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315. 貧困や不遇な家庭環境、友人たちからの排斥やいたずらが原因で同性愛になるんですか?(楊尚眞教授の「同性愛と同性婚の真相を知る」のファクトチェック3)

前回に引き続き、弘前学院大学の楊尚眞教授が執筆された記事、「同性愛と同性婚の真相を知る」(神道政治連盟 機関紙「意」No.215、2021年10月1日発行, pp. 3-10)の中から問題のある点を検証します。

今回は楊教授が同性愛を誘発する要因として親の影響があるとした次の部分です:

発達理論においては、幼少期における否定的な親子関係や経験、性的トラウマ、貧困、不遇な家庭環境、友人たちからの排斥やいたずら等が精神障害を生じさせるとみますが、同性愛の発生も同様であるということです。(J. P. アンダーソンらの研究、二0一0年)

(「同性愛と同性婚の真相を知る」p.6)

まず楊教授の主張の根拠となっているJ.P.アンダーソンの論文ですが、前回の記事でも指摘したように、「同性愛と同性婚の真相を知る」には参考文献がついていないため、どの論文なのかがわかりません(google scholar を使って 2010 J.P. Andersonで検索をかけたところ、約11万5000件ヒットしましたが、それを1つ1つチェックする余裕は私にはありません)。

さてここで問題なのは、子どもの精神障害の要因として①幼少期の否定的親子関係、②性的トラウマ、③貧困、④不遇な家庭環境、⑤友人との関係という5つが挙げられていますが、この5つが全て揃って子どもに影響を与えるのか、それとも5つのうち1つでもあれば子どもに影響を与えるのかがわからないという点です。

アンダーソンの論文を読んでいないので推測でしかありませんが、この5つ
が全て揃わなくても、極端に言えば1つでも子どもに心理的な影響があるということは想像できます。

親から十分に愛情を注がれなかったというだけでも子どもの心には傷が残るでしょう。

周りの子どもにいじめられたということも、それだけで子どもには大変なストレスになるに違いありません。

ファクトチェック:(例えば)貧困は同性愛の要因になるのか?

以下、3つ目に挙げられた貧困が同性愛の要因になると仮定して話を進めます。

日本財団のHPによると現在、日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあるとのことです。(注1)

総務省統計局の2022年6月(最新)の人口推計では15歳未満の子どもは日本に1471万8000人いるそうです。

単純にこれを7で割ると 1471万8000÷7= 2,102,571、約210万人となります。

子どもの貧困が同性愛の要因になるという主張が正しければ、現在の15歳未満の子ども210万人が将来的に同性愛者になるということになります。

こんな馬鹿げた数字を信じる人はいないでしょう。

まだあります。終戦直後の日本は貧しかった、というのは皆さんご存じでしょう。1945年の15歳未満の日本人の人口は26,477,086人です。

この2650万人の中には食べ物に困らない子どもが50万人いたとしても、2600万人は食べるものもろくに食べられなかった、毎日お腹を空かせていた子どもたちです。この子どもたちがみんな同性愛者になったでしょうか?

答えは「いいえ」です。この子どもの数の中にはこの記事を読んでいらっしゃるみなさんのお父さんやお母さん、お爺さんやお婆さんが含まれています。

「貧しさが人を同性愛者にする」というのなら、世界中の貧しい国では同性愛者が溢れているでしょう。

しかしそのような話は全く聞きませんし、ニュースにもなりません。


参考資料

日本財団HP 「子どもの貧困対策

総務省統計局 「人口推計」(2022年6月報)