓄額は平均値で2400万円を超えており、中央値は1,677万円でした。
4,000万円以上の貯蓄を有する世帯も全体の17.9%いることが分かりました。
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一方で、2020年MUFG資産形成研究所が行った退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査によると、親から相続した相続額は平均で3273万円、中央値で1600万円となっていました。
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「貯金額」と「相続額」の違いこそありますが、多くの人が退職前に貯めたお金を使いきれないどころか、ほとんど減らさずに最後を迎えているということがよく分かります。
そして、多くの人が死ぬ間際になって、仕事ばかりしていないで、人生をもっと楽しんでおけば良かったと、後悔しながら死んでいくのです。
こうした現状を見ると、今は我慢して、老後に楽しみをとっておくという考えが、いかに徒労に終わるかというのが分かります。
必要以上にお金を貯めるのは「考えること」を放棄している”から
先ほど見てきたように、現状を理解すると、老後に備えて何千万円ものお金を用意する必要はないことが分かります。
では、なぜ人は必要以上にお金を貯めてしまうのでしょうか?
僕が考える理由は大きく2つで、「自分の将来が想像できていないから」という理由と、「貯蓄市場のキャンペーンに乗せられている」という理由があると考えます。
将来の自分が想像できていないから
一つ目の理由は、老後を迎えた時の自分の生活が想像できていないからです。
今は平均寿命も少しずつ伸びていって、「人生100年時代」とも言われています。
そうした中で、さまざまな不確定要素が老後の生活に影響を与えます。
いつまで働き、いつ死ぬのか
▶︎健康寿命、平均寿命
年金はいつから、どれくらいもらえるのか
▶︎年金受給開始年齢、受給額
老後の生活費はどれくらいかかるのか
▶︎物価上昇率、生活水準
これらをイメージできないから、目標とする貯蓄額が決まらず、いくらお金を貯めても不安になるのです。
確かに、将来のこと正確に予測することなんてできませんし、ましてや、自分がいつ死ぬのかということは誰にも分かりません。
ですが、考えることを放棄していては不安はいつまで経ってもなくなりません。
肝心なことは、自分の健康状態、収入、資産額、生活費など今の状況を把握して、将来どんな生活を送りたいのかを考えることです。
あなたは、どんな老後を送ってみたいですか?
誰かに押し付けられたものではなく、「自分自身がどう過ごしたいのか」を、一度時間をとってじっくりと考えてみてください。
貯蓄市場のキャンペーンに乗せられている
2つ目の理由は、貯蓄市場のキャンペーンに乗せられているからです。
今年になって、新NISA制度が始まり、貯金から投資に向かう人が一気に増えました。
これはこれでいい流れだと思いますが、根本的な問題として、自分が「何を目的に、いくら必要で、どの投資商品を(年利何%で)、何年かけて、いくら投資するか」というところまで考えて投資している人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
保険についても同じです。
自分が働けなくなった時に、「何日分のお金が、いくら必要で、会社や国からの補助金がいくらあって、不足する金額を保険で賄うために必要な保険金はいくらか」まで計算して保険の契約をしている人は、ほとんどいません。
保険会社であれ、証券会社であれ、商売のため利益のために営業している以上、不安を煽って商品を紹介したり、必要以上に掛け金を引き上げたりするのは当然の行為です。
むしろ、それに気づかず、証券会社や保険会社の巧みな話術や「安心」という殺し文句に踊らせれて、深く考えもせず、商品を購入している私たち消費者側に問題があるのです。
手数料や利回りを見て、優良な投資商品を選んだ方がいいと言っているのではありません。(それも大事なことではありますが)
もっとその前の段階で、将来の自分を想像して「どれだけお金が必要なのか」を把握した上で、「投資商品を買う」「保険に入る」という選択をすることが重要なのです。
つまり、私たちが老後のために必要以上に貯金をしてしまうのは、「将来のことはわからないから」という理由で考えることを放棄してしまっていることで、貯蓄の目標額を見失い、貯蓄市場のキャンペーンに上手く乗せられて、カモにされてしまった結果であると考えます。
必要な老後資金を試算する
これまでにもお伝えしてきたように、人は老後にいくらかかるか分からないから不安になり、必要以上に貯金をしたり、投資や保険などの貯蓄市場のキャンペーンに踊らされてしまうのだと考えられます。
そうであるなら、必要な老後資金を概算でもいいので試算することは、老後の不安を取り除いて、精神的にも金銭的にも今の生活を充実させるために、意義があるはずです。
では、具体的にどのように計算していけばいいのでしょうか?
ここからは、FPの知識も交えながら紹介していきます。
なるべく、正しいデータをもとにお伝えしますが、将来のことは不確定であることや、個人の意見も多分に含まれていることをご理解のうえ、一緒に考えてみてください。
平均寿命と健康寿命の予測
日本は世界一の長寿国と言われているのはご存知だと思います。
令和4年度厚生労働白書によると、平均寿命は男性で81.41歳、女性は87.45歳となっています。
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ここ20年をみても、平均寿命は年々伸びていることを考えると、私たちが老後を迎える頃には、さらに平均寿命が伸びると予測することができます。
将来推計人口(令和5年推計)によると、2070年での平均寿命は男性で85.89歳、女性は91.94歳になると言われています。
一方で、健康診断や体力評価、ライフスタイルなどの結果を元に計算した「健康でいられると感じる年齢」のことを健康寿命と言います。
健康寿命は平均寿命との相関性が高く、上記の表を見てもわかるように、男性は平均時寿命よりマイナス8.5歳、女性はマイナス12歳前後で推移していっています。
健康寿命と仕事の引退年齢についても一定の相関性があり、職種や雇用状況にもよりますが、「長く働きたい」と考えている人としては、健康寿命がリタイアのタイミングになります。
一方で、早くリタイアして年金や貯金で生活したいと考えている人にとっては、定年などがリタイアのタイミングとなります。
このように、将来の平均寿命や健康寿命を知ることで、自分が何歳まで生きる可能性が高いのかや、何歳まで働くことができるのかをイメージすることにつながります。
しかし、実際には、個人の健康状態や生活習慣によって平均寿命まで生きるかどうかは変わってきます。
自分が長生きするかどうかを知るためには「長生き診断」いうサイトを使ってみるのも一つの方法です。
具体的に何歳まで生きられるかという数値では示すことはできませんが、自分が平均寿命よりも長く生きられるかどうかを知ることができるので、老後の人生プランを考える上で、参考になると思います。
年金受給額と受給開始年齢を考える
みなさんは、自分の年金がどれくらいもらえるのか試算してみたことはありますか?
令和6年に国民年金機構が発表した「標準的な夫婦」の年金額は月額約23万円とされています。
ただし、これもあくまで政府が勝手に設定したモデルでの算定結果であり、実際に自分がどれだけもらえるのかは、加入期間や年収、受給開始年齢によって異なります。
年金の計算って難しそうというイメージがあると思いますが、現行の制度をもとに計算するのであれば、すぐにでも試算することは可能です。
年金は国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)の2階建てになっているので、それぞれいくらもらえるのかを計算して、夫婦で足せば将来の年金額を試算することができます。
ここからは、実際の計算方法についてなるべく簡単にご紹介します。
国民年金の計算方法
国民年金は、20歳から40歳までの加入期間によって金額が決まります。
これは年収とは関係がないので計算しやすいです。
計算式は下記のとおりです。
81万6,000円(令和6年度) × (保険料納付済期間/480ヶ月)
例えば、大学を卒業してから60歳まで払い込んだ方の納付済期間は456ヶ月となるので、年額は77万5,200円になり、月額では6万4,600円となります。
世帯主の扶養に入っている方(多くの家庭では妻にあたる)も、保険料を納付していることになるので、ほとんどの方が満額に近い年金を受け取ることができると思います。
厚生年金の計算方法
厚生年金は会社員や公務員が加入する年金制度で、最長で70歳まで加入することができます。
国民年金とは異なり、勤続年数と年収を基に計算します。
ざっくりとした計算式は下記のとおりです。
勤務年数 × 平均年収(※) × 0.005481(令和6年度)
(※) 標準報酬月額× 12ヶ月分
例えば、大学を卒業して60歳までは平均で年収600万円をもらっていて、65歳からは再雇用で年収400万円をもらっていた場合は、
【(38年 × 600万円)+(5年 × 400万円)】× 0.005481となり、
年額で135万9288円万円で、月額では11万3274円になります。
将来の年収を正確に知ることは難しいと思いますが、公務員のように年功序列で給料が増えていく職種の場合は、40歳くらいでもらっている給与水準が採用時から退職時の平均くらいになると思うので、40歳くらいの年収を就労期間全体の平均年収として考えればいいと思います。
60歳以降も雇用を継続する場合は、退職前の半分から2/3くらいになっていると思うので、ご自身の会社の給料体系を確認してみてください。
受給開始年齢
国民年金と厚生年金の受給開始年齢は「65歳」と思っている方がほとんどだと思いますが、実は早く受け取ることも、遅く受け取ることもできるのをご存知でしょうか?
最短で60歳、最長で75歳からに受給開始年齢を変更することができ、早くもらえば年金が減額され、遅くもらえば増額される仕組みになっています。
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この制度を使うと、75歳まで繰り下げると、65歳時点でもらう年金額の184%の年金を受給することが可能になります。
先ほどの例で言うと、65歳でもらえる国民年金と厚生年金の合計が17万7,874円だったものが、75歳まで受給開始年齢を繰下げると、32万7288円受給することができる計算になります。
さらに配偶者の方の国民年金もあわせれば、75歳から毎月44万6,152の年金を受給することができる計算になります。
この繰下げ制度を利用すると、長生きする人ほど死ぬまでにもらえる年金総額が多くなります。
具体的には、81歳以上長生きする方は、65歳から年金をもらうよりも、70歳から年金をもらった方が総額が多くなりますし、86歳以上長生きする方は、75歳から年金をもらった方が総額が多くなります。
つまり、これからの長寿社会で年金制度をうまく利用するためには、長く働いて年金に頼らない生活を送り、厚生年金の加入期間を伸ばし、年金の受給開始年齢をできるだけ遅くに受け取ることが得策となります。
僕の考えとしては、前述した「長生き診断」サイトで、平均寿命よりも「長生き」と診断された方は、出来るだけ長く働き、遅くに年金を受給するという人生プランを立てたり、平均寿命よりも短いと診断された方は、通常通りか繰上げて年金を受給するという人生プランを立てた方がいいのかなと思います。
もらえる年金の総額と老後にかかる生活費の総額を天秤にかけて、不足するについて分を貯金や投資で賄うという考え方で計算すれば、必要な老後資金の目安がわかってくると思います。
年金が目減りする予測も立てる
少子高齢化で、将来は現在と同じ水準で年金制度を維持することは難しいとされています。
これは誰でも想像できると思うのですが、実は今、年金の受給額が増えているのをご存知でしたでしょうか?
年金の算定には、「人口減少」「平均寿命の伸び」「賃金や物価の変動」などをもとに、「マクロ経済スライド」という仕組みが使われていて、年金額が大幅に減少することを防ぎつつ、年金制度の持続性が確保されるようになっています。
そのため、2024年は、物価上昇率が3.2%と高い水準であったため、年金の支給額も2.7%上昇しています。
ですが、よく見ると、年金額の上昇率は、物価の上昇率には追いついていないため、実質的には目減りしています。
これから、日本はこれまで経験したことがない、超少子高齢化社会に突入していくので、現時点で、物価上昇率との間で0.5%の開きがあるということは、今後も物価上昇率との間で0.5%以上の差が出ることは間違いないと思っています。
僕は経済評論家でも経済学者でもないので、特に裏付けがあるわけでもありませんが、物価上昇率との間で平均1%くらいの差を見積って年金を計算すればいいのかなと考えています。
例えば、物価上昇率の予測を2%と考えるなら、年金額は毎年1%増えていくといった具合です。
現在、国民年金と厚生年金を合わせて、夫婦で23万円もらっている世帯は、30年後には37万7,397円もらえる計算になります。
額面では増えているように見えても、それ以上に物価が上昇しているので、生活は苦しくなっているという状況が続いていくという想定で計算しておく必要があるでしょう。
将来の生活費を算出する
最後に、将来必要となる生活費についてみていきましょう。
総務省統計局の調査によると、令和5年度における標準的な夫婦の生活費は282,479円(直接税・社会保険料31,525円を含む)となっています。
ただし、この金額も全世帯の平均値を取っただけなので、生活水準によっては、少なくて済む場合もあれば、足りないという場合もあるので、個別に把握する必要があります。
老後を迎えると、ほとんどの世帯で住宅ローンの返済が終わり、子どもの教育費が不要となり、貯蓄や年金保険料の納付も不要となるので、単純に今の支出からそれらの費目を削除すれば、だいたいの生活費は計算できると思います。
加えて、歳をとれば気力や体力も衰えて、旅行にいくことも少なくなり、食費もかからなくなるので、一般的には生活水準は下がると言われています。
ここで計算した生活費に、毎年の物価上昇率を年金を受給する年齢になるまでかけていけば、将来の生活費を大まかに算出することができます。
例えば、標準的な夫婦の生活費を参考に、毎年2%の物価上昇率で、35年後の生活費を算出すると次のようになります。
282.479円 × 1.02 ×1.02 × 1.02 ×1.02 … =564,926円となります。
みなさんは、この結果を見てどう感じたでしょうか?
こんなに上がるはずないだろうと思った方もいらっしゃるかもしれませんが、政府は、デフレ脱却と健全な経済成長のために、物価上昇率を2%に設定しています。
実際にアメリカの消費者物価指数を見てみると、35年で2倍以上になっているので、現実的には十分あり得ると考えられます。
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もちろん、物価上昇率と合わせて給料も上がっていくはずなので、単純考えれば、35年後には給料水準も今の2倍に以上になっているはずです。
つまり、「長く働ける」ということは、物価高が予想される将来ほど、大きな強みになるのです。
将来の老後資金を算出する
ここまで来れば、将来に必要な老後資金の算出もあと少しです。
将来の平均寿命と健康寿命と比較して、自分がどれくらいまで生きる可能性があるのかを予測した上で、将来もらえる年金額と受給開始年齢を予測し、必要な生活費を差し引けば必要な老後資金を概算で算出することができます。
算出方法は次のとおりです。
必要老後資金=(引退年齢から予想寿命までの支出総額)ー(年金受給開始年齢から想定寿命までの年金総受給額)
一例として、以下の条件で計算してみましょう。
現在40歳の夫は、60歳で役職定年を迎えて、65歳で仕事を引退しようとしています。
役職定年までの勤務年数は38年、平均年収は600万円で、役職定年後の平均年収は400万円とします。
妻は夫と同い年で、22歳から27歳までと、50歳から65歳の合計20年間厚生年金に加入して、その間の平均年収は300万円とします。
年金は70歳から受給を開始することとして、65歳から70歳までは貯蓄を切り崩して生活していく予定です。
生活費は、月額28万円で、物価の平均上昇率は2%とします。
年金額は、物価上昇率と人口減少などを考慮して、平均上昇率を1%として計算します。
夫婦ともに健康状態は普通で、夫は85歳、妻は90歳まで生きることを想定しています。
この場合、仕事を引退する65歳から夫の寿命である85歳までにかかる生活費の合計は、20年間で約1億3400万円かかります。
一方で、70歳から85歳までの15年間でもらえる年金の合計は、約1億400万円になります。
そのため、差額の3000万円を65歳までに準備しておくことが必要であることがわかります。
最後に、老後資金をどのように準備するかを考えます。
不足する3000万円のうち1000万円は現金で、残りの2000万円を40歳から65歳までの25年間、つみたてNISAなどの金融投資で用意しようと考えた場合、年利5%を想定すると、毎年42万円(月々3万5000円)をつみたて投資していけば、準備できる計算になります。
このように、具体的に試算してみると、65歳以上も働いた方がいいのか、年金の受給開始年齢を繰上げた方がいいのか、生活水準を上げないように支出を見直した方がいいのか、NISAを始めた方がいいのかなどの考えが出てくると思います。
僕は、こういう「自分の考えを持つこと」が老後資産を計算する上でとても大切だと考えます。
今回の例では老後資金が3000万円となりましたが、人によっては老後資金が0円でも生活できる人もいますし、1億円必要となる人もいるでしょう。
同じ3000万円という結果が出たとしても、そこに至るまでの条件が全く同じという人はいないと思います。
だからこそ、国が公表している平均的な数値に惑わされず、自分の将来は自分でシミュレーションすることが肝心なのです。
まとめ
老後への不安がなくならないのは、不安の正体がわかっていないからで、不安の正体とは、つまり、「老後いくらお金が必要になるからわからない」のとになります。
その不安に漬け込む貯蓄市場のキャンペーンに踊らされた結果、必要以上に貯蓄や投資に走ってしまうのです。
しかし、実際には引退してから死ぬまでにほとんどの人がお金をほとんど減らさずに最後を迎えることを考えると、概算でもいいので必要な老後資金を資産することはとても重要です。
老後資金を試算するためには、自分が何歳まで生きる可能性があるのか、何歳まで働きたいのか、いつから年金をもらう予定か、生活費はいくらかかるのかなどの人生プランを自分で設定しなければいけません。
そのためには、寿命を診断してみたり、年金の仕組みを理解して、物価上昇率などを基に試算してみることがおすすめです。
算出された金額を見たうえで、65歳以降も働くのか、年金を繰り下げ受給するのか、生活水準を下げるのかを「自分で考えること」が大切になります。
今回の記事をご覧になった方のなかには、正直なところ「面倒くさ」って思った人もいると思います。
僕も読者の立場だったら同じことを思うかも知れません。
ですか、ここまで読んでくれた方であればお気づきかも知れませんが、老後資金を計算するということは、「自分の人生を考えること」に繋がっているのです。
そんな大変なことを考えなきゃいけないから「面倒くさい」のは当然です。
でも、「面倒くさい」を理由に考えることを放棄していたら、自分の人生をどこかで妥協していることにならないでしょうか?
平均値や誰かの人生モデルを借りてきて、納得した人生を送ることができるでしょうか?
最初にも言いましたが、自分の人生を描くことができて、はじめて人は「アリの生き方」から「キリギリスの生き方」を選択できるのです。
ぜひ、一緒に未来を描いて、「今」も「将来」も幸せな人生を送っていきましょう!
今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
次回の記事では「つみたてNISAで将来に備える」という内容の記事を投稿する予定です。
僕のシリーズ記事『LIFE SHIFT 40歳からの人生戦略』では、人生後半を戦略的にデザインしていくために必要な「考え方やアクションプラン」について、30本ほどの記事で構成しています。
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