比叡山を歩く(修学院駅〜大比叡山頂〜延暦寺東塔〜比叡山坂本駅)
2024/09/14
京都で「お山」といえば比叡山を指すが、ケーブルカーが架けられ、山頂付近にはバス停があって、およそ登山の対象とは思えない。
しかし、比叡山は三百名山の一つに数えられている。一番標高の低い(848m)三百名山である。
それでも、麓から登ればそれなりの距離がある。
アクセスはすこぶる良い。叡山電鉄・修学院駅から歩き始め、滋賀県側、琵琶湖のほとりにあるJR湖西線・比叡山坂本駅へと下りるコースを歩いた。
修学院駅から音羽川沿いの道を歩き、登山道に入る。サンダルではきつそうな、結構な山道だ。
それにしても、殺人的な暑さだ。汗が滝のように滴り落ちる。
かつては、9月中旬といえば登山シーズンだったのに、もはや外出自体が危険なほどになってしまった。脳がゆで卵のように変性しないように、ゆっくり登っていく。まさに修行のようだ。
展望のある広場で一服する。
ここから杉木立の間を登っていくと、頭上にケーブルカーが見え、やがて舗装道路に出る。なおも歩いていくと突然展望が開け、バス停と巨大な駐車場が現れた。実に興醒めである。
ここには立派な展望台があり、琵琶湖を望むことができる。
若者が屯する巨大駐車場の脇の坂道を登っていくと、小高い丘が現れた。その一番高いところが比叡山のピーク(大比叡)だった。
木々に囲まれて展望がないのはともかくとして、背後には無機質の建造物が聳え、すぐ脇に車道が通っていてなんとも味気ない。三百名山でも興醒めナンバーワンの山頂だった。
しかし、千メートル足らずの標高でも山頂付近は意外に涼し…くはないが、少なくとも耐え難い暑さでなかったのは幸いだった。
杉木立の石畳の道を、延暦寺に向けて下っていく。
やがて苔むした墓石が現れ、丹塗りの建造物が見えた。いつしか延暦寺の境内に入り込んでいたようだ。このコースで来ると、拝観料を払うためのチェックポイントを通らないのである。
国宝の根本中堂は修復中だった。ここは延暦寺の心臓部分で、薄暗い中に、1200年ものあいだ途絶えることなく燃え続ける「不滅の法灯」が幻想的な光を放っている。
国宝殿に足を運んだ。この名は、国宝を展示してあるためではなく、伝教大師最澄の「一隅を照らす。これ則ち国宝なり」という言葉によるものだ。
ここには国宝である最澄の書が所蔵されているが、それは展示されていない。その代わり、数多くの重要文化財の仏像が展示されていて、見ごたえがあった。千年もの昔に作られた文化財がゴロゴロ残っているというのは驚くべきことだ。
延暦寺は東塔・西塔・横川からなる。東塔を一通り見学して、坂本に向けて下山を開始する。岩のごろごろした道を下っていくと、気温と湿度が上昇して再び危険な暑さになる。
やがて日吉大社の鳥居が現れ、酷暑の中をなおも歩いていくと、比叡山坂本駅に着いた。ここから京都駅までは、わずか16分だった。