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【臨床評価×機能解剖】股関節インピンジメント患者の筋力低下 - 健常者との比較から見えてきた特徴的なパターン
股関節に痛みが出る方、たまにいらっしゃいますよね。痛みがあると筋力も落ちやすくなります。
変形性股関節症は股関節に痛みが起きたり筋力が落ちたりしますが、他にも同じような症状が起きる疾患があります。
それは、症候性大腿寛骨臼インピンジメント、通称FAIといいます。
今回紹介する研究は、この疾患の方に起きる筋力低下にはどのような特徴があるのかというものです。
この研究を読む事で、病態に対する理解や疼痛改善のためにどこを重点的にトレーニングするべきか?
といった事を考えるきっかけにできます。
病態から起きる症状としての筋力低下をデータと共にみていきましょう。
タイトル
“Hip muscle weakness in patients with symptomatic femoroacetabular impingement”
日本語訳
「症候性大腿寛骨臼インピンジメント患者における股関節筋力低下」
となります。
では、要約です。
1.【研究目的】
本研究の目的は、症候性大腿寛骨臼インピンジメント(FAI)患者と健常者の股関節筋力を比較し、FAI患者に特有の筋力低下があるかを明らかにすること である。FAI患者は動的荷重活動時に機能的障害を示すことがあり、この障害が股関節筋力の低下に関連している可能性がある。
2.【対象と方法】
対象:
22名のFAI患者(男性8名、女性14名)
22名の年齢・性別・体格をマッチさせた健常者
患者は、臨床診察・X線・MRIによってFAIと診断され、手術予定がある者
FAIの種類: カム型6名、ピンサー型4名、混合型12名
方法:
股関節筋力評価
股関節の外転・内転・内旋・外旋・屈曲・伸展 の等尺性最大筋力(MVC)を測定
一部の筋群は ハンドヘルドダイナモメーター(手持ち式筋力計) を使用し、屈曲・伸展は アイソキネティックダイナモメーター で評価
筋活動評価(EMG)
大腿直筋(RF)および大腿筋膜張筋(TFL)の筋電図(EMG)活動 を測定し、股関節屈曲時の筋活動を比較
疼痛評価
最大筋力測定中の股関節痛を VAS(視覚的アナログスケール, 0-100mm) で評価
3.【主な結果】
1. 群間の違い(FAI患者 vs. 健常者)
FAI患者は、以下の筋群で有意な筋力低下 を示した:
内転筋力: -28%(p=0.003)
屈曲筋力: -26%(p=0.004)
外旋筋力: -18%(p=0.04)
外転筋力: -11%(p=0.03)
内旋・伸展筋力: 群間で有意差なし
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2. 筋活動(EMG)
大腿筋膜張筋(TFL)のEMG活動 は、FAI群で有意に低下(p=0.048)
大腿直筋(RF)のEMG活動 に群間の有意差なし(p=0.056)
3. 疼痛スコア(VAS)
筋力測定時の疼痛スコア(VAS)は18~27mm(健常者は0mm)
4.【臨床的意義】
FAI患者は股関節筋力が全般的に低下しており、特に内転・屈曲・外旋・外転筋の筋力が著しく低下している。
TFLの筋活動低下が確認されたため、股関節屈曲時の筋出力に関与している可能性がある。
股関節周囲筋の筋力低下は、FAI患者の動作障害や疼痛の原因となり得るため、リハビリテーションでは筋力強化が重要な介入となる。
今後、筋力強化プログラムがFAI患者の疼痛軽減や機能改善に与える影響を検討する必要がある。
5.【まとめ】
いかがでしたか?
FAIは全般的に筋力が低下してしまう事が分かりました。
その為、リハビリでは全般的に筋力強化が必要という事ですね。
全般的に低下するという事は、関節を安定させておく働きが弱くなっていると考えられます。
個人的には、まずは関節を安定させるような負荷の少ないトレーニングが必要かなと考えます。
目の前の患者さんに対し適切なアプローチは何か?考えていきたいですね。
以上で紹介を終わります。
6.【参考文献】
Casartelli NC, Maffiuletti NA, Item-Glatthorn JF, et al. Hip muscle weakness in patients with symptomatic femoroacetabular impingement. Osteoarthritis Cartilage. 2011;19(7):816-821. doi:10.1016/j.joca.2011.04.001
股関節のトレーニングに関してはこちらもどうぞ
また学びになる研究がありましたら紹介します。
よろしくお願いします。
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