433. 性的マイノリティの中には「LGBTを政治やビジネスに利用しないで!」という声があるようです。これはどういうことですか?
これまで私は何度も記事の中で性的マイノリティの中にはいろんな意見の人たちがいることをお話ししてきました。
性的マイノリティ全体を、ここでは一旦「コミュニティ」としましょう。この「コミュニティ」については428の記事で触れました。
この大きな括りのコミュニティの中で、「LGBTを政治やビジネスに利用しないで」という声があるというのは、LGBTの問題やアイデンティティが政治的な意図や商業的な目的で利用されることに対する懸念を表していると考えられます。
実際にどのようなことが「懸念材料」となるのかを見てみましょう:
トークン化やシンボル化:LGBTの個人やシンボルが、企業や政治家によって多様性や包摂性をアピールするための「象徴」として使われること。
例えば、日本のある企業が「我が社は多様性を重んじています。LGBT研修も積極的に行っており、性的マイノリティの人が自分らしく働ける環境に配慮しています」ということをウェブページなどでアピールする。
政治家がプライドパレードなどに自ら参加して、自分の所属する党や政治家としてその方がLGBTの多様性に配慮していることをアピールするということもあります。
もちろんそれ自体が悪いと言っているのではありません。
ただ、こういった企業側のアピールが、実質的な支援や変化をもたらすよりも、企業自体や政治家個人の表面的なイメージ向上やPRを目的としていると見なされることがある、というところが問題だとされます。
ピンクウォッシング:企業や政治家がLGBTの権利を支持する姿勢を見せることで、他の問題(例えば環境破壊や労働権侵害など)からの注意をそらすこと。
例えば、ある企業では過酷な労働環境で社員が自死してしまった。マスコミはそれを批判します。
しかし、この企業がLGBTをはじめとする多様性に配慮している、同性婚を支持しているということを大々的にアピールする。
この場合、LGBTの支持は企業理念としての本当の価値観に基づくものではなく、自らに向けられた批判を避けたりイメージを改善するための戦略として使われていると感じられることがあります。
政治的な道具:LGBTの問題が政治的な道具として利用されることもあるでしょう。
これは最初の「シンボル化」とも関連しています。
特定の政治勢力がLGBTの権利を支持することで特定の有権者層を引きつけようとしたり、逆にLGBTに反対することで別の有権者層を動員しようとするなどがあります。
野党ばかりがLGBTを利用しているのではありません。与党や保守的な考え方の人たちも「LGBT理解増進法などけしからん!」といって新しい党を立ち上げたというニュースもありました。
形式的な支持やうわべだけの利用ではなく、LGBTが何ら非難されたり疎まれることない状況に社会のあり方を変化させること、そしてそれを実現するためにはLGBTに対する深い理解に基づくものであるべきだと思います。
最後に以前にも引用したアインシュタインの言葉をどうぞ:
画像:AI生成画像(タイトル:「政治と企業とLGBT))