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第3回読書会 ホルヘ・ルイス・ボルヘス「円環の廃墟」を読む
ボルヘスの代表作の1つとしても知られている「円環の廃墟」を今回取り上げ、岩本吉隆、澤井歩、外館健人の3人で初めてのオンライン読者会を開催しました。
外館君からは、ボルヘスの生きた社会背景や国の文化などが小説の表現に影響与ているのではないかと言う指摘がありました。澤井君とのディスカッションでは、円環の廃墟に似たモチーフで、美術作品を制作しているエッシャーやデ・キリコなどのアーティストの作品が話題に上がりました。
夢をテーマにした芸術作品は少なくない。映画では、黒澤明の「夢」や北野武「TAKESHI’S」などが知られています。最近ではクリストファー・ノーランの「インセプション」は円環の廃墟に影響を受けて制作されました。そして、黒澤明の「夢」も、夏目漱石の「夢十夜」を基にしたことで知られています。芸術作品は芸術作品に影響を与える。夢は、芸術家にとって誘惑的なモチーフの一つであると言えるでしょう。
夢を題材にした作品は、共通して、断片的で極端な物語の展開がみられます。また物語が矛盾していたり、辻褄が合わない事も多い。夢とは、元来そういうもので作品の表現として当然のことと言えます。一方で、物語の展開が読者にはわかりずらいのも事実である。一体何を表現しているのか一見わからない。
しかし、よくよく考えてみると、私達が物語の展開がわかる作品に慣れすぎているのかもしれません。文章が合理的で、感情移入しやすいテキストが面白いという一辺倒な価値観で作品を鑑賞しているのではないか。物語を読んで理解する事が出来る面白さとは、商業的に作られたものかもしれないなどと疑う事も可能ではないか。
ボルヘスの「円環の廃墟」に書かれている文章を、頭で映像化してみると、不思議な像が浮かぶます。それは非合理的で非現実だが、私達が夢から目覚めた時に考じる感覚ににて、不思議でスリリングなものだ。わかりやすい物語にある面白さではないく、むしろ秩序や理性の外に出る面白さと言えるのではないでしょうか。
「円環の廃墟」のストーリーは、循環しています。そして、その中の世界は回転し、文体は徘徊しています。終わりのない物語に結末はきません。明確な答えはないとわかっていながらも、空想する時間とはどれだけ尊いものだろうか。結論や解答のない面白さとはどういったものか。思考し想像をやめないということと、面白さとは無限にあるのだということを心に刻みたいと思います。
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