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336. クロスドレッシングって何ですか?前回の「トランスヴェスタイト」との関係は?

はい、これも外来語でカタカナ表記がなされていますので、元の英語の意味を確認しましょう:

the wearing of clothes designed for the opposite sex (金城訳:反対の性のためにデザインされた服を身に着けること)

Merriam-Webster(インターネット辞書)より

前回の「トランスヴェスタイト(transvestite)」の定義と似ていますね。しかし、前回確認したように、トランスヴェスタイトは「異性の服装を身につけることで性的興奮を感じる」という特徴があるのでした。

前回のお仕事で異性装をなさる方などを含めて下のような図を作ってみました:

図1 クロスドレッシングの内訳

お仕事以外にも、たとえばマツコ・デラックスさんは自身を「女装家」と称して常に(お仕事では)女性の服を身に着けておられます。

また、ドラァグ・クイーンの話は前に取り上げました。逆に女性が男装をすることを「ドラァグ・キング」と言います。さらに、最近は「男の娘(おとこのこ)」などは(広義の)娯楽に分類できるかもしれません(それでしたらコスプレなどもここに入るでしょう)

トランスジェンダーの方の中には、前回もお話したように、反対の性に強い一体感を持つ方々がおり、男性が身に着けるような服を利用している方もいます(もちろんトランスジェンダーの方が全員そうするわけではありません)。

また図の中にはほかにも小さい〇(カテゴリー)を入れましたが、これはファッションとしての異性装、社会的な「男性・女性」という規範から解放されたいという動機からの異性装、変身願望(今の自分自身以外のものになりたいという願望)、宗教儀礼などが含まれます。(注:「女装家」は「ファッション」の一部にしてもいいかもしれません)

このように大まかなクロスドレッシング(crossdressing、異性装)というくくりを示しました。

ここで気を付けておかなければならないのは、異性装をする人は異性愛の人もいればLGBTの人もいるということです。

セクシュアリティや性自認にかかわらず異性装をする人はいます。

ドラァグクイーンだからといって、その人がゲイだとは限りません。

女性も異性装をすることもありますが、男性が女性の服を身に着け、髪形を女性っぽくし、お化粧をして、ヒールを履くというように、男性の異性装がより多いことが知られています。

そして、女性が男性の恰好をするよりも、男性が女性の恰好をすることに強い違和感を覚える人が欧米に限らず日本でも多くいます

これは「男性は社会的にこうあるべきだ」というような規範から外れることに対する違和感のように思われます。(注1)

また、宗教によって異性装が禁じられていることもあります。キリスト教の旧約聖書「申命記」第22章の5節には次のようにあります:

22:5 女は男の着物を着てはならない。また男は女の着物を着てはならない。あなたの神、主はそのような事をする者を忌みきらわれるからである。

『旧約聖書』「申命記」より

ちなみに、日本で初めて女装したのは「ヤマトタケルノミコト」だそうです。日本の歴史・文化と女装については三橋順子先生の次の本がおすすめです

注1:『セクシュアリティ基本用語事典』には次のような記述があります:

服装・ファッションに関して言えば、西洋社会の大部分で男性が女性の服装をすることには、女性が男性の服装をすることよりも遥かに厳しい制限があると言えよう。これは家父長制社会にあって、女性が権力のシンボルを流用することには何ら問題はないが、逆に男性が異装をすることには社会階級の上位を占める自らの地位を放棄することになり、より厳しい制裁があるためだと考えられる

『セクシュアリティ基本用語事典』pp.76-77(太字は引用者)


参考資料


画像:男装で戦った巴御前勝川春亭画)