梅雨の晴れ間の苗場山登山
2024/06/29
上越国境付近には、まだ未踏の山がたくさんある。
苗場山は、ずっと以前から行こうと思っていた宿題の山だった。バスを乗り継いで行こうとすると1泊2日を要する。しかし、レンタカーを使えば、東京から余裕で日帰りできることが判明した。こんなにアクセスの良い山だとは知らなかった。
ソラシド・エアのバーゲンで、宮崎⇔東京往復が1万9千円という安さだった。梅雨の真っ只中なので天候は期待できなかったが、奇跡的に、この日だけピンポイントで晴れた。ありがたい。
とはいえ、この時期の山は全く快適でない。凄まじい湿気と大量の虫の襲撃に辟易した。
どのみち、8時にならないとレンタカー会社は開かないので、8時10分越後湯沢着の新幹線で行くことにする。越後湯沢駅まで、都内某所から1時間50分、大宮からわずか40分という近さだ。東京は便利だなぁ。
駅前でレンタカーを借り、祓川登山口へ向かう。途中、門番のいる謎のゲートがあって、そこを突破しないと登山口に到達できないが、その場所がわかりにくかった。ゲートを越えると、ガードレールのない、曲がりくねったスリリングな山道になる。しかし、ここは名にし負う百名山である。九州の荒れ果てた山道を運転している身からしたら、こんなものは屁の突っ張りなのだ。
五合目の登山口には、トイレの完備された立派な駐車場があった。
10時、登山開始。遅めのスタートだが、この時期は7時頃まで明るいから大丈夫だろう。
舗装道路をテクテク歩いていくと、緑に覆われたスキーのゲレンデが現れる。ここで登山届を出し、ゲレンデ横の斜面を登っていく。
石のごろごろした樹林帯に入る。凄まじい湿気だ。
やがて、道は木道に変わる。下の芝、中の芝、上の芝にはよく整備された休憩所がある。
神楽ヶ峰(2,030m)で一休みしようと思っていたら、そこに休憩できるスペースはなかった。ただ道の脇に標識が立っているのみだった。
神楽ヶ峰のピークを超えると、嫌というほど下っていく。
やがて雲が途切れ、苗場山が全貌を現した。実に立派な山容だ。
途中、雷清水という湧き水がある。まろやかでとても美味しい。
標高1,870mの最低鞍部から、270mも登り返す。次第に傾斜が急になっていく。喘ぐように登っていくと、突然視界が開けた!
ここが名に聞こえた、高層湿原だ。
13時40分、苗場山山頂到着。3時間40分かかった。
山頂付近には無数の池塘が点在し、縫うように木道が走っている。
ここは、水が豊富なのになぜか虫が少なく、快適な空間だった。なるほど、ここまでの道のりを考えれば、ここで一泊するのも理である。
時刻はすでに14時を回っていた。今ここにいる人たちは、みんな山頂の小屋で一泊するように見え、少々焦ってきた。
14時20分、後ろ髪を引かれる思いで下山開始。
苗場山山頂付近から見ると、神楽ヶ峰は、ただの通過点というには忍びない立派な山だった。
神楽ヶ峰の標識の横に、笹の刈り取られた細い斜面があった。ほんの数メートル登ると笹が途切れ、反対側は絶壁になっていた。これで、神楽ヶ峰のピークハントも果たした。
このあたり、虫の襲撃が凄まじい。午後になってますます虫が湧いてきたようだ。
一瞬でも立ち止まろうものなら、顔めがけて大量の虫が押し寄せてくる。だから、ずっと歩き続けなければならない。
上の芝で一服しようとするも、早々に退散せざるをえなかった。
やがて、木道から石ゴロゴロの樹林帯の道に変わる。白い石に、スイカの種のような小さな黒い斑点が大量に付着しているが、それはすべて羽休め中の虫なのである。近づくとブワッと一斉に飛び上がる。悪寒が走る。不快感MAXだ。
今日は晴れているといっても、連日の大雨で、登山道は小川のようになっていた。水面上に顔を出した石の上を飛び飛びに伝っていかなければならないので、一向にペースが上がらない。
下界が近づくにつれ、道はぬかるんでドロドロになってくる。
いよいよウンザリしてきた頃、目の前にゲレンデが現れた!
和田小屋で、コーラで一服。15時20分、駐車場に戻ってきた。まだまだ空は明るかったから、もっと山頂でゆっくりしても余裕で間に合った。
その日、越後湯沢駅近くのスキーヤー用の安宿に泊まった。
翌日は、上越新幹線を挟んで対峙するもう一つの百名山、巻機山に登るつもりだった。しかし、この日は昼から雨予報だった。起きてはみたものの、空はどんよりと曇り、一向にテンションが上がらない。
前日の疲労が澱のように蓄積していたし、虫の襲来がトラウマになっていた。レンタカーをもう1日借りていたので勿体なかったが、さっさと東京に戻ることにした。やっぱり、山はもっと快適な時期に来ないとね…。